「ICT×地域密着ケーブルテレビ」を考える
~西会津町(福島県)を歩きながら~

「ぷらぷら☆旅をしながら情報化について考える」 ~ICT×国づくり×人づくり~ [第2回]
2014年11月

執筆者:NPO法人 HINT 理事長、ai株式会社 代表取締役
総務省地域情報化アドバイザー/総務省地域力創造アドバイザー
 井上 あい子(いのうえ あいこ)氏

えいやぁ~会津磐梯山はぁ~宝の山よ~♪

歌に併せて、手拍子とお酒がぴったり合う、全国でも有名な民謡が唄い継がれる西会津町は、福島県と新潟県の県境にある町です。

昨年度より、総務省ICT地域マネージャーとして、10回以上の訪問をしています。
自宅のある兵庫県から、3パターンのルートで移動していますが、車窓(空路・陸路ともに)から見える風情は、見所が多く、特に、JR磐越西線の野沢駅に到着する少し手前から、はじめて訪れる者でも懐かしさと親しみを感じさせられる日本の原風景が広がっています。

さて、西会津町のたくさんある魅力をギューッと凝縮して、あえて一言で表現すると、【情】があるということです。
そして、【情】に出会うシーンが多いと感じます。お食事処に杖をついてお越しになる、じいちゃんやばあちゃんに、付き添いのご家族は、足下を気遣いながら、優しい介助を続けます。お店の人は、家族のように親しみを込めて、必ず優しい一声を掛けられます。若い衆は、当然ながら席を譲り合います。当たり前の日常に、そこに暮らす人々が相手を想いやる【情】があふれていて、会津なまりが心にしみるのです。

ケーブルテレビは、地域メディアである

本題の前に、一般的なケーブルテレビの仕組みを簡単にご説明しますと、ケーブルテレビ局の屋上にあるアンテナで受信した、地上波(NHKや民放)・BS・CS放送・FM等にコミュ二ティチャンネル(自主制作番組)とブロードバンドをミックスして、ヘッドエンドと呼ばれる局内から、屋外にある電柱から電柱に敷設している光ケーブルや同軸ケーブルを通じて、各家庭に配信します。

家庭内では、契約形態によって、セットトップボックス経由でテレビの視聴やケーブルモデムやWi-Fi等の無線で、ブロードバンドが利用できます。そして、コミュ二ティチャンネル(自主制作番組)は、地上波では放送されにくい地域密着の情報を放送しているケースがあります。

地上波の各放送エリア内には、多くの自治体があり、そのエリア内にある、それぞれの地域の情報すべてをカバーして、限られた放送時間枠の中で、放送することは、非常に困難なことです。

そこで、ケーブルテレビのコミュニティチャンネルは、そうした地上波がカバーしきれない情報を地域メディアとしてきめ細やかに、速やかに、正確に伝える役割を担うことができます。

地域メディアの役割とは

今回のコラムの舞台となる西会津町ケーブルテレビのニュース番組やデータ放送等で放送されている情報は、地域に特化された内容であり、まさに地上波では取り上げにくいものです。

  1. 道路の監視カメラ
    ホームページ等で閲覧をしない高齢者でも、道路の状態(事故や積雪によって通行止め等)がわかりやすい。
  2. 野猿の出没情報
    野猿接近警戒システムと連動した情報で、野猿の出没地区名がわかりやすく、農家が対応しやすい。
  3. お悔やみ情報
    いつ、誰が、どこで等、家族の了解を得て、テロップとアナウンサーの読上げでわかりやすい。特に会葬は、待ったなし。

もし、大規模な事故や広域災害等が発生した場合は、交通事情や気象状況によって、地上波のカメラマンやアナウンサーが、取材したい場所まで、辿り着けない場合があります。そのような時に、ケーブルテレビが得た情報を地上波に提供する等、必要に応じて、広域的に情報を発信することが大切です。そのためには、机上や想定ではなく、実践です。普段から連携ありきの付き合い方が必要です。

地域内の人が必要とする、情報を速やかに正確に伝達することが、地域メディアとして、一番の役割ですが、地域外へも発信し、伝達する力が、今後、必ず求められます。

ICT×地域密着ケーブルテレビ 人材育成と広域連携が『鍵』

さて、地域密着ケーブルテレビについて、少し私の体験談からお話します。ケーブルテレビ事業は、暑い中寒い中、昼夜を問わずに設備を維持してくださる職人さんによって支えられ、料金をお支払いして頂いているお客様で成り立っています。そして、スタッフは、情報を取り扱う者として、やるべきことが山ほどあります。

  • 幅広い情報を得て、地域と共有すること。
  • 幅広い人脈を得て、地域に還元すること。
  • 幅広い見識を得て、異業種と連携すること。
  • 情のある魅力的な人になること。
  • 自身もメディアであること。等

そして、ケーブルテレビが存在しない自治体であれば、自治体の広報のあり方として、情報を発信する側の相当な努力が、必要ではないでしょうか。

伝えたい情報を丁寧に制作することも大切ですが、コンテンツ(注1)を制作する人の想像力や感性を磨く努力をしなければ、相手の心に響くコンテンツが提供できないと思います。

また、地上波やソーシャルメディア、地域外の自治体との広域連携は必須であり、現場を通じて場数を踏み、色々な人に出会い人と繋がって行く事によって、チャンスが広がります。

★情報★とは、情に報いることで、その情とは、そこに暮らす人にも及びます。
映像コンテンツは、誰もが見て聞いてわかりやすい情報伝達の手段です。総じて、地域の魅力を全国(世界)に発信するためには、そこに暮らす住民と事業者が協力して映像コンテンツを送り出して行く必要があります。
そこで、先導役(リーダー)となるのは、やはり自治体職員の皆様方だと思います。だからこそ、普段からICTを利活用していないと、イザという時には使えませんし、普段から話ができる関係性でなければ、情報を共有することもできません。

規模の小さな自治体ほど、地域の個性を存分に引き出して、地域コンテンツと共に全国(世界)にPRを行える勝機があります。今一度、人材育成と広域連携、今スグにでもできる、皆様の身の回りで使える、ICT利活用から行って頂きたいと思います。

西会津町は、情報化推進計画(策定予定)において、ケーブルテレビをどんどん活用します。そして、様々な広域連携を見据えて、果敢にチャレンジをして行きます。

西会津町ケーブルテレビは、ちょうど、このコラムが掲載される頃には、町役場の運営から、法人格をもつ独立した団体へ変革する準備が始まります。

ICT×地域密着ケーブルテレビを考える前に、人材育成と情報の共有化、広域連携を行うことが、優先事項です。そして、やっぱり【人】。

第2回のコラムを終えますが、西会津町(福島県)に興味を持たれましたでしょうか?
地域密着ケーブルテレビを考える前に、やはり地域のコンテンツを制作し発信する人が、旅をして、食べてみて、色々と体感して頂かないと・・・とっとと、仕事や用事を片付けて、とにかく外へ出掛けて行って下さい。
何より、本コラムをご覧になって頂きまして、何かのHINTにして頂ければ光栄に思います。

次回は、国家戦略特区の養父市(兵庫県)を歩きながら「ICT×農業戦略」について考えてみたいと思います。
どうぞ、お楽しみに・・・小原庄助さん!朝寝、朝酒、朝湯が大好きで・・・これから、宴会へ☆

(注1)コンテンツは、画像や映像や音声など、文書だけではわかりにくいものに対して補足的なもの。中身。

旅のMEMO

西会津町への交通

JR磐越西線「野沢」駅

西会津町のお薦めのスポットの一部をご紹介させて頂きます。
是非とも、雪の会津においで下さい。

お宿

  • ホテル LOTOS INN 源泉掛け流し温泉しょっぱいお湯

お食事処

  • 朱泥庵 ラーメンは絶品
  • 観音茶屋 新蕎麦は超絶品
  • 酔月 日本海の幸は絶品

名物

  • ミネラル野菜(注2)は絶品(人参嫌いも美味しく満足)

映画やドラマ、CM等のロケ地に是非どうぞ!

  • 西会津国際芸術村 住居を兼ねたアトリエ

(注2)ミネラル分をより多く含んだ土壌で栽培した野菜は、西会津町こだわりの健康素材のこと

宜しければ、blogをご笑納下さい。

※西会津町ケーブルテレビ 道路の監視カメラ(国道49号線七折峠)

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