今年度の診療報酬改定で新設された「医療DX推進体制整備加算」は、既に算定されている施設も多いのではないかと思う。しかし、ご存じの通り経過措置となっている施設基準が多くあり、今後、その項目にどのように対処していくかが大きな課題となっている。
今回は、その経過措置の内容と現在の状況について確認するとともに、今後の対策の参考にしていただきたい。
「マイナンバーカードの健康保険証利用における一定程度の実績の基準については、令和6年10月1日から適用する」という経過措置がある。既に期日を過ぎ、厚生労働省から以下の変更が発信されている。
医療DX推進体制整備加算(8点) | 点数 | マイナ保険証利用率 | |
---|---|---|---|
2024年10~12月 | 2025年1~3月 | ||
医療DX推進体制整備加算1 | 11点 | 15% | 30% |
医療DX推進体制整備加算2 | 10点 | 10% | 20% |
医療DX推進体制整備加算3 | 8点 | 5% | 10% |
来年度以降の利用率については、今後の動向に応じて設定されるとなっているが、2024年12月2日に施行の現行健康保険証の廃止(新規発行停止)がポイントと思われる。
1年程度の現行保険証の利用や資格確認書の利用も可能であるが、次に控えている電子処方箋や電子カルテ情報共有サービスではオンライン資格確認が必須であるため、マイナ保険証も必須となる。そのためには、患者に対する更なるアピールが重要と考える。
「令和7年3月31日までの間に限り、電子処方箋を発行する体制を有しているものとみなす」という経過措置については、利用率ではなく、とりあえずシステム的に対応できる準備を行えばよいとのことではあるが、コスト的には大きな課題である(一部の都道府県では国の分にプラスして助成金あり)。
電子処方箋の導入状況を調べてみると以下の通りである。
調剤薬局側は受ける立場であり、営業的にも導入せざるを得ないため、ある程度進んでいるが、病院においては全くといってよい状況である。
出典:デジタル庁「電子処方箋の導入状況に関するダッシュボード」
電子処方箋のシステム対応については、(運用検討やテストなど)ある程度の期間も必要なので早めの調整が必要である。また、運用においては医師のHPKIカードも必須であるため、忘れずに取得することを計画していただきたい。
本システムはまだ開発途中であり、公開予定は2025年4月となっている。
「令和7年9月30日までの間に限り、電子カルテ情報共有サービスを活用できる体制を有しているものとみなす」という経過措置もシステム的な導入要件のみであるが、公開後半年しか猶予がないので、これも早めに準備をする必要がある。
本システムは、いわゆる3文書6情報を施設間で連携できる期待のシステムである。これまで各地域で構築し、地域に閉じた環境で利用していた地域医療連携システムが全国ベースで利用できると考えると大きな一歩ではないだろうか?
また、これまで地域医療連携システムでの患者同意は、どの施設でも利用患者数が伸びない要因となっていたが、オンライン資格確認によってかなり効率化でき利用率の向上も狙える。
ただし、情報公開範囲が増えることによる患者側の不安もあるので、院内掲示などにより十分に患者にとってのメリットも伝えていくことが重要だと考える(オンライン資格確認による同意の取り方を疑問視する声もあるため)。
電子カルテ情報共有サービスの概要については、以下の厚生労働省の資料を参照いただきたい。
出典:厚生労働省「第22回健康・医療・介護情報利活用検討会医療等情報利活用ワーキンググループ資料について」
出典:厚生労働省「第21回健康・医療・介護情報利活用検討会医療等情報利活用ワーキンググループ資料について」
また、このシステムは各施設の電子カルテから情報を出すためにはFHIRに基づいた形式に変換して送信する必要があり、この対応にかなりコストを要する。この費用には補助があり、以下の内容となっているので活用していただきたい。
出典:厚生労働省「第22回健康・医療・介護情報利活用検討会医療等情報利活用ワーキンググループ資料について」
マイナ保険証の問題をはじめ、様々な課題がある状況ではあるが、ようやく全国的に統一された医療情報共有システムができ上がろうとしている。課題を一つ一つ解決しながら、更に高齢化社会となっていく日本の医療を支える一助となることを期待したい。