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名言・格言シリーズ

「強いからヒーローなんじゃない 喜ばせるからヒーローなんだ。」

こちらは、アンパンマンの作者、やなせたかしさんの名言です。

アンパンマンは幼児に絶大な人気を誇るヒーローですが、やなせたかしさんによると、「世界最弱のヒーロー」だそうです。アンパンでできた顔が濡れたり変形したりするとパワーが出なくなり、ジャムおじさんに助けを求め、新しい顔をもらわないと戦えません。それに、弱っている人を見たら顔のアンパンをちぎって差し出してしまいます。自分が弱るとわかっていても、助けずにはいられない―――こうした行為が「正義」であるとやなせさんは言います。

やなせさんがこう考える背景には、戦争の体験があります。20代で中国に出征し、「大東亜共栄圏」の名の下、正義の戦いだと信じて戦いました。しかし敗戦で戦争は終わりを告げ、正義の戦いというものは存在しない、戦争そのものが悪だったと価値観が一変しました。正義は時代や立場によって全く異なってしまう現実に直面し、本当の正義とは何かを突き詰めて考えました。そして、「飢えている人に食べ物を差し出す」といった、困っている人を助けることこそが正義であるとの考えにたどり着きます。

アンパンマンは当初、アンパンを配る普通の男性として描かれていたそうです。やなせさんの「正義は政治家や偉い人だけが行うものではなく、普通の人がするもの」というメッセージが込められています。悪い者をやっつけることではなく、「溺れている子供を見て、思わず川に飛び込んでしまうような行為」こそが正義―――だからアンパンマンはバイキンマンを必要以上に傷つけることはせず、自分を犠牲にして弱い者を助けるのです。

さて、アンパンマンの世界にはたくさんのキャラクターが登場しますが、中でも異色である「ロールパンナ」についてもご紹介します。

ロールパンナはジャムおじさんのパン工場で、メロンパンナのお姉さんとして誕生しました。生地にはメロンパンナのメロンジュースが混ぜ込まれていて、「人に優しく、人に尽くすように」との願いが込められました。しかし、そこへバイキンマンが送りこんできたロボットにより、バイキン草のエキスも混ぜられてしまいます。そのままロールパンナは焼き上げられてしまい、善と悪の両面の心をもつキャラクターとして誕生しました。

「みんなを傷つけてしまうから」とメロンパンナとも離れて孤独に暮らし苦悩しているロールパンナの姿は、どこか人間らしくもあり、視聴者の心を惹きつけています。善と悪の心を持つのは、人間であればみんな同じ。それでもより良く生きていきたいというロールパンナの生き方には、私たちも考えさせられてしまいます。

アンパンマンには、やなせさんが考える正義や生き方についてのヒントがたくさんちりばめられています。奥深いメッセージは、心が疲れたときにも癒してくれそうですね。