進行管理をする上でのポイント
-目標期間の中間で進捗状況をチェックする-

滞納整理責任者が語る「公務員としての仕事の進め方」 [第3回]
2015年6月

執筆者:東京都主税局特別滞納整理担当部長
藤井 朗(ふじい あきら)氏

概要

新しい年度がスタートし、当該年度の目標値が設定され、その目標値に向けてどの程度進捗しているか把握することが管理監督者・管理職に求められる。そのため定期的な進行管理会議が必要だ。具体的には直近の実績を分析し今後の取組みを管理職が職員に説明するときなどは、責任者として期間の中間で簡易な集計で進捗状況を把握することを勧める。

仮に1か月に一度の進行管理会議開催であれば半月経過したところで組織全体の実績を仮集計する。その半月の仮集計実績がその当該月の計画額と比較してどの程度進捗しているのか判断する。半月の実績が予想に反して進捗していなければ、直ちに後半の半月に新たな手立てを実施することが組織目標達成に欠かせないのである。つまりスピード感ある「PDCAサイクル」の実践が大切である。

組織と個人のデータによる進行管理会議

さて管理監督者・管理職の方々にとって最も悩んでいるのがこの滞納整理における進行管理であろうと想像する。とくに新任の課長や他部門から異動してきた転入管理職にとっては難しいことのように思われるだろう。

進行管理会議では組織方針に基づいた職員の取組実績等が報告のベースとなる。各職員は組織目標達成に向けて毎月、文書催告・電話催告・臨戸・財産調査・滞納処分・執行停止等を事案毎に取り組む。その積み重ねが毎月のデータ実績であり、年度末にはその年度の個人のデータが作成される。

置き換えれば各個人データの集計が各月の組織実績となり、最終的には当該年度の決算となる。進行管理する立場の係長や課長は毎月の進行管理会議で組織全体の資料と個人別の資料の両方を作成し、組織と個人のデータを分析・説明する必要がある。客観的なデータなしに主観的な見当で管理職が職員に説明することは説得力がない。データを正確に読み取る能力を身に着けることは、管理監督者・管理職には重要なことだと考える。

データによる客観的な分析

以前、管理職を対象とした進行管理研修の会場で何人か顔見知りの同僚がいたので、簡単な進行管理についての質問をした。返ってきた言葉が「毎月のデータを確認すればいいのだろう」というものであった。進行管理研修を始めた頃、大概の管理職はこの程度の進行管理しかイメージしていなかった。

現状では、この進行管理を預かる管理監督者・課長は非常に大切な舵取りを任せられていることを認識しなければならない。進行管理する側の係長や課長はどのように進行管理すれば組織目標が達成されるのか知りたいことだと思われる。もちろん組織運営方針や取組計画というものが確立されていることを前提とする。

まずデータを分析するときは特殊要因があればそれを取り除いて平準化し、その上で分析した内容を各係別・職員別に比較をする必要がある。これら分析を通して、目標に対して現状がどこまで進捗しているのか客観的に把握する必要がある。

例えば今年度の実績を前年同月比の実績と前年度決算額との進捗率データで比較する。前年同月比の実績では同じでも前年度決算額での進捗率(例えば前年度の場合は60%)が今年度計画額に対する進捗率(例えば今年度の場合は50%)に乖離がある場合には手立てを講じることも必要である。計画額が前年度より増えたことで前年度と同じペースの処理では進捗率が低いこともあり10ポイント少ないことで、さらにきめ細かな進行管理が求められる。

期間の半分のところで簡易なデータを出し、進捗状況を判断する

仮に毎月、進行管理会議で課長が課の現状を説明するとなると、年度末に向けて現状の進捗状況がどうなのか判断する必要がある。もし、その段階で実績が進んでいなければ手立てを考えて組織を動かすことが求められる。これがPDCAサイクルの実践である。

そのPDCAサイクルを上手く動かすためのヒントとして私が実践してきたことは、毎月の進行管理会議の直前になって資料作成のためのデータを収集し、分析するのではなく、月の半分で一度、仮集計を出し、簡易分析をすることであった。

例えば月末の実績を反映した進行管理会議が翌月上旬に開催されるのであれば、毎回1か月の期間がある。次のデータの締め切りまでの期間の半分で一度、仮集計を簡単に出してみる。正確なものでなくてもよいので簡易に分析できるデータを収集する。しかも極力職員の手を煩わせることをしない。要は計画が順調に進捗しているかどうかの判断材料に使うためのデータである。簡易な分析で進捗状況の達成度を判断するものであり、このまま現状の取組みを継承すれば良いのか、それとも新たな手立てを検討すべきであるのか判断するためのものである。

1週間という限定的な未接触滞納事案の臨戸

私は現場の事務所の管理職として9月から決算まで毎月進行管理会議を開催した。会議では私が進捗状況を報告し、担当係長以上の職員に理解を求めた。仮に中間時点での実績が予想以上に落ち込んでいるようであれば、課を挙げて、場合によっては所を挙げて取組むべきこともある。

例えば自動車税の取組みでは、未接触事案が多く進展が見込めなかった。そのため3,000件の未接触の滞納事案を10月下旬の1週間で臨戸させることとし、職員一人100件の臨戸を設定した。職員は指定された1週間の中でそれぞれ臨戸日を計画し、100件の目標を達成した。その結果、翌週から臨戸した滞納者からの問い合わせや来庁等で忙しい日々を過ごし、実績も上がった。

報告期限のある書類作成も期間の中間で確認する

私は滞納整理事務だけでなく、その後のポストにおいてもこの方法を活用している。本庁へ提出期限のあるものなどについては、報告までの半分の期間で一度本人に対し「報告書の進み具合はどうですか?」と聞くことにしている。本当に進んでいなければこの時期であれば倍の人員を投入すれば処理できる。このことは滞納整理だけでなく他の業務においても共通しており、どこの職場においても活用できる。

提出期限ギリギリになって報告書の業務が全く進展していないと言われてしまうと、管理職としてはお手上げである。そうならないためにも、期間の半分のところで進捗状況を確認することで、管理監督者・管理職と職員の信頼関係が構築でき、かつ組織目標達成がとても近くに感じられることだろう。

できる職員とできていない職員の実績を比較する

余談だが様々な自治体へ研修等で出かけた折、当該自治体の実績を拝見させてもらって気づいたことがある。それは、各職員のデータの比較である。つまり職員毎の実績差である。そのデータの実績の差が2~3倍の差の範囲内であれば、組織目標に向けてそれぞれが努力していることが判断できる。しかし、この実績の差が10倍を超えているような場合は明らかに組織の方針が徹底されていないことが判明する。

例えば、差押件数を年間60件(毎月5件×12か月=60件)するという目標があったとする。実績は60件の倍の実績を上げている職員がいたとする。120件がその組織の最高の実績であった。一方、転入してきた職員はまだノウハウや理論が身に付いていないのでなかなか実績は上がらない。やる気はあるが実績に結び付いていない。仮に目標は60件で実績は40件とする。実績の比較は一番良くやっている職員の差押件数は120件で、経験の浅い一番実績の低い職員は40件。そうするとその差は3倍ということになる。私が思うに、これが正常な組織運営での個人的データ比較の倍率であり、組織的な取組みが実施されていると理解できる。

さて、同様な方針が立てられていて別の課の比較では最高が150件で最低が15件という実績比較であった。これは実に10倍の差がついている。最低者の実績があまりに低く、組織目標に向けて努力が足りないと判断できる。つまり組織としての方針が徹底されていないと考えられる。なぜならこのような差を生じさせた組織は一部のできる職員で組織の実績を高めていることが多く、この職員が異動でいなくなるとアッという間に組織の実績は落ちてしまう。組織方針に基づいた業務運営が職員一人ひとりに徹底されていないからである。

実績比較で2~3倍なのか、10倍なのかで取組方針の徹底が判明する

自分の組織が2~3倍の組織であるのか、それとも10倍の組織なのか確認する必要がある。2~3倍の組織であれば現状を維持し、さらに倍率の格差を小さくするように実績の低い職員を指導する。10倍の組織であれば組織の取組みが不徹底であるため、改めて取組方針を再徹底する必要がある。

単にデータの実績が前年度より上回っているから組織の運営が円滑に行われていると判断するのは早計である。当該年度のことだけを考えるのではなく、翌年度のことも見据えた業務運営を考慮して、データを深く読み込むことも大切である。データをみれば組織の取組方針の徹底度合まで読み取ることができる。

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