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経営者がリードする「危機管理 ~事故対応編~」

事故や不祥事が起きたときの対応

「事務所で火災が起き、周辺住民を不安にさせた」「社員が不祥事を起こした」「自社で製造した食品に異物が混入していた」……企業の危機には多種多様なものがあるが、初動対応の後に社外へ情報発信を行うべきものも多い。情報発信には、主に以下の方法がある。

  1. (1)謝罪広告
  2. (2)プレスリリース
  3. (3)自社ホームページにコメント掲載
  4. (4)謝罪会見
  5. (5)お詫び訪問

危機が起きた際に、どの情報発信をどこまで行うのか、経営者も判断に迷うところだろう。しかも危機管理は初動が命であるため、タイミングを逃すことは避けたい。そこで普段から危機レベルと対応の判断を取り決めておくことをお勧めする。以下にその一例をご紹介する。

レッドゾーン

謝罪会見を行うレベル。

イエローゾーン

謝罪会見の必要はないが、謝罪広告や謝罪プレスリリースを発行するレベル。

グリーンゾーン

事態を注視するレベル。

レッドゾーンなら業務への一時的な影響だけでなく、会社の信用が大きく傷つく恐れがある。そのため、発生直後から経営者が中心となって対策本部を立ち上げ、24時間体制で対応することが望ましい。大手企業以外ではマスコミ関係者を集めて謝罪会見を行う事例はあまり多くないかもしれないが、開催する場合は経営者が中心となり、説明をすること。そのためには経営者が危機の全容を正確に把握しなければならない。その際、役立つのが「ポジションペーパー(PP)」だ。

「ポジションペーパー」の作り方

ポジションペーパーとは、社内外の各方面から集めた情報を一元化し、分析・整理して、会社としての公式見解を作成するための文書である。記者会見でのコメントも、謝罪広告も、プレスリリースも、電話への対応も、すべてポジションペーパーから作成する。事態が社外に知られることになったら、当然のことながら、経営者だけでなく社員もさまざまな方面から質問を受ける。このとき、社長と社員の間で意見の相違があってはならないし、時間の経過とともに理由もなく答えが変わってもいけない。そのため、社内にはできる限り早いタイミングで事態の概要を伝え、公式見解が出るまでは不用意な発言や行動を慎むよう指示しておく。そしてプレスリリースと同時にQ&Aも作成し、社内の関係者全員に共有する。

ポジションペーパーには、次の項目を記載する。

(1)事実確認

いつ、どこで、何がどのように起きたのか。細かく把握するほどよい。調査中の内容は「調査中」と明記する。

(2)事態の経緯

これまでの経緯を予兆も含めて時系列に記載する。時系列を押さえておくことは、警察・消防・行政・マスコミなどへの説明時にも役立つ。

(3)被害の程度と範囲

「悪い事態は少なく見積もりたい」のが人の常だが、客観的に把握できた数値のみ記載する。未確認情報はその旨を明記する。

(4)危険性の確認

人や周辺環境などに危険はあるのか。どの程度危険なのか。危険は継続する可能性があるのか。

(5)原因究明

何が原因で起きたのか、現時点で判明していることのみまとめる。憶測に基づく情報は加えない。

(6)現状の対策

当面どのような対策をとるのか。すぐに打てる対策などを具体的にまとめる。

(7)今後の対応

原因解明が進んだら、会社としてどのように対応するのか。会社としてのビジョンを表明する。責任の所在や責任者の処分などにも触れる。

経営者が言ってはならない失言集

電話対応においても記者会見においても、外部と接するときに気をつけたいのが「失言」だ。何気なく口にした言葉であっても、経営者の失言が会社に困難を招いた事例は数多い。以下に、社会から非難されやすい失言パターンをまとめた。

事実として、その業界ではよくある事故だったり、「同業者もみなやっていること」であっても、事故を起こした当事者が口にすると反発を招く。まずはお詫びの言葉から入り、ポジションペーパーに基づいた公式見解を繰り返すこと。

また、「ノーコメント」は実際に表明できることが何もない場合に使いたい言葉だが、想像以上にイメージが悪く、痛くない腹まで探られがちだ。「ノーコメント」に代わる言葉としては以下のものがあるので、代用したい。

このように「現時点では話せない」ことは、「いつになったら話せるのか」を付け加えると誠実な印象を持たれ、説明責任を理解していると受け取られやすい。

事後対応で「信用」を回復

ネガティブな内容の後始末は経営者としても気が滅入るところだが、やはり事後対応を怠ってはならない。事後対応を誤ると、イエローゾーンがレッドゾーンになりかねないからだ。言うまでもないことだが、会社の「信用」とは築き上げるには相応の年月がかかるが、失うときは一瞬であることを肝に銘じておこう。

事後対応では、原因究明結果と再発防止策、被害者がいれば被害者への補償を自社ホームページなどで発表する。さらに最終段階では、責任の所在と責任者の処分も明らかにする。その後は自社のビジョンや経営理念に立ち帰り、事業に打ち込むこと。自社と自分をより理解してもらえるよう、地域でのボランティア活動など、目に見えるかたちで社会貢献活動を行うことが理想だ。

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