2024年12月に実施された従来型健康保険証の新規発行廃止に伴い、マイナ保険証によるオンライン資格確認の利用率も徐々にではあるがアップしている。しかし、その反面マイナ保険証の利用登録申請解除も増加していることは気になるところである。
今回は、改めてオンライン資格確認によるメリットを整理するとともに、今後の方針を踏まえた病院情報システム(以下、HIS)の考慮すべき点についてお伝えしたい。
オンライン資格確認等システムでは、マイナ保険証を用いた本人確認により、医療機関や薬局で特定健診情報や薬剤情報などの診療情報の閲覧ができることはご存じだと思う。
出典:厚生労働省医政局「令和7年3月オンライン資格確認における手術情報を含む診療情報の提供」
出典:厚生労働省医政局「令和7年3月オンライン資格確認における手術情報を含む診療情報の提供」
これらの閲覧実績についてはまだ情報はないが、活用することにより以下のメリットがあることは確かである。
出典:厚生労働省医政局「令和7年3月オンライン資格確認における手術情報を含む診療情報の提供」
更に、2024年12月より救急時医療情報閲覧機能が追加された。これは、オンライン資格確認による本人同意なしで診療情報を閲覧できる機能である。ただし、当面は本人確認のためマイナ保険証は必須であり(マイナンバーカードの写真と患者を目視確認)、ない場合は閲覧できない。また、本機能を使って電子カルテなどから利用する場合、二要素認証の履歴が必須となっているため、システム導入の際は注意していただきたい。
出典:厚生労働省医政局「救急時医療情報閲覧に係る運用フロー」
まず、上記の救急時医療情報閲覧機能におけるマイナ保険証の扱いだが、現在、4つの情報(1.氏名、2.生年月日、3.性別、4.住所または被保険者番号等)による検索機能が開発されており、これがリリースされると必ずしもマイナ保険証が必要ではなくなる予定である。救急時にマイナ保険証を持っていないケースも多いと思われるので、早期のリリースに期待したい。
今後、マイナ保険証は様々な医療DX(Digital Transformation)の場面でパスポート的な存在になってくると思われる。そのためにも利用促進を図っていくことが重要となる。患者にとって更に便利な機能が備われば、おのずと利用者は増加すると考える。今、計画されている機能のひとつにスマホ保険証がある。マイナンバーカードを持ち歩くことにリスクを感じている方も少なからずいる中、必ず持ち歩いていると思われるスマホがその代わりになるのであれば利用者増加はかなり期待できる。
また、医療機関ごとに発行された診察券の使い分けはかなり煩わしい。厚生労働省ではマイナ受診券というものも計画しており、マイナンバーカード1枚だけでどこの医療機関でも受診できることは大きなメリットになる。
これらのマイナンバーカードを中心とした取り組みが進んでくれば本来の目的の達成にも近づくが、そのためには電子カルテベンダやそのシステムを導入する施設でもマイナンバーカードを意識したシステム構築が必要である。約7年ごとに更新を行っているHISでは、常にこの更新のタイミングでマイナンバーカードの有効活用を意識した取り組みを行うことになるであろう。また、その中に現状の課題を解決していくための目指すべき姿がある。
出典:厚生労働省「令和7年1月22日病院の情報システムの刷新に係る方向性について」
今回は、厚生労働省が描くマイナ保険証を中心とした医療DXの現状と今後についてその一部を紹介した。電子カルテを基盤としたHISにかかる費用は年々増加の一途をたどっているが、少なくともこれらの目的や効果を理解した上でより効率的な導入を目指してほしい。