ITライター 立山秀利
過去の実績の数字を分析して今後の施策立案に役立てるなど、Excelをデータ分析の業務に活かしたいもの。今回はその一例として、「相関係数」という指標について、指標の意味や業務に活かす例、Excelで求める方法などを解説する。
「相関係数」とは、2種類のデータの関係の強さを数値で表す指標である。ここでいう“関係の強さ”とは、片方のデータがもし増えたら、もう片方のデータがどれだけ同じように増えるかを意味する。片方のデータを増やした場合、もう片方のデータが同じように増えるほど、その種類のデータは関係が強いとなる。もう片方のデータの増え方が異なるほど、その種類のデータは関係が弱いとなる。その関係の強弱を数値で表したのが相関係数だ。
相関係数は小数で表され、取り得る値の範囲は-1から1の間だ。1に近いほど、片方のデータを増やした場合、もう片方のデータが同じように増えることを意味し、2種類のデータの関係は強いと言える。一方、相関係数が-1に近いほど、片方のデータを増やした場合、もう片方のデータが同じように減る関係を意味する。この場合も2種類のデータの関係は強いと言える。
前者のように、片方のデータが増えるともう片方が増える関係を「正の相関関係」と呼ぶ。後者のように、片方のデータが増えるともう片方が減る関係を「負の相関関係」と呼ぶ。そして、相関係数が0に近いほど、正の相関関係も負の相関関係も小さい――つまり、2種類のデータの関係は弱いと言える。
Excelなら相関係数は「CORREL」関数を使って簡単に求められる。書式は次の通りだ。
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CORREL(配列1, 配列2)
配列1 1つ目のデータ
配列2 2つ目のデータ
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引数「配列1」には1つ目のデータが入力されたセル範囲、引数「配列2」には2つ目のデータが入力されたセル範囲を指定する。これで、その2種類のデータの相関係数が求められる。
ここでの例として、前回のデータを用いて相関係数を求めるとする。前回はTREND関数を使い、イベント来客数と広告出稿数から売上を予測する例を紹介したが、同じデータを使って、イベント来客数と売上の相関係数、および広告出稿数と売上の相関係数を求めてみる。
まずはイベント来客数と売上の相関係数だ。今回はF3セルに求めるとする。引数「配列1」にイベント来客数、引数「配列2」に売上のデータのセル範囲を指定する。売上データのD14~D16セルは前回TREND関数で予測した値なので、相関係数を求めるデータから除外する。それに対応するイベント来客数のB14~B16セルも除外する。
したがって、引数「配列1」にはイベント来客数のデータとしてB2~B13セル、引数「配列2」には売上のデータとしてD2~D13セルを指定すればよい(図1)。
図1
F3セルにCORREL関数を入力し、[Enter]キーを押して確定すると、図2のようにイベント来客数と売上の相関係数が0.748146と求められた。
図2
次は広告出稿数と売上の相関係数を求める。ここではF6セルに求めるとする。今度は引数「配列1」に広告出稿数のデータが入ったC2~C13セルを指定すればよい(図3)。
図3
すると、F6セルに図4のように広告出稿数と売上の相関係数が0.57818と求められた。
図4
今回の例では、イベント来客数と売上の相関係数は0.748146、広告出稿数と売上の相関係数が0.57818という結果であった。ともに正の数値なので、正の相関関係にある。つまり、イベント来客数も広告出稿数も増えるほど、売上も増えることがわかる。
そして、相関係数の大きさを比べると、イベント来客数と売上の方が大きい。これによって、広告出稿数と売上よりも、イベント来客数と売上のデータの方が、関係が強いとわかる。たとえば、販売促進のための予算と人員が限られており、広告出稿数増加とイベント来客数増加のいずれかしか実施できない状況なら、売上との関係より強いイベント来客数増加を実施した方がよい、といった具合で施策に活かせる。
ただし、注意してほしいのは、相関関係と因果関係とは別の話であることを念頭に置くということだ。相関係数でわかるのは、あくまでもデータ同士の関係であり、イベント来客数や広告出稿数が売上増の直接の要因になっているかまではわからない。そのため、相関係数による分析と、売上増の直接の要因になっているのか他の手段で調べた結果をあわせて、今後の施策を立案することが求められる。
このようにCORREL関数を使えば、2種類のデータの相関係数がすぐに求められる。相関係数の数値の意味を理解し、業務に活かしてみよう。
立山秀利(たてやま・ひでとし)
カーナビのソフトウェア開発、Webプロデュース業務を経て、現在は、システムやネットワーク、Microsoft Officeを中心に執筆中。 主な著書に『Excel VBAのプログラミングのツボとコツがゼッタイにわかる本』などがある。
(監修:日経BPコンサルティング)