はじめまして。行政経営デザイナーの元吉由紀子です。
地方分権時代に対応して役所組織が常に住民から信頼される存在となるにはどうしたらいいのか。私はこの課題を、首長や管理職、一般職員のみなさんと一緒に考えながら、現場で変革プロセスの実践を伴走支援しています。
役所が常に住民に信頼されるためには、行政改革を単に制度や仕組みの改革に終わらせず、一人ひとりがやる気とやりがいを持って主体的に取り組み、協力してよりよい仕事を創り出していく、組織をみずから変わる力を持った風土・体質になることが重要だと考えています。
このコラムでは、その一番の原動力となる「職員のあり方」について、4回シリーズでお届けしたいと思います。
さて、1月は年も改まり「新しいスタート」の時ですが、皆さんにとって意気込みをより強く持つのは「1月」と「4月」、どちらでしょうか? 職場のメンバーが入れ替わり、新しい事業が始まる4月のほうが、役所ではスタート気分になりやすいかもしれません。
1月から年度末に向けた期間の過ごし方は、地方分権の流れとともに大きく変わってきました。これまでは「予算消化」などの言葉があるように、事業もPlan(計画)したことをDo(実行)し終えれば十分でしたが、今では役所にも各種の目標管理制度が導入され、PDCAサイクルを回すことが一般的になりました。1月からは、いかにCheck(評価)しAction(改善)につなげられるかが課題となっていく時期なのです。
各自治体のPDCAサイクルは、実際には、各部署の担当者が事業管理シートの評価欄にコメントを記入して所管課に送るだけという、ペーパー上の仕事ですませているケースが少なくありません。記入内容も、年度当初の目標に達成していれば「問題なし」、未達であれば「できなかった理由」に「引き続き努力します」と書いてあるだけだったり。これでは改善につながるはずがありません。
職場では人も予算も削減され、日々の業務をこなすことさえ大変な状況ですが、少子高齢化と財政難が進み、地域の課題は待ったナシ。事業をより効率的に遂行し、より効果的に問題解決していく、常に改善し続ける必要があるのです。
そのためには、まず担当職員が、事業や業務を何としてでもよくしたいという情熱を持っていることが大切です。そして、他部署の職員や住民に働きかけ、年度の活動をともにふり返り、今後さらによくしていくための知恵を出し合う対話をしていくこと。
価値ある改善を得るためにはそんな内発的なエネルギーと、みずからめざす姿を志として持ち、仕事を自身の“志事”として取り組む姿勢を問われます。
そこで、仕事を“志事”とするための3つのポイントをご紹介しましょう。
役所ではほとんどの職員が、異動に際して「なぜこの部署に配属されるのか」の理由を告げられることがないそうです。それだけに、着任後はできるだけ早い段階で、自分がその仕事をしている意義を考える機会を持ちましょう。
経験や関心、能力やネットワークなど、自分のことをよく知ったうえで、担当する業務の特性や求められるスキル、関わる人との接点を見出しておく。なぜ、何のために自分はこの仕事をやるのか、その意義が明確になると、やりがいが出てきます。
失敗しないようにと慎重に仕事をしていると、自分の能力や経験の範囲内で何とかしようとしがちです。しかし過去からの延長線上の仕事からは新しい改善は生まれにくく、何より自分の成長につながりません。
改善プロセスには、成長を促進する学び材料が多々あるものです。仕事の成果目標と併せて自分自身の成長目標を設定しておくことで、達成意欲が高まります。
改善活動は、今できていないことをできるようにしていくことです。当然ながら最初からできる保証がないため、失敗を恐れて二の足を踏んでしまうかもしれません。
そんなときは、どんなに失敗しても今より悪くなることはないと腹をくくってみましょう。
成功するまでやり続ければよいわけです。何よりもまずはやってみる、やり続ける勇気をもつこと。あなたの意志は行動になってはじめて、周りの人の心に伝わります。
いずれやらなければいけない改善にいつ取り組むのか。同じやるならば、問題を先送りするのではなく、自分の明日を今よりも輝きをもって過ごせるように、情熱と志をもって取り組んでいただきたいと思います。
1月は、仕事を“志事”にするスタートのいいタイミングだと思います。
次号では、「CheckをActionにつなげていくための仲間づくり」をテーマにお届けします。