※下記は自治体通信 Vol.26(2020年10月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。
少子高齢化による労働力人口の減少を見すえ、飯能市(埼玉県)では業務の切り分けを行って定型的な業務のアウトソースを図るなど、以前から業務の効率化に取り組んできた。
さらに近年ではRPAに着目し、令和元年度に実証実験を行い、令和2年度内から本格導入するための準備を進めている。同市の担当者3人に、導入の背景や実証実験の成果などを聞いた。
都築 小さい業務から導入でき、徐々に自動化する領域を広げられる点に着目しました。当市のような規模の自治体では、大きなシステムを入れるような予算の確保は難しい。その点、スモールスタートができるRPAなら、改善やメンテナンスもしやすいだろうと考えたのです。
入札の結果、NECネクサソリューションズから提案された『Blue Prism』を実証実験に活用することに。扱う情報の性質上、セキュリティを確保できること、開発した機能をほかの業務にも再利用できるメンテナンス性などを評価。また、当市の基幹系システムに同社が精通していることもあり、業務を理解したうえで、導入だけでなく運用まで考慮した提案をいただいたこともポイントでした。
西澤 まずは、NECネクサソリューションズと全庁的な説明会を実施。労働力人口の減少をふまえ、なぜ当市がRPAを導入するのかを説明し、同社にはRPAでどのような効果を期待できるかなどを話してもらいました。全職員にRPAのことを理解してもらったうえで、RPA活用を“自分ごと”としてとらえてもらうためです。
それから、全職員にアンケートを実施。RPAに活用できる、と思える業務を広く募集しました。
麻田 結果、100を超える業務があがってきました。実際にすべてに活用できるわけではありませんが、100以上の業務が集まったのは、それぞれの職員が課題意識をもって参加してくれたからではないか、と実感しています。
その後、NECネクサソリューションズのアドバイスを受けながらRPAとの親和性が高く、時間短縮の効果が見込めるかどうか、といった観点から業務の絞り込みを実施。最終的に、「軽自動車課税対象登録」「軽自動車課税対象削除」「国保所得照会結果入力」「児童手当加入年金の確認」の4業務において、実証実験を行うことにしたのです。
西澤 あくまで、実証実験結果から算出した期待値ですが、1年に換算すると398時間の削減が見込めることがわかりました。この結果を全庁に報告したところ、おおむね高評価でした。
麻田 とくに、上層部では評価が高かったですね。当市では「職員が日本一の対応を目指す」ことを掲げており、「業務の効率化と住民対応の向上につながることだから積極的に推進してほしい」と言ってもらえました。
都築 今後は業務のヨコ展開を図っていきます。今回の実証実験にあたっては、NECネクサソリューションズのシステム部、営業部、RPA専門の部の方々が連携し、それぞれの視点で「どの業務にRPAを使えば効果的か」を一緒に考えてくれました。当市からも意見を出していくことで、迅速にRPAを行政に実装していきたいですね。
山田 ツールを販売・開発するだけではなくて、職員の方への意識づけから庁内の体制づくり、業務選定といったコンサルティングまでを行う企業のサポートを受けることが必要かと思います。RPAは、あくまでツールのひとつ。導入しただけで、業務改革につながるわけではありません。当社では、営業、業務SE、RPA専門SEが一丸となって本来の目的である業務改革に効果的なRPA導入のコンサルティングを行います。そういう意味では、業務選定の際は職員の方からの意見収集も必須ですし、飯能市の全庁的な協力体制は当社としても業務が進めやすかったですね。
高橋 いくつかありますが、大きなところで言うとセキュリティに優れているところですね。たとえば、住民情報やシステムに入るためのパスワードといった重要な情報はすべて暗号化され、データベースに一括して格納されます。端末側にデータが残る心配がなく、安全に管理できます。
また、どの職員がいつどのような操作をしたかといった監査ログをすべて残せるため、なにかあった際に説明責任を果たすことができます。
こうしたセキュリティ面でも自治体業務に即したサポートができますので、ぜひ活用を検討してほしいですね。