出典:厚生労働省ホームページ
こういった状況の中、医師のみならず医療従事者全員においても「働き方改革」が求められている現状がある。現在、各医療機関においても様々な取り組みが検討されていると思われるが、今回は、A病院における働き方改革の一環として、「勤怠管理システム」の必要性について取り組んだ事例をご紹介したい。
A病院では、2022年度(令和4年度)の中途からではあったが、勤怠管理システムを導入することを決めた。
2015年度(平成27年度)に労働基準監督署の調査があり、「職員の客観的な労働時間の把握がなされていない。」と指摘を受けた。A病院では、今回のシステム導入前までは、出勤簿と出退勤簿という自己申告の書類でしか職員の出退勤時間を管理できておらず、A病院において一人の職員が1日に勤務すべき時間である7時間45分(拘束時間)を実際に勤務したのか確認できるものがなかった。よって30分程度の遅刻や早退は容易にできたと思われた。
また、時間外労働の申請については、超過勤務命令簿(本来であれば上司が事前に命令)をカレンダー形式で記入し、毎月提出することで行っていた。
令和6年度から法制化されることになった医師の働き方改革の施行に伴い、病院管理者は、医師ごとの月あたりの総労働時間を把握する必要に迫られた。因みにA病院で、システム導入前の各医師の月ごとの時間外労働時間を約1年間分調査したところ、A水準(一般労働者と同じ)である960時間を超える医師は2~3名しかいなかった。そのため、A病院では、「A水準を維持するという方針」が、病院幹部会で決定されたのである。
これら1及び2より、A病院では、勤怠管理システムの導入を余儀なくされ、2022年度(令和4年度)の中途からではあったが実運用を開始することになった。
「医師の負担が少ない時間管理が可能なシステム」ということを最優先として業者選択を行い、11社から選出することとした。
しかし、いずれも医師が出勤・退勤の際に、自ら打刻しなければならないものであったため、緊急呼び出しや夜勤又は当直のある医師には適さないと判断し、「ビーコン打刻(注)」ができる6社に絞り込むこととした。その中でも、内容、コスト及び多職種への拡張等を考慮し、X社のシステムとY社のシステムの2社を比較検討した。
注:ビーコン打刻とは、医師がキーホルダーのような発信機を携帯し、出入り口等に設置した受信機付近を通過することで自動的に打刻されるものである。
今回は、病院勤務医には、ビーコン打刻が最もマッチすること、そして、その結果、X社とY社の2社まで絞り込んだところまでとし、次回は、2社の比較と導入後の問題点等について記述したい。