患者様からのクレーム対応について現場任せになっているケース、クレーム対応マニュアルは整備されているが活用されていない、病院組織として統一したクレーム対応方法が共有されていない等、病院の院長より患者様のクレームに対応する相談を多く受けてきました。
そこで今回のコラムでは患者様のクレームに対して現場職員の力量に左右されない対応をするための組織対応の基本姿勢と失敗しないクレームの初期対応・事実確認のポイントをお伝えいたします。
患者様のクレーム対応に頭を悩ませている院長から下記のような相談を頂きます。
「当院にはクレームマニュアルがない」
「クレームマニュアルはあるがマニュアルどおりに行動できない」
「当院の職員は臨機応変に対応できない」
クレーム対応マニュアルがない事、マニュアルがあるのに活用できていない事、職員個々の対応力を問題にするケースは多いですが、患者様のクレームの対策では、病院組織で決めた対応スキル、手順を組織全体で共有し、現場任せにしないことがポイントになります。
組織対応できない病院には患者様からクレームが発生するとスタッフに対応を押しつけ、スタッフは孤立感を持ち離職につながるという悪循環が起こっています。悪循環に陥らないためにもクレームを組織対応するための基本姿勢を職員全員に示すことをお勧めしております。
弊社のクライアントのクレーム対応の基本姿勢をご紹介します。ご参考にしてください。
患者様のクレームマニュアルを整備されている病院は多くありますが、実際にクレームマニュアルを活用できている病院は少ないように感じます。
マニュアルを活用できている病院の共通項は起こった事実に即して病院で決めたシステムを作り運用しています。もっと簡単にいうとクレームを受けた職員が迷う事なく対応できる方法を病院組織全体で共有している事がわかりました。
多くのマニュアルでは職員が迷うような抽象的な表現が文面に使われています。
例えば、マニュアルの事例でいうと「…を基準として状況に応じて適正に判断を行うもの」「…は慎重に対処する」など、「適正」「慎重」といった抽象的な表現です。
「適正」「慎重」かどうかは個人の考え方によって差が生まれてくるので、クレームを受けた当事者が迷う要因になります。
病院で起こった事実に即して行動できるシステムを確立して頂くことをお勧めします。
クレームが大きくなる要因として、初期対応が悪いために小さなクレームが大きくなるという事が多くあります。また、事実確認がきっちりできていないために、同じ事を何回も聞かなければならないなどクレームが増長するケースをお見受けします。
クレームの初期対応・事実確認を現場の当事者の対応力に委ねるのではなく病院として統一した基準をもって組織対応して頂く事が起こった事実に即して行動できるシステムづくりの第1歩となります。下記に失敗しないための初期対応・事実確認の事例をお伝えします。
クレームを受けることは嫌な事ですが、クレームを言う事も大変勇気がいりますし嫌なものです。まず、クレームをご指摘してくれた相手に「ご指摘頂きありがとうございます」とご指摘頂いた事に感謝しお礼を伝えます。
そして、気分を害した事や不快にさせた事に対して謝罪する。例えば「ご不快な気持ちにさせてしまい申し訳ございません」「それはお困りでしたね。申し訳ございません」など相手が気分を害されたことに対してお詫びするという姿勢です。
お詫びの言葉選びは、誤解を与えないためにも病院でお詫びの言葉も決めておくことをお勧めいたします。
相手が興奮状態になっている場合の対応も組織として決めておくことです。下記に事例をまとめております。
特に場所を変える場合はあらかじめクレーム対応する部屋を決めておき、記録・録音ができるようにノートやICレコーダーを設置(2個以上)しておくことをお勧めします。また、病院で決めたクールダウンの方法が機能するかどうか警察署の方など第三者にも参加してロールプレイングを実施して定期的に対応プロセスを見直して頂きたいと思います。
職員は事例をテーマにしたロールプレイングを通じて病院が決めた組織的対応を覚えていきます。これをやり続ける事で、組織全体で組織的対応方法を共有化できるのです。地道な努力が共有化という成果を生み出します。
傾聴のスキルを伝える。
例えば基本的な傾聴なスキルを院内の職員(管理者やクレーム対応の上手い職員)を講師にむかえレクチャーしてもらう事で教える講師も新たな気づきや今後の行動について襟を正すきっかけにもなるのでお勧めしております。
病院が患者様の意見や不満を解消しようとしている努力を「見える化」する事も大切です。例えば、待ち時間を落ち着いて過ごせるよう待合室のアメニティを充実させる事や診察・リハビリの順番が変わる場合がある旨をあらかじめ院内掲示や受付にてお伝えするなどが考えられます。
こういった病院が努力していることを院内掲示や院内報などで患者様に伝える事は患者様との認識のギャップを埋める第一歩となると思います。また、患者様アンケートや意見箱を設置して患者様のクレームなどご意見を聞ける体制を作っている病院も増えてきていますが、アンケートや意見箱の意見について、病院の回答を患者様と共有する機会を作っている病院は少ないように思います。
アンケートや意見箱の意見には「できる事とできない事」があると思いますが、「できる/できない」より病院側が患者様の意見に対して真摯に誠実に向き合っているかどうかが問われています。
これまで述べてきた初期対応や事実確認のポイントや努力していること「見える化」は、患者様からのクレームや指摘事項に対し真摯に誠実に向き合う事が大前提です。
患者様がクレームに対して真摯に向き合う病院の姿勢を評価してくだされば患者満足度向上にもつながります。
ぜひ、患者様からのクレーム対応については病院組織全体で真摯に誠実に向き合う独自のシステムを確立して頂きたいと思います。