診療報酬改定のタイミングに診療機能を強化する目的で、新たな施設基準の取得を検討する病院は多いと思います。
新たな施設基準を取得する準備においては、まず厚生労働省の定める施設基準の要件を満たすかどうか検討することが重要となりますので、病院の医事課職員は医師会や厚生局、経営情報誌などで情報収集をしっかりされています。
しかしながら、もう一つ重要な事である患者様への説明が不十分になりがちです。診療機能を強化するために新たな施設基準を取得しても、患者様への説明が不十分なために、患者様からクレームを受けて評判を落としてしまうケースもありますので注意が必要です。
今回は新たな施設基準を取得する際に、患者様へお伝えするべきポイントをまとめましたのでご参考にして頂きたいと思います。
厚生労働省が定める施設基準の内容や、なぜ自院がその施設基準を取得したのかを明確に伝える事です。
例えば、理学療法士を新たに採用して運動器リハビリテーション(II)を取得した場合、「患者様の症状の原因についてご理解頂いたうえで最適な施術を行う事と症状の改善を促す運動指導などで再発予防を目指す」という自院の考え方を伝えている病院もあります。
このことを実践することにより、自院の考え方に共感した患者様を集める事ができるメリットがあります。
新たに施設基準を取得して診療報酬を算定する際には、必ず職員から「自己負担が増加するので患者様からクレームが出ます」という意見がでて、結局何も進まないという話をよく耳にします。新たな施設基準を取得する事で治療の流れとともに、患者様の自己負担金の変更点を具体的に明示することです。
例えば、リハビリ開始時には、担当理学療法士が症状・状況・患者さんとのお話からリハビリテーション総合実施計画を立てます。この計画についてはリハビリ開始時に書面で担当理学療法士より説明させて頂きます。その際、書面にサインを頂きます。
この病院では運動器リハビリテーションを実施した際の参考領収証まで提示して自己負担金を明瞭にして患者様に伝える工夫をしておられます。
患者様の期待は十人十色で一筋縄ではいきません。
では、どうすればいいか。これが正解と言えるものはありませんが、まずは『「重点患者層」を明確にし「重点患者層」の期待を把握すること』であると考えております。
この考え方を病院の医師を含めた全職員にお話すると「重点患者層だけ手厚い診療をして、そうでない患者様は手抜きでいいのか?」という我々が意図しない解釈をされる場合も多いのですが、ここは誤解のないようにして頂きたいと思います。
例えば、私どもがご支援している糖尿病を専門とする内科系の病院では生活習慣病といわれる「高血圧症・脂質異常症・糖尿病」を主病とする患者様を重点患者層ととらえ、その重点患者層のなかで「生活習慣を改善して糖尿病とうまくつきあっていきたい。」「具体的にどんな事をすればいいのか。先生から教えて欲しい。」という自分の病気に関心があり改善意欲のある患者様をさらに絞り込みます。
そういう患者様には予約診療で来院して頂き、1人当り15分程度じっくりお話を聞き、指導・説明を行っています。そして、ツールとして治療計画書と検査データを時系列で確認でき、かつ、医師のコメントを記入できるノートを作成し患者様に渡しています。
患者様には毎回の診療時にノートを持参して頂き、現況と説明・指導事項を医師が記入しています。このような患者様のみ高点数で自己負担が増加する生活習慣病管理料を算定しています。もちろん、受付では「なぜ、自己負担が高くなるか」は事前に患者様に説明して納得頂くようなトークマニュアルを作成し、受付全スタッフが説明できるようになっています。
この例から重点患者層を絞ることによりサービス内容が狭まると印象を持たれるかもしれませんが、むしろ、絞ることにより重点患者層の具体的な期待をイメージでき、実践しやすくなります。また、重点ではない患者層に関してもその違いがはっきり見えるようになり、メリハリのある診療サービスを実践しやすくなります。
まずは重点患者層を絞ることが大切であり、その重点すべき患者層の期待を把握することが第1歩となりますのでご参考にして頂きたいと思います。