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IT特集 - SDGs

世界的課題の解決を目指すSDGsを事業に取り組むメリットとは?
~地域との密着性や親和性が高い中堅企業こそSDGsに取り組もう~

SDGs(Sustainable Development Goals:エスディージーズ) は、「持続可能な開発目標」の略で、2015年の国連で採択された世界共通の目標である。最近様々なメディアでよく聞く言葉だが、関東経済産業局が実施した「中小企業のSDGs認知度・実態等調査」によると、調査対象500社のうち98%が「SDGsを知らない」あるいは「対応を検討していない」との回答だった。意外にも浸透していない現実が明らかになった形だが、逆の見方をすれば、SDGsへの取り組み自体が自社アピールになり、有用な人材獲得につながる可能性もある。 そこで今回は、中堅企業でも実行できるSDGsやその事例を説明する。

ビジネスの世界でも注目が高まるSDGs

最近注目を集めている持続可能な開発目標「SDGs」。現在世界が抱えている貧困や環境・気候や生物多様性、保健衛生、教育、ジェンダー、労働、農業、技術革新といった諸問題に対して17のゴール(目標)を設定し、2030年までに国際社会が力を合わせて各目標を達成していくことを目指している。

SDGsは目標の達成に向けて企業の役割を重視している点で注目されている。また、日本政府も「ジャパンSDGsアワード」という表彰制度を実施し、環境省が企業向けの「SDGs活用ガイド」を作成するなど、企業のSDGsに紐づけた取り組みを推奨している。こうした事情を背景に、ビジネスの世界でもSDGsへの注目度が高まっている。

図

SDGsの17の目標
(画像をクリックすると拡大表示します)

なぜ今、中堅企業はSDGsに取り組むべきなのか

SDGsの目標達成に向けて取り組むことで、その企業が短期の利益だけを追求しているのではなく、長期的な視点を持って事業活動を展開していると評価される。地球的課題の解決に貢献している企業ということで、消費者や地域、取引先などから信頼を獲得でき、ブランド価値が高まるメリットを期待できる。さらには持続的成長を実現する企業は経営リスクが低くなり、社員が安心して働けるほか、投資家から見れば投資対象として安心できるという評価も生まれる。

全地球的な課題を解決する、というと大企業のみが取り組む壮大なテーマに聞こえるかもしれない。しかしSDGsは企業の役割に着目しており、企業はそれぞれが専門とする本業をSDGsの各目標とリンクさせることで、SDGs達成に貢献できる。また、事業そのものでなく、社内での節電・節水、ペットボトル使用削減、リサイクル推進といった取り組みによってもSDGsに貢献することが可能だ。つまり大企業だけでなく、中堅企業にとってもSDGsは持続的成長に向けて重要な指標になるものだといえる。

SDGsへの取り組みが自社アピールになり、有用な人材獲得につながる可能性も

関東経済産業局が2018年秋に実施した「中小企業のSDGs認知度・実態等調査」によると、調査対象500社の84%が「SDGsについて全く知らない」と回答。「聞いたことはあるが詳しくは知らない」「知っているが対応は検討していない」と答えた企業を合わせると、その数は実に98%にも上る。SDGsには上述のように大きな可能性が秘められているが、まだまだ周知が進まず、活用されていないのが現状だ。

ということは、早急にSDGsを知り、学び、対応を検討することで、新規市場開拓や事業機会創出につながるかもしれない。さらに、SDGsに関連するビジネスに携わることで顧客やステークホルダー、従業員からの信頼や評価が高まり、企業価値向上や持続的な成長も期待できる。

だが、中堅企業は大企業ほど人材が十分でないため、専門部署を設けて取り組もうとすると不利な点があるのは否めない。しかし一方で、一般的に中堅企業は大企業よりも意思決定のスピードが速く、柔軟な対応も行える。また、多くの中堅企業は地域との密着性や親和性が高く、地域を巻き込んだ施策の展開も可能だ。こういった点を見れば、むしろ中堅企業のほうがSDGsにリンクさせた施策に取り組みやすいともいえる。また、最近の若い世代は社業が社会にどのような貢献をしているかを重視して就職先を選ぶ傾向が強い。SDGs達成に向けた取り組みに本業で力を入れていることをアピールすれば、有望な人材の登用にもつながっていくだろう。

どういう企業が取り組みを進めているか

SDGsに結び付けた取り組みとしては、まずはやはり自社の本業がSDGsのどの目標に貢献できるかという視点で見つめ直し、強みを発揮できるマテリアリティ(重要課題)を特定することから始めるのがいいだろう。

その上で、長年行ってきた本業がすでに貢献につながっている場合は、SDGsとのリンクを明示的に打ち出して発信することが必要になる。あるいは自社の強みを活かし、従来の取り組みに工夫を加えて新たな事業を創出することも効果的だ。一企業でSDGsの複数の目標への貢献を打ち出している例も多い。こうした取り組みの前提として、経営層がSDGsを学んで意識を変革し、社員に対してSDGsに則った教育を行うことも重要だ。

では、各業種でどのようにSDGsを進めているのだろうか。以下に自社の業種の強みを活かしたSDGsへの取り組みを紹介する。

・食品会社:栄養食品の提供で貧困や飢餓の解決に貢献
・小売業者:販売方法を工夫してフードロス削減に貢献
・素材メーカー:リサイクル材料推進で廃棄物削減に貢献
・機械設備会社:製造工程や使用過程でCO2排出削減を減らす製品で地球温暖化防止に貢献
・建設業者:トレーサビリティを徹底した木材の調達で森林保護や生物多様性保全に貢献

また、中堅企業のSDGsの取り組みにあたっては、ITを効果的に活用した事例も目立つ。ここではその中でも3事例をピックアップして紹介しよう。

<取り組み事例>

事例1.A電子部品加工業者
クラウドサービスを活用した生産管理システムを導入し、ペーパーレスと業務効率化を進めることで、資源の削減による環境への貢献と働きがいのある労働環境の実現に取り組んでいる。

事例2.B情報サービス事業者
地方都市の行政と医療機関をネットワークで結び、予防接種履歴を一元管理するシステムを導入。乳幼児が安心して予防接種を受けられる環境を整備し、住み続けられるまちづくりに貢献している。

事例3.C燃料会社
アフリカでの種苗・肥料販売補助を行う国際機関の事業に電子マネー基盤を導入。農業資材の流通をスムーズにし、農業の生産性向上を実現することで、アフリカの農家の貧困改善に寄与している。

国際目標ということで誤解されがちな部分も多いが、上述のようにSDGsは大企業だけがなすべき取り組みではない。中堅企業も含め、あらゆる企業が施策と結び付け、事業の道筋を指し示すツールとして活用できるものだ。さらに、中堅企業だからこそ、持続的成長を実現するという目標を持つことで、勤めている社員に安心感を与え、投資家への評価にもつながる。一般的に大企業より意思決定のスピードが速く、柔軟な対応も行え、地域との密着性や親和性が高いのもSDGsに取り組む点での利点と言える。他社がまだ手がけていない段階だからこそ、先行して自社で対応できるところから取り組みを進めていこう。

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(監修:日経BPコンサルティング)