これまで全国各地で規模の違いはあるが、補助金なども利用され地域医療情報連携ネットワーク(以下、地連)が構築されてきた。新たに、全国医療情報プラットフォーム(以下、PF)が厚生労働省により構築されつつある中で、今回はこの違いと今後の地連について考えてみたい。
地連は古いところでは約20年前から取り組みが開始され、当初は一部の関連医療機関の中だけで電子カルテや放射線画像の参照を行うことから始まり、その後2次医療圏や県全体といった大規模な連携に発展した地域も多く出てきた。
基本的には基幹病院の電子カルテや部門システムの情報の一部を診療所など他の医療施設で参照する仕組みで、患者の個別同意のもと同意が得られた施設のみで参照可能となる運用を行っている。この患者の同意を得るための説明や手続きが複雑でなかなか対象患者数が増えない背景もあったが、徐々に着実に拡大してきた。以下地連の一例である。
出典:株式会社エスイーシー 公式サイト(https://www.secnet.co.jp/business/products/id-link/)
また、地連は運営のためにシステムやネットワークに費用がかかるが、これをどのようにして捻出するかが一番の課題であり、補助金などで導入した地域はシステム更新の際に費用が捻出できずにやむを得ず運用継続を断念したケースもある。自治体からの支援がない地連は医療施設側の努力で成り立っている地域も多い。
PFは厚生労働省が医療DX(Digital Transformation)として医療及び介護の情報を全国的に共有できるプラットフォームとして推進しているシステムである。医療側ではオンライン資格確認に始まり、電子処方箋や2025年4月に開始される電子カルテ情報共有サービスなどがある。
さすがにオンライン資格確認は90%を超える導入率であるが、1月号の当コラムでもご紹介した通り電子処方箋についてはまったく進んでいない状況にある。そのためか医療DX推進体制整備加算の経過措置であった電子処方箋は、導入の有無で4月以降は2点減点という形となった。電子カルテ情報共有サービスもどのような進捗になるかかなり不安を感じている。導入が進まない要因の一つは医療施設側の費用負担の大きさであると考える。補助金があるものの導入経費は莫大であり、地連を運営している施設からすると二重の負担になってくる。
全国共通のプラットフォームという期待は大きいが、この費用問題が解決しないとコロナ明けで経営的に厳しい医療施設での導入に拍車をかけることはできないのではないか?
出典:厚生労働省ホームページ(https://www.mhlw.go.jp/content/12600000/001332014.pdf)
ここでこれまでの地連と厚生労働省が推進するPFとの違いについて考えてみたい。
まずPFでは情報公開の範囲は今のところ3文書6情報に限られている。地連は各地域で導入されているシステムも異なるため単純に比較することはできないが、多くの地連で以下の情報も共有されている。
この情報の意味するところは医師であればご理解いただけると思うが、これらの情報を共有できている地連はより活発に利用されているという報告も上がっている。情報を公開する施設側では抵抗感もあり施設毎に公開範囲を決めている地連もあるが、あくまで共有するのが医療者同志という観点から踏み切った施設も多い。
それでは、地連ではできないがPF側でできることは何か? 上記PF図のユースケース3にあたる患者自身の情報参照である。これはマイナンバーカードによるマイナポータルでの個人認証があるから可能になる機能であり、地連では実現できない機能である。患者個人が見ることも意識すると参照できる情報の範囲は絞らざるを得ないという意見もあるため、これらの6情報に落ち着いたのではないだろうか?
また、マイナンバーによる紐づけにより異なる医療施設の患者番号の名寄せをしなくても患者データの統合ができるところもPFのメリットである。
現在、地連では基幹病院の情報を診療所などで参照するというケースが多いが、PFの発展によって診療所側のデータも共有する機会が増えるとPFの価値が上がる。うまく共存できるとより質の高い地域医療が実現できると思われる。
前章では、PFが患者自身でアクセスできることを特徴として挙げたが、これをPHR(個人健康記録)の基盤と考えるとメリットがある。しかし、患者自身が見ることを前提に記録を書いてはいないという医師も多い。患者が見ることが前提になると医師も気を使った表現となり、これは患者の不利益につながることもありうる。このことは医師によっても意見が分かれるところであり、突き詰めれば著作権も含めて医師記録は誰のものか?という議論も行われている現状がある。
少し横道に逸れたが、患者自身が見る機能があると情報の公開範囲は限定され、連携医師が見たい情報は得られないことになる。PFが構築されても地連の機能は網羅されていない状況を考えると、今後お互いどのように共存していくかを模索しながら、費用的な課題もクリアしていく道を探るしかないと思われる。
今回はこれまで各地の医療関係者の努力によって発展してきた地連と新たに登場したPFを対比しながらシステムの違いを検証してみた。いずれはPFに統合されることが理想ではあるがまだ先になりそうである。しかし、様々な有識者により検討は進められているので、今後の地域完結型医療の核となるシステムとして確立されることを願う。