前回紹介した自律走行型デリバリーロボットについて、本稿では医療現場における活用方法・メリットと、それによる経営効果を説明する。
医療現場におけるデリバリーロボットの具体的な活用方法としては、薬剤部から病棟への医薬品搬送が挙げられる。不定期に発生する搬送業務をロボットに任せることで、医療従事者が搬送業務に割いていた時間を削減することができる。
搬送業務をロボットが行うことについてのメリットは様々ある。
一つ目に搬送の依頼だ。深夜の時間帯や搬送業務専任者を雇用していない医療現場では、自身が持ち場を離れることができない場合、他のスタッフに搬送を依頼する必要がある。しかしながら、各スタッフも各々で業務を抱えていたり、搬送を依頼する相手を探したり、業務の合間ができるのを待ったり、とタイムリーな対応が困難な実情がある。ロボットであれば昼夜問わず搬送ができ、必要に応じて離れた場所からでも搬送指示を出すことができるため、それらの煩わしい対応から解放される。
二つ目のメリットは、管理画面上でロボットの走行情報や目的地・搬送依頼数が一目で分かるため、搬送品を受け取りにくるタイミングを把握することができることだ。
デリバリーロボットの導入による経営効果は大きく二つある。
一つ目は「費用削減」だ。物流専門スタッフの雇用、エアシューターなど大規模な物流設備の導入・維持管理に関わる費用を削減することができる。また、医療従事者の搬送作業に関わる時間を削減することで、業務の質の向上に貢献する。
二つ目が「働き方改革」だ。医療従事者の業務負荷を軽減するだけではなく、院内搬送に携わっていた時間を本来の医療・看護業務や、病院利用者とのコミュニケーションに充てることができる。また、日中の忙しい時間帯や夜間の勤務人数が少ない中、スタッフが持ち場を離れるという心理的なストレスを解消し、働きやすい環境を実現することができる。
日本における労働人口不足が年々深刻化している中、医療従事者はもとより医療現場での物流専門スタッフについて、募集をかけてもなかなか人が集まらない現実がある。
デリバリーロボットという新たな選択肢によって、物流専門スタッフの雇用という課題だけではなく、医療従事者の搬送業務という課題を解決する。これにより、医療従事者の医療・看護業務以外でのストレスを軽減させるだけではなく、執務時間を確保し、病院内でのコミュニケーション活性化やホスピタリティを向上させ、利用者の満足度や病院のイメージアップにも期待ができる。
日本の医療施設では、聖マリアンナ医科大学病院で自律走行型デリバリーロボット「Relay」(米国Savioke, Inc製)を用いて実証実験を行った。
次回は、この実証実験の内容とその効果について紹介する。
https://www.nec-nexs.com/supple/reaflet/medical/02.html
NECネッツエスアイ株式会社
エンジニアリング&サポートサービス事業本部
エンジニアリング&サポートサービス販売推進本部 ビジネス開発グループ
https://www.nesic.co.jp/solution/industry/hotel/relay.html#Col4
(Relayの動画も掲載しています)