「終わりよければ全てよし」ということわざがあります。
これは、「物事の結末が大事であり、過程は問題にならない」という意味です。
実はシェイクスピアの戯曲「All's well that ends well」のタイトルのフレーズでもあり、生活の中でもよく使われるフレーズですね。
物事を総括する際、「あれはよかった」「いまいちだった」と考える基準はどこにあるのでしょう。「終わりよければ全てよし」は本当なのかを実験した事例があります。実験では、被験者に次の体験をしてもらいました。
A:痛いほど冷たい水に60秒間手をつける
B:痛いほど冷たい水に90秒つけるが、始めの60秒はAと同じ温度で、残り30秒で温度が少し上昇し、痛いほど冷たいのが和らぐ
この2つの体験の後、もう一度やるならどちらがいいかと質問をしたところ、被験者の8割がBを選択しました。実験の情報だけを見ると、手をつける時間が短かったAを選ぶのが妥当のように思えますが、多くの被験者にとって、痛さの絶頂(ピーク)と痛さが和らいだという結末(エンド)の記憶が判断基準になったと考えられます。
このように、物事の判断基準には「絶頂(ピーク)」と「結末(エンド)」の2点における印象が大きく作用することを「ピーク・エンドの法則」といい、これが様々なマーケティングなどでも利用されているのです。
例えば、あるレストランのサラダに虫が入っていたとしましょう。食事の最中(=ピーク)に嫌な思いをしたことはどうしても記憶に残ってしまいますが、その後、退店するまでに店側がどんな対応をするかで結末(エンド)も変わってくると考えられます。お客さんが今後また店を利用したくなるようになるには、誠意ある謝罪はもちろんのこと、デザート1品サービス、次回の割引など、相応の対応が必要でしょう。
逆に、レストランに何もミスがなく料理も申し分なかったのに、他の客のマナーが悪くて食事が楽しめなかった場合で考えましょう。退店する際に丁寧な見送りをして、少々騒がしかったことを気にかけた会話をすれば、店の印象としては「料理もおいしく親切だった」となるでしょう。逆に、店側の対応が悪かった場合は「料理はおいしいのに雰囲気が悪く、惜しい店」ということになるのではないでしょうか。
「終わりよければ全てよし」とはつまり、絶頂(ピーク)にミスや不運があったとしても、結末(エンド)がよければよいイメージを作ることは可能だということです。ビジネスや人間関係においても、いろいろな局面で参考になることわざですね。