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未完了のものほど心に刻まれる
――ツァイガルニク効果

「人が目標指向的に行動するときは緊張感が生じ持続するが、目標が達成されると緊張感は解消する」―――ドイツの心理学者が唱えた考え方に沿って、旧ソビエトの女性心理学者、ブルーマ・ツァイガルニクがある心理学実験を行いました。

実験では2つのグループを作り、それぞれにパズルを組み立てたり、段ボールを組み立てたりという軽作業を行ってもらいました。Aは作業を1つ1つ完了させながらいくつかをこなすグループ、Bは途中で休憩をはさんで、完了させずに次の作業に取り掛かるグループとしました。全ての作業後、どんな作業をしたのか両方に聞くと、Bの方が2倍も作業内容を答えることができたといいます。

つまり、仮説に沿って考えると、1つの作業が完了するまでは記憶は維持されるものの、完了したとたんに緊張感が解け、記憶も薄れていくということ、また完了しない作業の記憶はしっかりと残っていくことがわかります。

この現象は、実は日常生活でも様々なシーンで活用されています。例えば、テレビ番組が盛り上がったところで「続きはCMの後で!」といってクライマックスシーンを引き延ばしたり、記事や漫画が1回分無料で読めるのに、続きは有料になっていたりする事例があります。スペインにある未完の教会「サグラダ・ファミリア」は、未完だからこそ人を惹きつけるのかもしれません。知りたいことが途中で遮断されると、どうしても続きが気になってしまう心理はなんとなく共感する人が多いでしょう。

仕事上でもこの現象を利用することはできそうです。キリのいいところで休憩を入れると、休憩後は案外とダラダラしてしまい、効率が下がってしまったことはないでしょうか? キリのいいところではなくわざと中途半端な状態で中断すれば、休憩前の作業の記憶がしっかりと頭に残るので、再開時にすぐやるべきことに着手でき、効率を上げることができます。

忘れてはいけないのが「完了したものほど忘れてしまう」ということです。完了したものより、完了しなかったものの記憶こそ積み重ねてしまうので、苦手意識やトラウマなどにつながる可能性もあります。

また、完了していないことが重複すると、パニックになることもありますね。「今日はアレをして、その次にコレをして、それから…ああどうしよう!」と1つ1つが気になりすぎると、何から着手すべきなのかと途方に暮れてしまうこともあるかもしれません。そんなときは、手帳やメモにやるべきことを丁寧に書き出してみましょう。書き出す作業をしっかりと完了させることで、心は少しスッキリするはずです。

脳は中途半端な状態のものを完了させようと動くために、記憶が鮮明に保たれるツァイガルニク効果。集中力が必要なタイミングではあえてキリが悪いところで切り上げたり、忙しかった仕事がひと段落したときはしっかり休んでリフレッシュしたりするなど、生活の中でも上手く活用できるといいですね。