2019年、ラグビーワールドカップが盛り上がりを見せて以降、「One Team(ワンチーム)」という言葉がよく使われるようになりました。一つのチームとして目標を達成するまで、力を合わせようという意味です。
ビジネス上でも「社員一丸となって」という声かけが多く聞かれ、チームワークや連帯感は日本人の強みといわれています。しかしチームワークのとらえ方は、海外では少し違うようです。
欧米と比べてみましょう。欧米では日本より個人主義の考え方が強く、チームも個人の利益のために存在します。メンバー個々のスキルや性格は全く違っていて、それぞれが能力に沿った役割をもちます。能力をいかんなく発揮することでお互いに最大の利益を得られる状態が良いチームとされますが、メンバーが個人的利益のためにチームのやり方の改善を要求するといった自己主張や競争も生まれ、チームリーダーはそんなメンバーのケアをしながらチームとしての最終目標を目指すのです。
良いチームが出来上がれば最高のパフォーマンスになりますが、メンバー個人が利益を得られなければチームを去ることは当然であり、破綻することも多いようです。また、連帯感は希薄なので、情報があまり共有されないという事態も考えられます。
日本ではどちらかというと、チームのメンバーは同等の能力を持つ場合が多く、個々の責任を果たし調和を乱さないように気を付けて行動しますね。与えられた役割が自分の興味と違っても我慢をするというのは暗黙のルールで、秀でた能力をかすという観点が乏しいようです。チームの一員としての連帯感やルール遵守を重視するので、年長者・功労者でないと意見しづらい空気や、若い人材の能力が軽視される傾向もあります。その中で、チームリーダーはメンバー同士が公平にうまくやっていけるかどうかを考えながら役割分担をします。
海外から見ると、こうした日本式のチームワークが活かされる場として、カスタマーサービスや品質管理が挙げられるようです。チーム全体が同様の研修を受け、徹底的に情報を共有し、同様のサービスを提供できるという点は利用者の安心につながっており、海外から見ると賞賛に値するといわれます。
逆に、日本式チームの弱点は変革の起きにくさです。強く自己主張することは調和を乱すととらえられる傾向がある上、チームリーダーは意思決定権をもたず、ルールに従って意思決定をする慣習があり、構造上の問題ともいえるでしょう。よいアイデアをみんなで実現するという過程にこそ、チームワークをかせると素晴らしいかもしれません。
日本と海外のチームワークには一長一短があり、どちらが正解というわけではありませんが、働き方や個人の多様性が見直される昨今、日本式のチームワークが足かせになる事態も起きるかもしれません。個人の能力も存分に活かせる海外式のチームワークにも学ぶところが大いにありそうですね。