柄のある動物といえば、真っ先にシマウマを思い浮かべる人も多いでしょう。でも、どうしてシマウマは縞模様なのか…これは100年以上もの間、科学者たちを悩ませてきた謎の1つです。
仮説としては「害虫を避けるため」、「天敵の目を欺くカムフラージュのため」などが挙げられてきましたが、これこそが真実だと決定づけられるものはありませんでした。そんな中、縞模様の存在意義を解明するヒントになるような分析結果が発表されました。
2015年、ある調査チームはアフリカ大陸におけるいくつかの地域で、広範囲に生息している16のシマウマの群れに注目し、縞模様のパターンを分析しました。その地域の土壌の水分、降雨量、病原体を媒介する吸血バエの有無やライオンの分布といった29にものぼる環境的な条件を測定し、それらとシマウマの縞模様のパターンに関連があるかを調査しました。その結果、気温と縞模様には何らかの関連性がありそうだ、ということが判明。気温が高い地域に生息するシマウマほど、縞模様が多かったのです。
これにより新たな仮説が浮上しました。縞模様の黒い部分は白い部分より熱を吸収しやすく、黒い部分と白い部分で気流の違いが生まれ、小さな空気の渦ができることで体温の上昇を防ぐ効果があるのではないかという説です。実際、同じ地域の縞のない哺乳類と比較すると、縞が多いシマウマは体温が3℃も低かったそうです。
さらに、この縞模様があるおかげで吸血バエが体に止まりにくいという効果も見られました。高温地域には吸血バエを媒介とする感染症が多く、高温地域のシマウマにとっては縞模様が命を守る手立てなのかもしれません。実際、2018年に馬に縞模様の布を巻き付けて観察した実験では、縞模様のない馬に比べて吸血されることが4分の1程度に減少したそうです。
今も縞模様の存在理由は結論づけられたわけではありません。けれども、自然界が生み出した模様にはいろいろな謎がありそうです。
ちなみに、キリンにも全身に大きな柄がありますが、これも「体温を下げるため」にあるという説が有力です。キリンの模様の下には複雑な毛細血管と腺があり、模様が血流と放熱を促して、体温の上昇を防ぐそうです。この茶色い模様が丸く大きいほど生存率が高い、という不思議な相関関係もあるといわれています。
動物園でも見られる身近な動物のことを、私たちはわかっているつもりでいながら、実はその模様がある理由すらずっと判明していないということは、意外な事実ですね。動物たちが生きている環境や暮らしの在り方に思いを馳せて、想像してみるのもいいかもしれません。