医療・介護連携の推進
2025年10月
執筆者:株式会社 アイ・ピー・エム
取締役 副社長
外尾 和之(ほかお かずゆき)氏
2024年6月の診療報酬改定では医療・介護連携を促す報酬項目の新設や見直しが行われた。それから1年経過し、医療機関、介護施設ともに連携強化に向けた動きが活発化しつつある。今回はその要件について改めて確認するとともに、どのような働きかけにより協力医療機関として拡大しているのかを紹介したい。
1. 協力医療機関
2024年の診療報酬改定では、介護施設の協力医療機関の要件も明確化され、それぞれ以下の加算が新設された。
医療側 |
- 協力対象施設入所者入院加算(入院初日)
1 往診が行われた場合
2 1以外の場合
|
600点 200点 |
|
200点 |
介護側 |
|
100単位/月(算定要件による) |
|
10単位/月 |
|
5単位/月 |
|
250単位/回 |
これらの加算においては、平時からの連携が算定要件となっており、ホームページや院内掲示にて連携施設を公開しておく必要がある。
特に地域包括ケア病棟におけるサブアキュート率を上げる対策においては、経営上でも重要(注1)であり地域における医療介護連携は大きなポイントとなる。
(注1) 入院料2、4を算定する地域包括ケア病棟において、自院の一般病棟から転棟した患者の割合が6割未満を満たさない場合85/100に減算(-15%)
2.算定要件と施設基準
これらの加算を算定するためには平時からの連携が必要となるが、具体的にどのような算定基準があるかをみていきたい。このコラムにおいては医療施設に絞ってご紹介する。
※厚生労働省令和6年度診療報酬改定の概要(医科全体版)より
協力対象施設入所者入院加算(入院初日)
算定要件
- 協力対象施設入所者入院加算は、介護保険施設等において療養を行っている患者の病状の急変等により入院が必要となった場合に、当該介護保険施設 等の従事者の求めに応じて当該患者に関する診療情報及び病状の急変時の対応方針等を踏まえて診療が行われ、入院の必要性を認め入院させた場合に、入院初日に算定する。
- 「2」については、「1」以外の場合であって、当該保険医療機関が当該介護保険施設等の従事者の求めに応じて当該患者(救急用の自動車等により緊急に搬送された者を除く)に対し、診療を行い、入院の必要性を判断して入院した場合について所定点数に加算する。
- 当該保険医療機関と当該介護保険施設等が特別の関係にある場合、協力対象施設入所者入院加算は算定できない
施設基準(概要)
- 当該医療機関が介護保険施設等から協力医療機関として定められている等、緊急時の連絡体制及び入院受入体制等を確保していること。
- 次のいずれかの要件を満たすもの。
- ア 次の(イ)及び(ロ)に該当していること。
(イ)入院受入れを行う保険医療機関の保険医がICTを活用して当該診療情報及び病状急変時の対応方針を常に確認可能な体制を有していること。
(ロ)介護保険施設等と当該介護保険施設の協力医療機関において、当該入所者の診療情報及び急変時の対応方針等の共有を図るため、年3回以上の頻度でカンファレンスを実施していること。
- イ 介護保険施設等と協力医療機関として定められている医療機関において、当該入所者の診療情報及び急変時の対応方針等の共有を図るため、1月に1回以上の頻度でカンファレンスを実施していること。
- 介護保険施設等に協力医療機関として定められており、当該介護保険施設等において療養を行っている患者の病状の急変等に対応すること及び協力医療機関として定められている介護保険施設等の名称について、当該保険医療機関の見やすい場所及びホームページ等に掲示していること。
|
介護保険施設等連携往診加算
算定要件
- 介護保険施設等連携往診加算は、介護保険施設等において療養を行っている患者の病状の急変等に伴い、当該介護保険施設等の従事者等の求めに応じて当該患者に関する診療情報及び病状の急変時の対応方針等を踏まえて往診を行い、治療の方針について当該患者又はその家族等に十分に説明した場合に限り算定できる。この場合、介護保険施設等の名称、活用した当該患者の診療情報、急変時の対応方針及び診療の要点を診療録に記録すること。
- 当該保険医療機関と当該介護保険施設等が特別の関係にある場合、介護保険施設等連携往診加算は算定できない
施設基準(概要)
- 当該医療機関が介護保険施設等から協力医療機関として定められている等、緊急時の連絡体制及び往診体制等を確保していること。
- 次のいずれかの要件を満たすもの。
- ア 次の(イ)及び(ロ)に該当していること。
(イ)往診を行う保険医療機関に所属する保険医がICTを活用して当該診療情報及び病状急変時の対応方針を常に確認可能な体制を有していること。
(ロ)介護保険施設等と協力医療機関において、当該入所者の診療情報及び急変時の対応方針等の共有を図るため、年3回以上の頻度でカンファレンスを実施していること。
- イ 介護保険施設等と協力医療機関において、当該入所者の診療情報及び急変時の対応方針等の共有を図るため、1月に1回以上の頻度でカンファレンスを実施していること。
- 介護保険施設等に協力医療機関として定められており、当該介護保険施設等において療養を行っている患者の病状の急変等に対応すること及び協力医療機関として定められている介護保険施設等の名称について、当該保険医療機関の見やすい場所及びホームページ等に掲示していること。
|
3.連携施設を増やす活動
医療と介護の連携により診療報酬上メリットは出てきたが、どのような営業活動を展開すれば連携施設を増やせるかは大きな課題ではないだろうか。
元々急性期病院は選定療養費の関係もあり、入院患者数や病床稼働率の向上は診療所からの紹介で成り立っている。これと同様でその対象施設が介護・福祉施設に拡大したと考えるとわかりやすい。では病院ではどのようにして連携施設を増やしているのだろうか? 様々な活動を見てきたが、有効なものを挙げてみたい。
(1)人的ネットワークの構築
- 定期的に交流会(勉強会や情報交換会)を開催し互いの理解を深める
(2)情報発信
- ホームページやSNSを利用して連携モデルや成功事例を紹介し認知度の向上を図る
- 連携施設のパンフレットを院内に置いておく
- ホームページに連携施設を公開しそのパンフレットなども参照できるようにする
(3)提携プログラムの開発
- 医療機関と福祉施設が共同で提供できるケアプランを設計し、患者・利用者に統合的なサービスを提供する
- 地域包括ケアの一環として、医師・看護師・介護職が共同で対応する体制を構築する
(4)行政・地域団体との協力
- 地域自治体と連携して、高齢者や障がい者向けの支援プログラムを立ち上げる
- 地域住民に医療と福祉の連携サービスのメリットを説明する啓発活動を行う
(5)対面型営業活動
- 医療機関や福祉施設を訪問し、具体的な連携の可能性について提案する
- 各施設が持つ課題をヒアリングし、それを解決できる連携方法を提案する
終わりに
地域での医療・介護連携は経営の要と言っても過言ではない。今後、人口が減り続ける日本において医療に限らずあらゆるサービス事業が淘汰されてゆく。直接患者に営業できない保険医療施設においてはどのような営業手段が効率的かつ有効かを考える時代になってきた。その中で、素敵な医療サービスを提供し続ける施設=生き残れる施設であってほしい。