在宅・テレワーク率約80%体制を支えるのは多角的な改革と「社員を信じる」姿勢
2018年7月、「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律(働き方改革関連法)」が公布され、2019年4月より順次施行が始まりました。労働者の働く時間や待遇、環境など、企業にとって多岐に亘る取り組みが必要な法律ですが、NECネクサソリューションズでは施行以前の2018年から社内に「働き方改革タスクフォース」を立ち上げ、人事総務部門だけでなく、営業部門やシステム開発部門を巻き込んで自社の働き方改革に取り組んできました。人事総務本部長の藤田典広は、「ただ単に“残業を減らしましょう”では問題の解決になりません。もっと広い視野で社員が仕事を楽しめるように…というスタンスで取り組みました」と当時を振り返ります。
さらに2019年4月より「タスクフォース」を「働き方改革委員会」へと格上げし、役員が委員長に就任。経営陣も含めて意思決定し、より推進力を増して改革を進めています。
当社の働き方改革の取り組みは、おもに以下の5つに集約されます。
時間と場所に縛られない働き方を推進し、在宅勤務が可能な社員にはモバイルPCとスマートフォンを支給。在宅が必要なときは在宅で、そうでないときは自宅とサテライトオフィスを適宜使い分けるなど、働く場をフレキシブルに設定しています。各地区の主要ターミナル駅数カ所に導入したサテライトオフィスについて、藤田はその効果を次のように説明します。
「本社地区を例に挙げると都心のみならず、関東各地にお客様が多くいらっしゃいます。例えば営業やSEが埼玉のお客様先を訪問した後、三田の本社まで戻って来ると時間がかかります。そこで上野のサテライトオフィスでオンラインミーティングや情報収集・検討を行って、その場からお客様にご返答をすればクイックレスポンスができ、顧客満足度が上がります。さらに本社に戻る時間のムダがなくなった社員の従業員満足度も上がり、両面のメリットがあります」
もともと8時45分~15時をコアタイムとしてフレックスタイム制を導入していましたが、これを10時~15時のコアタイムへと変更。前日残業した社員は、翌朝の出社時間を調整することを可能にしました。なお、育児や介護が必要な社員には、以前から短時間勤務制度が定着しています。
「コアタイムを10時からにすると、“遅い出社が常態化するのでは?”という懸念を持たれる方もいるかと思いますが、我々は社員を信用することにしました。このフレックスタイム制度は自然と時差出勤につながる結果になりました」
各部署で社員が意見を出し合い、「職場の枠を超えて集まれる空間をつくろう」と、オフィスレイアウトや古くなった什器の変更などを検討。社員のアイデアによるソファ席やガラス張りミーティングルームなどが整備され、オフィスの雰囲気ががらりと変わりました。
さらに本社内の複数の会議室の壁を取り払う改造工事により、共創スペース「Switch.」をオープン。100人程度が入れる大空間のコモンスペースが誕生しました。共創スペースについてはプランニングチームを社員公募しデザインを検討。工業デザイナーも加えた約30人で議論を重ね、現在のかたちに落ち着きました。「Switch.」というネーミングには、「仕事から仕事へと気分を切り替えられる場所に」という意味が込められています。
「初期段階では、“カフェスペースが欲しい”“TVを置いてほしい”など、リフレッシュルーム的な意見も多く寄せられましたが、“働き方を変えるためにはどうすればいいか”を改めて問い直した結果、現在のようにシンプルな空間ができあがりました。パーテーションはほとんどなく、可動式のデスクと椅子があるオープンな空間で、使用目的は問いません。チームミーティングをしてもいいし、個人の作業をここでしてもいい。気分を変えれば新しいアイデアが生まれるかもしれません」
テレワークや在宅勤務が進んだとき、企業が心配するのが社員間のコミュニケーション不足でしょう。藤田も「コミュニケーション対策に魔法の杖はない」と語り、NECグループ全体の従業員満足度調査の結果などを勘案しながら、地道な対策を検討しているところです。
「当社がコストをかけて共創スペースを作ったのも、世代や部署を超えたコミュニケーションを促進させたい意図があったからです。実は本社ビルのオフィスは複数フロアに分かれており、どうしても部署間に物理的な距離がありました。その点、パーテーションがほとんどなく、いつでも誰でも使える共創スペースなら物理的な距離が存在しません。とりわけ若い世代が集まり、部署を超えて交流することで新たな視点や発想が生まれる可能性がありますし、仲間意識も自然に芽生えるはずです」
在宅勤務やテレワークが増えれば、当然ながら紙書類のやりとりが難しくなります。そこで現在数多くある社内書類のうち、電子承認化などで対応できるものをできる限り増やし、社印押印が必要な社外書類などを除いて、ワークフロー、ペーパーレス化を進めています。
「実はテレワーク化を進めてみてわかったのですが、実際にサテライトオフィス+テレワークという新しい環境が使えると、社員から“この業務フローを少し工夫すれば自宅で作業ができる”といった提案が自発的に挙がるようになります。私たちはこのような現場の意見を積極的に吸い上げ、“これまで当たり前だと思っていたことを変えてみよう”と試行錯誤しているところです。一気に進めるのは無理でも、トライ&エラーを繰り返しながら考える姿勢が重要です」
NECネクサソリューションズ株式会社
人事総務本部長 藤田典広
前述の(1)~(5)の働き方改革の中で、もっとも社員の反響が大きかったのが、(3)オフィス改革の推進です。目に見えて環境が変わることで社員のモチベーションが上がり、「会社は自分たちの意見に耳を傾けてくれる」と実感できる効果があったようです。
もともと2020年夏を見据えて進めていたテレワーク準備も、新型コロナショック下でのスムーズな在宅勤務への移行という成果に繋がりました。一般的に在宅勤務では「上司から見て勤務時間に応じた成果がわからない」等と心配する声が聞かれますが、そこは「お互い信じ合う気持ちが大切」と藤田は断言します。「(3)オフィス改革を実行してわかったのですが、社員は論理的な改革よりも「心地よい」改革を求めています。最先端の働き方であっても、まずは人と人との信頼関係が第一。“社員を信じる気持ちが重要!”と私は考えています。今後は新型コロナショックを踏まえたBCPも含めた働き方改革へと進化させていく計画です」