前回までは、深刻化している労働人口不足に対応するための施策の一つとして、医療従事者の代わりに院内の搬送業務を行うロボットの紹介とその活用方法・メリットについてお伝えしてきた。
最終回となる今回は、医療現場における自律走行型デリバリーロボットの実証実験について紹介する。
日本の医療現場におけるロボットを活用した搬送業務の実証実験は、2018年12月に聖マリアンナ医科大学病院で実施された。
自律走行型ロボット「Relay(リレイ)」(米国Savioke, Inc製、以下Relay)が検体および医薬品の搬送を行う
約10日間
医療従事者の搬送業務における負担軽減や業務効率化を図り、働き方改革を推進
入院患者等の病院利用者への利便性とサービスの向上を目指す
実証実験期間中、「Relay」は本館の薬剤部から、渡り廊下やエレベータを介し、別館の内科病棟まで、片道100~150m程度の搬送ルートを自律走行した。エレベータへの乗降はエレベータ連携機能の活用、搬送品を取り出すためのフタの開閉はRFID認証、搬送記録はRelayのログ活用にて行った。
医療従事者および病院利用者がいる場での走行であったが、人や設備への衝突等もなく、搬送品の破損、品質劣化等の事象も確認されなかった。また、院内をロボットが走行することに対する医療従事者および病院利用者からの反応は、ポジティブなものが多かった。実証実験後に医療従事者へ実施したアンケートでは、ロボットの操作性や業務効率化に対して概ね好意的な反応が見受けられた。これらは「Relay」の優れた性能や人に圧迫感を与えない親しみやすいサイズ感も寄与したものと考えられる。
聖マリアンナ医科大学病院での実証実験の結果で、搬送ロボットの活用による医療現場での働き方改革推進の可能性を再確認できた。
NECネッツエスアイは、医療現場での「Relay」利用にあたり、病院ごとに環境調査や要件ヒアリング、マップ作成やルート設定、システム連携などの技術支援を行うだけでなく、費用対効果シミュレーションやお客様のご要望にあわせた搬送ルートのご提案など、より快適な院内搬送環境を整備するための提案も行っている。もちろん導入後も、安心してご利用いただくための操作教育や24時間365日電話受付窓口、現地への駆け付けなどサポート体制まで整えており、「Relay」に関わる対応をワンストップで行うことが可能だ。
2019年4月から働き方改革関連法が施行されており、医療現場においても時間外労働規制が2024年4月に適用される見通しである。看護師の負荷となっている搬送業務をロボットへタスク・シフトすることで、医師が普段実施している予診や服薬指導などの業務を看護師が行う時間を捻出し、医師の長時間労働の抑制にも繋がる。医療現場におけるロボット活用は、2024年4月以降を見据えた病院経営の一助になるのではないかと考えている。その可能性は未知数だが、医療従事者の業務負担軽減だけでなく、医療従事者が病院利用者・患者のそばにいる時間を創出することで、医療サービスの向上と病院の価値向上にロボットが貢献できる可能性を追求していく。
https://www.nec-nexs.com/supple/reaflet/medical/02.html
NECネッツエスアイ株式会社
エンジニアリング&サポートサービス事業本部
エンジニアリング&サポートサービス販売推進本部 ビジネス開発グループ
https://www.nesic.co.jp/solution/industry/hotel/relay.html#Col4
(Relayの動画も掲載しています)