1899年の創業から今年で120年。株式会社サッポロライオンは日本初のビヤホールを開業し、ビヤホール文化を根付かせた外食産業のパイオニア企業です。同社を代表する店舗といえば、「ビヤホールライオン 銀座七丁目店」。「豊穣と収穫」をテーマにした店内に、天井が高く解放感のある空間やレトロな壁画があることをご存じの方も多いのではないでしょうか。同店は旧・新橋演舞場も手がけた建築家・菅原栄蔵の手によって設計され、内部デザインはほぼ1934年の創建当時のまま。まるでタイムスリップしたかのような荘厳な空間で、思う存分ビールを楽しむことができます。
ビヤホール以外にも、同社はパブ、洋食ダイニング、和食店、居酒屋など、約30業態を展開。2019年3月現在、全国でおよそ170店舗を運営しており、その中核となるのが「銀座ライオン」です。
美味しさへのこだわり生ビールの「一度注ぎ」
サッポロライオンの企業理念は「JOY OFLIVING(お客様に“生きている喜びを”)」。創業以来、「美味しい生ビールを味わっていただきたい」という思いのもと、「サッポロライオン生ビール三原則」を厳守しています。三原則の1つ目は「冷却・静置」。生ビールは温度や振動に敏感なため、配送後24時間以上2~4℃の冷蔵庫に静置します。2つ目は「ガス圧調整」。生ビールは炭酸ガスで圧力をかけて樽から抽出するのですが、最適なガス圧は環境により異なり、微妙な調整が必要です。3つ目は「清潔・洗浄」。ビールサーバーやグラス・ジョッキを清潔に保つことで雑菌の繁殖や酵母の付着を防ぎ、きめの細かい丈夫な泡を作ります。
さらに美味しさを高めるのが、1世紀以上受け継がれてきた生ビール抽出法「一度注ぎ」。ビールサーバーはビールの液体と泡を別々に抽出するものが一般的ですが、「銀座ライオン」では注ぎながら泡を作ることで余分な炭酸ガスを抜き、雑味を泡に閉じ込めて、すっきりとしたのど越しと苦みの少ないビールに仕上げます。同社経営戦略部・広報担当の青山佳子さんによると、ジョッキを傾ける角度、渦の作り方など、「一度注ぎ」には長年に亘って蓄積してきたノウハウがあるといいます。
「“一度注ぎ”は私たち社員も新人研修時に習得するのですが、タンク容量が大きければ大きいほど難しく、その日の気温やガス圧などによって日々変化します。ただし、一度注ぎのビールはムダな雑味がなく、ビールが苦手な方にも飲みやすいことは間違いありません」
青山さん自身も実はビールの苦みが苦手でしたが、知人から「それなら一度銀座ライオンのビールを飲んでみなさい」と勧められ、ビールが好きになった経緯があるとか。同様に「ライオンのビールなら飲める」「ここでビールにハマった!」というお客様は少なくありません。一方で、「〇〇さんが注いだビールが飲みたい」と、同社認定のビヤマイスターを指名する“通”のお客様もおられ、「世間で言われるほど、“ビール離れ”を感じることはない」そうです。現在のマイスター資格者は全国でわずか7名といいます。