患者アンケートから読み解く! 患者さんへの応対のあり方
- 患者さんは病院の医師・受付職員をこんなふうに見ている!-
病院の患者様へのあり方[第3回]
2014年1月

執筆者:合同会社 MASパートナーズ
    代表パートナー 原 聡彦(はらとしひこ)氏

弊社では患者アンケートを実施して、病院経営の改善のヒントを発見頂くサポートをしております。
今回は患者アンケート結果から患者さんが医師・受付スタッフに対して抱く不満コメントや、患者さんとのコミュニケーションを工夫している事例をまとめました。患者さんへの応対のあり方を見直す意味で自院に当てはまる事はないかご確認頂きたいと思います。

医師に対する不満(患者アンケートコメントより)

  1. 診察説明は細かくわかるようにしてほしい。コンピュータばかり気にしないで顔を見て説明してほしい。
  2. 対処治療のみで原因治療をしてほしい。例えば、熱が出る→解熱剤、咳が出る→咳止め、痛い→痛み止め、それぞれの原因に対する治療の提案がないので通院するのをやめました。
  3. 先生は全て分かってらっしゃるので細かい当たり前のことはもう分かっているだろうと思われて説明をされないのでしょうが、患者にとりましては、痛みの原因・薬・常日頃注意すること等、話していただければと思います。
  4. 今はまだ定期的にお薬を頂いているくらいで良くわかりませんが今後医療に希望することは予防医学です。高齢に向けて初期段階での注意点等指導が望まれます。
  5. 先生にとっては常識でも、患者にとっては初体験で治療の経過中戸惑うことがあります。次の診療の説明をして頂ければ安心いたします。養生することについて、医師のお立場でお話いただきたいと願います。
  6. ホームドクターとして他の専門医に掛かっている家族の治療を決断する時、患者の心構えみたいなところでのアドバイス等の助言を得られる機会があったら良いと思う。
  7. 診察時間内では治療に関わることだけしか話せない。
  8. 病気について完治が早くできるように本人がどのように努力すべきか積極的に指導して欲しい。
  9. 治療方針の説明がなかった。近所の話によると、話があったと言う人もいたが・・・
  10. 同じ病状で薬をもらっているが先生の方からアドバイス等の話をして欲しい。同じことを聞くのが悪いように思い話しづらい。

上記のコメントから感じる事ですが、患者さんは医師にもっと相談したいけど、お忙しくされているので聞きづらい、同じ事を聴くのは悪いという遠慮の気持ちがあり、医師は患者さんにとって敷居の高い存在でもあるようです。

受付職員に対する不満(患者アンケートコメントより)

  1. 受付の方が時々冷たい態度や言葉遣いをする時があります。
  2. 受付職員の方の笑顔が少ない。もう少し物腰をやさしく対応してほしい。
  3. 閉院前の来院に不快をあらわにする。閉院前の態度の改善を求めます。
  4. 受付の職員さんはコロコロ変わらない方が良いと思う。変わるなら引き継ぎをしておいてほしい。
  5. もう少し、落ち着いてやってほしい。忙しそうにされると患者は不安な気持ちになる。
  6. 受付の方の名前の呼び方が乱暴で叱られているような気持ちになる。
  7. 受付の人は、目線を合わせて話をしてくれない。
  8. 質問に答えてくれない。わからなかったら確認してほしい。
  9. 待合室に聞こえるぐらい職員同士の大声で話す声や笑い声が聞こえてくる時がたびたびあるので慎んでほしい。
  10. 閉院後、入口のシャッターを豪快に閉めておられたのが気になりました。

上記のコメントから感じる事ですが、患者さんは病院の受付職員をよく観察しています。
常に見られているという事を認識して立ち居振る舞いに注意していきましょう。また、患者さんにとっては、病院側が「忙しい・忙しくない」は関係ないようです(病院側としては忙しいときは考慮頂きたいと思いますが・・・)。

ちょっとつらいところですが、常に患者さんにとって気配りある対応が必要と考えて頂いたほうがいいと思います。ぜひ、上記の患者アンケートコメントをもとに自院に該当する事はないか行動と言動の棚卸(たなおろし)をして頂きたいと思います。

患者さんが病院変更する理由(弊社の考え)

病院を変更した理由についてこれまで弊社が実施してきたアンケートデータをまとめると下記のような結果となりました。

病院に対する不満

第1位 待ち時間が長い 54.0%
第2位 医療費が高い 24.9%
第3位 プライバシーの配慮 22.1%
第4位 診療情報提供が不十分 17.9%
第5位 検査・薬が多いと感じる 17.1%

病院を変更した理由

第1位 技術レベルが低い 42.6%
第2位 医師の説明が不十分 36.3%
第3位 医師の立ち居振る舞い 34.9%
第4位 医師とのコミュニケーションがとれない 31.2%
第5位 待ち時間が長い 25.8%

上記の結果より、「病院に対する不満=病院を変更する」ということではないようです。病院を変更する理由は医師や職員に対して不信感、不快な印象を抱いた時、コミュニケーションが不十分な時と弊社では考えております。

特に、病院を変更した理由第1位の「技術レベルが低い」というのは、医療技術が患者さんにわかるわけではなく、医師の診断・処方の意図が患者さんにとって理解しにくい時や見えない時に感じる「医師のコミュニケーションレベルの低さ」という事だと考えております。

医師の先生方が決して説明に時間をとっていないわけではないと思いますが、患者さんに説明している事は、思っている以上に伝わっていないことが多くあるようです。医師が限られた時間で患者さんを診て満足頂く事は本当にたいへんな事です。

だからこそ、医師・看護師・コメディカル・助手・事務員など病院に携わるスタッフ全員が患者さんを360度、いろんな角度から診る姿勢、体制をつくることで医師一人に集中する患者さんの診療への期待を病院全体へシフトさせるという事が重要なポイントと考えています。

次に患者さんとのコミュニケーションを工夫している事例をお伝えします。

患者さんとのコミュニケーションを工夫している事例

1.名前を呼ぶ

患者さんの名前を呼ぶ。
一見、当たり前と思われがちですが、実際できていない医療機関が多い。
「○○さん、おはようございます」「○○さん、お大事に」「○○さん、点滴を入れるのでチクってしますよ」など患者さんの名前を呼んで挨拶する、動作確認など名前を呼ぶ事は良好な関係づくりの第一歩です。ぜひ、実践頂きたいと思います。

2.その患者さんの近況を覚えておき話題にする

ご家族の状況、近況などその患者さんがお話しされたことを記録して、次回、来院されたとき、話題にする。
例えば、「前回、来院されたときにお話しされていた○○の旅行はいかがでしたか?」「お孫さんにお会いするとお伺いしていましたがいかがでしたか?」など近況を話題にすることで患者さんは、自分の話を覚えていてくれた事に感動頂けます。
弊社がサポートしている病院では、患者さんとのコミュニケーションを記録するシートへ「患者さんの近況」の記録をルール化しています。

3.患者さんをクリニック全員で診る体制をつくる

医師だけではなく看護師・コメディカル・受付など職員全員で患者さんとコミュニケーションをとる。
看護師・コメディカルには医師の説明フォロー、受付職員には患者さんの近況の記録、待合室で長時間待っている患者さんへのフォローを行うなど職員全員が患者を診るという意識で日々の診療をしている病院もあります。

4.患者さん同士が交流できる場をプロデュースする

同じ病気を抱えた患者さん同士が悩みや愚痴を言えるコミュニケーションの場(例:糖尿病の会)をプロデュースする。
会のメニューとしては患者さんの闘病体験の発表、医師からワンポイントをお話し頂き、病気に向き合うためのモチベーションをアップして頂く機会にしておられます。

最後に

人間関係が希薄になっている今の時代だからこそ、患者さんとのコミュニケーションを工夫することは今後の病院と患者さんへの応対のあり方を考えるうえで大切な事ではないでしょうか?

患者さんとのコミュニケーションを創意工夫して良好な関係をつくっている病院には熱烈なファン患者が多数いて患者さんが患者さんを呼ぶ口コミが巻き起こっています。ぜひ、自院にあったやり方で患者さんとのコミュニケーションを工夫して良好な関係づくりにチャレンジしてみてください。

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