日本のオフィスコーヒーサービスのパイオニアであり、本場米国でも西海岸第1位・全米第3位のシェアを誇る株式会社ダイオーズ。1969年の創業以来、BtoB市場に特化し、ダスキンのクリーンケア商品のレンタルで加盟店売上高全国1位を達成後、1977年に日本初のオフィスコーヒーサービスを開始。オフィスでレギュラーコーヒーを飲むには喫茶店へ出前を頼むしかなかった時代に、1杯30円で美味しいコーヒーを提供したことから事業が急成長し、顧客を拡大。その顧客ベースにピュアウォーターサービスを上乗せするなどし、一歩一歩着実に顧客数と売上を伸ばしてきた企業です。
現在の事業の大きな柱は、飲料サービスと環境衛生サービス。飲料を代表するオフィスコーヒーサービスでは自社焙煎コーヒーに加えて、近年の多様化するコーヒーの趣向ニーズに対応すべく、オフィスコーヒー業界では初めて本格的なスペシャルティグレードのコーヒーの取り扱いを開始。アジアでは初めてとなるワールドブリューワーズカップの世界チャンピオンとなった粕谷哲氏(Philocoffea代表)と包括的アドバイザリー契約を結び、粕谷氏自らが現地に赴き調達した豆を、自身のロースタリーで焙煎したスペシャルティコーヒーを提供しています。
さらに日本のオフィスコーヒーサービス業界で唯一、スイスの高級コーヒーマシン「FRANKE」の正規代理店となり、ブラックコーヒーはもちろん、本格的なとろけるミルクのカプチーノやカフェラテなどが楽しめる世界最高峰のマシンも用意しています。他では味わえない世界最高水準の“特別な1杯”をオフィスに届けています。
社内外のあらゆる場面で「成功者に学べ」
現在、ダイオーズは約20万軒を超える顧客に対しそれぞれ中長期の契約を結び、定期的な訪問により商製品の販売やサービスの拡充を行うことでサービスのアドオンにつなげています。このビジネスモデルを支えるのが、顧客と定期的に接する優秀なルート営業スタッフの存在です。こうした人材の育成方針は、創業者である代表取締役社長・大久保真一氏の「成功者に学べ」という言葉が根幹にあるといいます。
「創業前の26歳のとき、“学ぶものは現場にある”という信念のもと、米国と欧州のチェーンストアなどで2年間修業を積みました。その時に米国で見た、オフィスコーヒーサービスに着目し、現地で成功されている方からその全てを学んで、日本でビジネスを立ち上げました。この経験こそが私の原点です。今でも現場で実績を挙げている社内の人材から学べることが多いと考え、現場同行を続けています」
その言葉どおり、今年80歳になる大久保社長自身は社員と同じ赤いユニフォームを身にまとい、社長とはあえて名乗らず、顧客先を同行訪問。成績優秀者の働きぶりをつぶさに観察し、現場で見たこと感じたことを年2回の全社勉強会で全社員に共有することが、独自の人材育成方法となっています。
「成功者に学べ」という方針は、同社のグローバル展開でも徹底されています。同社が米国カリフォルニア州へ初出店したのは1988年。その10年前から大久保社長は米国で成功したオフィスコーヒーサービス企業を年3~4回訪問し、経営者を日本へ招待するなど、人脈づくりを続けました。その人脈は米国進出時に現地のトップ企業を買収する第1号M&Aとして結実。さらにその買収先の社長を次のM&Aの責任者にするなどしてシェアを拡大し、成功者のノウハウを次々に取り込んでいます。
「ですから、米国でのM&Aにおいて、私どもは仲介を一切使いません。米国の経営陣は長年この業界で実績を挙げ、人脈も持っている方も多いので、売り手にも信用されています。売却いただいた事業基盤を基に当社流の運営ノウハウを加えることで着実に経営基盤を固めてきました」。念願の本場・米国進出とはいえ拙速に陥ることはなく、西海岸で地道にシェアを固め、ロッキー山脈を越えたのは米国進出から13年目のこと。「一歩ずつ足元を固めてから事業を拡げていく」方針は、国内でも海外でも変わりません。
コロナ禍だからこそ生まれるニーズに対応し、市場を創造
新型コロナウイルス感染拡大以降、同社は主戦場であるオフィスから「働く人々の姿が消える」という未曽有の事態に直面しました。しかし、全面ロックダウンが長く続いた米国市場は大きな打撃を受けたものの、対して国内市場は堅調で契約件数自体は増えているといいます。「テレワークが進んだ企業は、“オフィスを縮小したい”という企業と出社する回数が減ったからこそ、“会社に来たいと思わせたい”という企業に二極化しています。私たちは後者の企業から新たなご契約をいただくことが多く、出社した社員の方々に美味しいコーヒーや私どものさまざまなサービスを通じて働きたくなる環境づくりを応援させていただいています」
こうした顧客では高価なコーヒーマシンのリース料は会社が負担し、コーヒー豆代の一部を社員が負担するのが一般的です。同社は「コーヒーを買いにわざわざコンビニまで行かなくて済む」環境を実現するだけでなく、スマホ決済の支払いアプリも提供し、顧客の利便性を図っています。さらにオフィス用の空間除菌消臭機の提供など、環境衛生事業にも新たなニーズが生まれました。
「このようにコロナ禍だからこそ生まれるニーズもあります。ダイオーズの企業理念は“時代の新しいニーズを先取りして、新しいマーケットを創造する”。今後も新しい時代のニーズに合わせたサービスをご提供していくつもりです」