現在、日本で施行されている法律・政令・省令は、法務省が編纂する全100巻141冊20万ページに及ぶ『現行日本法規』に網羅されています。株式会社ぎょうせいは1949年に法務省より委託を受け、同書を刊行することが認められた日本で唯一の出版社です。同書のおもなユーザーは中央省庁、自治体、法曹関係者など。
時代の変化とともに改正される法令を正確かつスピーディーにユーザーに届ける必要があるため、ぎょうせいは創業間もない1904年に本邦初の加除式図書※を発案。今では全国全ての1,741市区町村と取引を行っています。また、デジタル化への対応も早い段階から取り組み、『現行日本法規』のデータベースをもとに省スペースで検索しやすい『現行法令電子版Super法令Web』を提供。日本各地の条例・規則をデータベース化した『例規総合管理システムSuper Reiki-Base』は、全国の約6割の自治体が利用するほどです。
このように同社は全国の自治体をお客様に持つため、東京本社以外に9つの支社を擁する、出版社には珍しい全国規模の組織で事業を展開。各支社には30~50名程度の営業担当社員を配して、各自が担当自治体を持ち、離島地域まで隈なくカバーする体制を整えています。
「当社の企業理念は“法令の普及と地方自治の振興への寄与”。1893年の創業以来130年近く、一貫して法令と地方自治に関わっています」と語るのは同社執行役員の友田雅己氏。法令コンテンツ事業推進部部長の石﨑壽治氏も「『現行日本法規』は日本の法令の『原典』となる書籍集。行政機関はこれを参考に法律を立案し、事務を執行しており、間違いは許されません」と言葉に力がこもります。
※加除式図書…ルーズリーフ形式の「台本」をベースに、追加・変更箇所をページ単位で差し替えるもの。
長年積み重ねてきた信頼とネットワーク
同社の強みは長年に渡り培ってきた編集力・校閲校正力と、全国の自治体へ法令情報を届け続けてきたネットワークと信用力。これらの強みを活かし、自治体のみならず民間企業にも法令にまつわる最新情報を届ける事業を推進しています。
一例を挙げると、自治体史・制度史を数多く刊行してきた実績から、企業や団体の記念史誌、記録集、大学の紀要、自費出版などに対応。準備委員会の立ち上げから製本・納品までワンストップでサービスを提供します。
また、コンプライアンス遵守が叫ばれる昨今、働き方改革関連や環境・金融規制など、企業がチェックしなければならない法律と自治体の条例は増える一方です。2019年4月には外国人材受け入れに密接に関わる改正入管法が施行されるなど、企業を取り巻く環境は急速に変化しています。以前より同社は、法令改正へのいち早い対応を目指して、書籍や月刊誌などを通じた情報提供を行ってきましたが、さらに民間企業向けのサービスを拡大。その一例がお客様が指定した法律と自治体の条例などの改正・廃止情報をメールでお知らせする「法令改廃情報提供サービス」です。
改正入管法施行の翌月には、『改正入管法対応外国人材受入れガイドブック』を刊行。7月には著者である弁護士によるセミナーを東京都内で開催しました。「おかげさまでセミナーは大変盛況でした。法律を普及させるだけでなく、正しい運用につなげるのが我々の使命。今後も法改正などをきっかけにこうした活動を続けていくつもりです」(友田氏)
地方創生イベントや研修など出版社の枠を超えた事業を!
同社の事業範囲は出版業に留まりません。地方自治の振興貢献を目指して積極的な活動に幅広く取り組まれています。自治体が主催する事業や自治体と活動する団体とのハブ的な役割も担っています。
その一例が、『宝くじスポーツフェア』。プロ野球やバレーボールの往年の名選手を招き、地元アマチュアチームとの親善試合や子ども向け教室などのイベントを開催し、地域社会の健全な発展と住民福祉の向上に努めます。また、瀬戸内海の離島の町へ移住を勧めるスタディツアー(仕事体験)の開催をサポートし、移住実績を挙げたことも。いずれも同社のスタッフが連絡・調整、告知・集客、イベント当日の準備・運営まで幅広く関わり、イベント会社さながらの活躍ぶりだといいます。
さらに2017年には教育研修を主たるビジネスとする株式会社行政マネジメント研究所をグループ会社化。一部自治体の階層別研修を一手に引き受け、実績を挙げはじめています。
「一見お堅い事業内容に見えますが、実は当社は創業以来、イノベーションを繰り返して発展してきた会社です」(友田氏)「今後も社内外の知見を組み合わせ、つねに新しいソリューションを提供していきたいですね」(石﨑氏)という言葉からも、ともに創意工夫し、協業できる企業の登場を心待ちにする同社の姿勢が窺えました。