PMH(Public Medical Hub)と診療報酬改定DX
2025年7月

執筆者:株式会社 アイ・ピー・エム
    取締役 副社長
    外尾 和之(ほかお かずゆき)氏

前回は、マイナンバーカードの今後について紹介したが、その一環としてPMH(Public Medical Hub:デジタル庁が開発した自治体が実施主体の医療費助成、母子保健、予防接種、介護保険など分野の情報連携ネットワーク)もある。

マイナ保険証は現在健康保険の情報に限定されているが、公費なども含めた受給者証の一体化がPMHの当面の課題である。今回は、このPMHについて紹介したい。

1.PMHの概要

PMHは、健康・医療・介護分野のデジタル化を促進するためにマイナンバーカードを活用する取り組みである。法律で定められた公費負担医療や、地方公共団体が独自に設けた医療費などの助成制度の受給者証、予防接種の接種券、母子保健(健診)の受診券、医療機関の診察券、介護保険証などをマイナンバーカードと一体化することにより、マイナンバーカード一枚で受診できる環境を整備し、医療DXの推進に関する工程表などに基づいて取り組みが進められている。


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出典:厚生労働省 大臣官房 情報化担当参事官室「自治体と医療機関・薬局をつなぐ情報連携基盤(PMH)の構築を通じた医療費助成の効率化について」(令和6年10月30日)


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出典:厚生労働省「2040年に向けた医療提供体制の総合的な改革における医療DXの制度的対応」(令和7年1月22日)

2.PMHと診療報酬改定DXの連携

診療報酬改定DXとは、2年毎に実施される診療報酬改定において、デジタル技術を使って業務負荷の最小化を目指す取り組みのことである。テーマとしては以下の4つが設けられている。

  1. 共通算定モジュールの運用・開発
  2. 共通算定マスタ・コードの整備と電子点数表の改善
  3. 標準様式のアプリ化とデータ連携
  4. 診療報酬改定施行時期の後ろ倒しなど

この取り組みの中で、公費受給者の正確な資格情報の取得と、地単公費の都道府県をまたいだ現物給付化を可能にするために、PMHと連携したシステムが構築されている。

PMH連携を含めた共通算定モジュールは、次回(2026年度)診療報酬改定より本格的に提供される予定になっている。モジュール接続はクラウド型レセコン(レセプトコンピュータ)でのクラウド間連携が基本となっているが、オンプレミス型レセコンに対してもモジュール提供される予定であり、すぐにクラウド化を検討しなければいけないわけではないので安心していただきたい。


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出典:厚生労働省「診療報酬改定DX対応方針 資料3」

3.標準型電子カルテ

これらのサービスを患者に提供するためには、電子カルテの導入がポイントとなるが、200床未満の病院においては59%(2023年時点)に留まっている。電子カルテ未導入の200床未満の医療機関に展開するため、厚生労働省では標準型電子カルテ(クラウド)の検討を進めている。

今回、モデル事業の対象が「電子カルテ未導入の医療機関」を対象にしているとういうことは、既に電子カルテを使用している医療機関が標準型電子カルテに移行することについてはまだあまり考えられていないと思われる。

標準型電子カルテの目的としては以下の2点が挙げられており、提供時期は明確になっていないが、標準型電子カルテα版が、対象を「電子カルテが未導入の医科の無床診療所向け」として、2025年3月よりモデル事業が開始されている。

  • 医療DXのシステム群(全国医療情報プラットフォーム)につながり、情報の共有が可能な電子カルテ
  • 民間サービス(システム)との組み合わせが可能な電子カルテ


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出典:厚生労働省 医政局「第3回標準型電子カルテ検討ワーキンググループ資料」(令和7年1月31日)

終わりに

今回は、PMHの紹介とその連携に必要な診療報酬改定DXや、その先にある標準型電子カルテについての最新動向をお伝えした。

この分野は目まぐるしく動いてゆくため、今後もできる限り取り上げていきたい。

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