ケーブルテレビの展望と、今後のSNS利活用について
自治体の情報発信とメディアの役割について考える [第3回]
2015年12月

執筆者:養父市企画総務部情報センター 副主幹
長谷川 伸也(はせがわ しんや)氏

はじめに

養父市では「国家戦略特区」のほかに、「どぶろく特区」も受けています。2007年に特区指定を受け、その後、東鉢伏(ひがしはちぶせ)高原の民宿さんが、第1号となる酒造免許を取られ、どぶろく「鉢伏の泉」を生産しています。今では、市内の洋菓子店とコラボし、どぶろくジェラート「どぶロック」を販売しています。独特のどぶろくの風味を活かした商品です。機会があればご賞味されてはいかがでしょうか。

時代は変わっていき・・・

前回までのコラムに記載しましたが、インターネット等の技術が爆発的に普及しました。いつでもだれでもたくさんの情報を得ることができ、スマートフォンを離せない若者が増える時代です。今までのような専用回線を準備して伝送するということではなく、商用回線、つまりは皆さんが普段ご利用のインターネット回線を通じて(映像も含めた)様々な情報を伝送できる時代となりました。これは大きな進歩だと思っています。

年に一度ですが、兵庫県内のケーブルテレビ局が共同で「兵庫県郡市区対抗駅伝競走大会」を生中継します。会場は加古川市です。以前では離れた地域のケーブルテレビ局から生中継をするなんて到底考えられませんでした。それが技術の進化により、インターネット回線で生中継伝送ができ、数年前からは伝送映像でハイビジョン生中継をしています。県内の各局は「せっかく加古川で生中継体制を組んでいるのだから、地元でも生中継しかない!」と“生”で中継し、各地域の皆さんに地元チームを応援してもらえるという価値を見いだし、放送を行っています。

また、讀賣テレビ放送株式会社と回線を結び、日頃は、但馬地域駐在の送信拠点バックアップとして、そして、災害時を想定して市内の河川を映したライブカメラの様子などを伝送できるようにしました。

どちらも地域の中だけで考えていると実施できなかったことです。対外的に交渉して、人と人のつながりができ、お互いに共通の思いが出たところで実行に移せたことは非常に大きな成果ではないかと思っています。今後は、それぞれケーブルテレビ局相互の連携を図りつつ、その他のテレビ局とも拠点整備ができないか目論んでいます。

一般の利用者も多くのSNSを利用している時代

一昔前はアナログ回線を利用したインターネットでしたが、現在では桁違いの超高速インターネットで、回線も100Mbpsや1Gbpsを提供する事業者も増えてきています。中には10Gbpsの提供を考えている事業者もあるとお聞きしています。

そうなれば、一般利用者でも(4K映像も含む)高画質、高音質の伝送が容易になります。また、YouTube、Ustream、ニコニコ動画などを活用し、一般利用者が簡単に番組制作しネット配信できる時代です。日々、内容も進化しているようで、より凝った番組も見受けられます。また、以前に比較して大きな費用を掛けずにできるようになりました。

ただ、そうなれば、公序良俗に反したものや著作権的に怪しいものが非常に多くなってきます。視聴しようとすれば「著作権者に申し立てを受けたため、削除されました。」のような表示を見かけることも増えています。容易にネット配信できるようになったための弊害だとは思いますが、事業者側でも積極的にネット配信の方法、注意点を周知しなくてはいけないと感じています。またそれに反して、きちんと著作権処理しているにもかかわらず、削除されたようなケースも実際ありました。むやみやたらに著作権侵害の申し立てをする人や、なりすましも多くいるのではないでしょうか。事業者側での見極めも必要だと感じています。

映像はテレビからネット配信に・・・

前述しましたが、一般利用者もネット配信を利用できる時代です。以前は画質の悪い映像しか掲載できませんでしたが、年々格段に進化していてHD、さらには4K、8Kにまで対応しようとしています。それを一般利用者が自由に取捨選択して見られるわけですから、ケーブルテレビ局も更なる行動が必要ではないでしょうか。先日、民放キー局共同で「TVer(ティーバー)」の提供も始まり、ますます、ネットでの配信にも力が入るようになっています。

今までテレビ受信、再放送には大変苦労してきました。技術的にもそうですが、制度的調整に苦労しました。それがいとも簡単にパソコンやスマートフォンで見ることができるわけです。そうなれば、部分的に制約は残るとは思いますが、時代の進化を考える中で、全国どこにいてもすぐに視聴できる環境を整える方が問題解決につながるのではと思っております。

また、今までのアナログ時代では、各テレビ局1つの番組しか流すことはできませんでしたが、デジタル化で、時折り複数の番組(マルチチャンネル)を放送する局も現れたり、そして、ニコニコ生動画を活用したネット配信で、番組に対して解説をするなどの番組を平行して放送しているような例も増えています。

街には、Wi-Fi環境の導入が進んでおり、どこにいてもSNSの利用が欠かせなくなっています。いつどこからでも情報発信・受信ができる時代です。ますますの進化が期待されます。

テレビ放送で危惧されること・・・

ここで、ケーブルテレビ局とは少し違うのですが、皆さんも最近のテレビ放送を見ていると不自然に思われることはありませんか。バラエティ番組でも、報道番組でもそうですが、非常に「ぼかし(モザイク)」が入ることが多いことです。昔のリニア編集といわれるテープ編集をしていた時代に比べると、今はノンリニア編集ですから何でもできると思います。ただ、あの「ぼかし(モザイク)」の多さにはびっくりさせられることがありますし、そこまで隠さなければいけないのか。町を歩いているシーンで関係者以外すべてに「ぼかし(モザイク)」が入っている。そのようなことが本当に必要なのでしょうか。

もちろん、個人情報保護や肖像権・・・。そのようなことで入れられているのだと思いますが、もしも何か流れで「他の番組も入っているんだからうちも同じようにしないと・・・」のような理由で入れられているのであれば、番組の自主性すらないのではと感じています。そこまで、過敏になっているので、地域の運動会を放送しているときに、「胸に入っている名前をぼかしてほしい、顔がわからないようにしてほしい・・・」というような細かなところまで対応しなくてはいけないのかと思います。何でも放送して良いわけではないが、規制を厳しくしてしまうと視聴者にとって良い番組にならないこともあるのではないかと思っています。地上テレビ局が実施しているのだからとケーブルテレビ局にも波及しないか、私が少し危惧しているところです。

最後に・・・

全国には数多くの自治体があります。人口的に多いのは首都圏や京阪神のような自治体で、人が密集しており、大変さはあるかと思いますが、面積的には養父市のような過疎地域を抱えている自治体が圧倒的に多いです。その自治体のほとんどは、人口減少や高齢化などで悩んでおり、数年~10数年後には実施したい事業すら取り組めなくなる、自治体自身が消滅していないか心配な自治体が増えるのではないかと危惧しています。養父市は今のうちにと財政健全化につとめ、国家戦略特区、さらには地方創生を模索しています。待ったなしの課題ですので、全国の各自治体では切磋琢磨して少しでも地域の維持が図れるように動きを始めるべきです。そのような中、IT、ひいてはSNSを利活用しながら地方創生ができないものかと思っています。

今までつたない文章でしたが、お付き合いいただきありがとうございました。これにて私のコラムを閉じさせていただきます。

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