出典:厚生労働省ホームページ
A病院では、令和4年度の中途からではあったが、勤怠管理システムを導入することを決め、病院勤務医には、ビーコン打刻が最もマッチすると判断された。
その結果に基づいて、最終的に絞り込んだ2社のシステムの比較と勤怠管理システム導入後の問題点等について記述したい。
X社・・・初期費用70万円、ランニングコスト70万円/年
Y社・・・初期費用350万円、ランニングコスト0円
利用者が増えても追加料金なし
但し、ビーコン及び受信機の増設時には負担あり
これら1及び2の比較により、A病院では、Y社の勤怠管理システムを導入することを決め、その際、医師とは別に、事務職も勤怠管理を始めることとし、打刻方法はWeb打刻とした。
(注)Web打刻とは、各職員がインターネットからX社のシステムにアクセスし、IDとパスワードでログインし、出勤時間及び退勤時間等を自ら記録するもの
当直体制であるメディカルスタッフは、インターネット端末の配置数が十分でないことを除けばWeb打刻でも容易に導入できるが、2交代制である看護師は、職員数に比べてインターネット端末の配置数が極端に少ないことからもビーコン打刻となるが、各職員に配るビーコンの費用及び受信機の費用がかかることと、出勤時間は一方では別の職員の退勤時間となること等が懸念材料となった。
通常勤務者は、終業時間である17時15分を超えた時刻で打刻することになるが、例えば18時15分に打刻した職員のこの終業時間との差(60分)をすべて超過勤務と見做すことは費用面からしても適切ではない。つまりこの60分を時間外労働なのか自己研鑽のための時間なのか把握する必要があり、必然的に紙の超過勤務命令簿は継続せざるを得ないと判断された。
A病院が導入したY社の勤怠管理システムは、休暇申請もできるがその際、申請者と承認者が1対1でしか設定できない。
例えば事務職でいえば、
このように1休暇申請に対して複数人が承認するケースが組織上存在することもあるので、紙ベースの有給休暇簿は継続せざるを得ないと判断された。
A病院では、勤怠管理システムの導入で医師等の職員の客観的な勤務時間を記録し、把握することができるようになったが、紙ベースの超過勤務命令簿や有給休暇簿は引き続き使用せざるを得ない状況である。運用に変化はないものの勤怠管理システムの導入費用だけが余分なものとなり、労働基準監督署の指摘を回避するための支出は大きかったと言わざるを得ない。
今後、A病院の課題としては、今回実現した医師及び事務職員の勤怠管理に留まらず、看護師やメディカルスタッフの客観的な勤怠管理をいかに行うかを検討し、更なる支出を良しとする覚悟があるかということであろう。