2025年、後期高齢者の人口が急増し、社会保障費の倍増、医療従事者の人材不足、患者数の減少など医療機関をめぐる問題は更に深刻化する局面を迎えようとしています。
そこで、課題解決の一助となると期待されているのが病院におけるDX(Digital Transformation)です。
本コラムでは、病院DXの一例として現在病院が抱える3つの課題に対する施策について以下の3部構成で紹介します。
第1回目は、病院DXで実現する待ち時間の課題解決方法についてお話しします。
40分。
この時間は、患者の待ち時間に対する不満度の境界線となります。
株式会社メディネットが実施した病院の待ち時間に対する患者の意識調査によると、診察の待ち時間が40分未満の場合は20%以下である不満度が、40分を超えると約40%にまで倍増します。
出典:「外来患者『待ち時間』の意識」(株式会社メディネット)
(https://www.mdnt.co.jp/insight/mr/wait-time.php)
対して、厚労省が公表した「令和2年受療行動調査」によると、外来患者の40%が30分〜3時間の待ち時間となっています。
また、外来患者の診察時間は5分未満が約28%、5分〜10分未満が約41%となっており、診察時間に対する待ち時間の長さも、不満度を左右する一端となっていると考えられます。
診察の待ち時間に関して、多くの病院で下記の課題を抱えています。
それでは、現状どのような対策が取られているのでしょうか。次の章で見ていきます。
そもそも待ち時間を短縮するための施策として、効果的と考えられるものの一つに、曜日ごとの診察予約の平準化が考えられます。
次回予約の際に、比較的空いている曜日を患者に提示することなどで実践できるため、コストもかからず簡単に実現することができます。
但し、患者の都合などによるため、効果としてはそれ程期待できるものではありません。
現実的に、多くの病院で、診察の質を下げず待ち時間を劇的に短縮することは困難であると考えられます。
そこで、待ち時間による患者の心理的負担の緩和に焦点を当てた解決策を講じていきます。
まず挙げられるのが、順番表示モニターの導入や増設です。
待合室や、院内のレストランなどに順番表示モニターを設置することで、待ち時間の目安がわかり、患者の心理的な負担を軽減することができます。
但し、導入の際に比較的大きなコストが必要になるため導入を踏みとどまっている病院も少なくありません。
また、既に導入している病院でも、患者が順番表示モニターの付近から離れられず、待合室の混雑解消が実現できていないケースも非常に多く見受けられます。
そこで、近年注目を集めているのがモバイルサービスによる診察の順番案内です。
順番表示モニターに比べ、比較的低コストで導入することができ、患者は車などの好きな場所で混雑を避けながら、順番を確認したり診察案内の通知を受けたりすることができます。
そのため、待合室付近で待つ必要が無いため、院内の混雑解消や、順番に関するクレームや問い合わせを減少させる効果も期待できます。
株式会社メディケア生命が実施した病院選び、医者選びに関する調査によると、病院の待ち時間対策のサービスとして魅力を感じるものの第一位と第二位に前述した順番表示モニターと、この診察案内のできるモバイルサービスが挙がっており認知度が高まっていることが伺えます。
株式会社ホスピタルヘルスケアの『EPARK(イーパーク)スマートガイドシステム』は、診察の順番が近づいた際の通知、および順番の確認を、LINEで利用できるモバイルサービスです。
LINEのプラットフォームを採用しているため、LINEアプリを既にインストールしている人であれば、新たにアプリをダウンロードする手間や面倒な個人情報入力の手間を省略でき、簡単な操作で利用できるため、若い患者から高齢の患者まで幅広い年齢層の患者に利用されています。
導入実績は大学病院、公立病院、その他社会福祉法人などが運営する大病院から中小規模の病院まで様々です。
本システムは、診察の順番待ちだけでなく、「予約確認」や「前日予約リマインド」、「再来受付機能」、「後払い決済」を追加することができ、外来受診する際の入り口から出口までを患者や家族のスマートフォンで案内できる仕組みとなっています。
いずれも、院内の業務改善、コストカット、患者満足度の貢献を目的とした機能です。
次回のテーマは、後払い決済についてです。
是非ご高覧ください。