看護師の負担軽減について 2024年1月

執筆者:株式会社 アイ・ピー・エム
    メディカル事業部長
    小西 英樹(こにし ひでき)氏

看護師の負担軽減について

前回までは、医師の働き方改革に関連して、勤怠管理システムの導入事例について紹介したが、今回は、看護師の負担軽減について触れたいと思う。

まずは、法律から~

看護師等が行う業務

保健師助産師看護師法(昭和23年法律第203号)(抜粋)

第5条 この法律において「看護師」とは、厚生労働大臣の免許を受けて、傷病者若しくはじょく婦に対する療養上の世話又は診療の補助を行うことを業とする者をいう。

診療報酬上の看護職員(看護師及び准看護師)の業務

「厚生労働大臣が定める基準等」の告示(3)「基本診療料の施設基準等」から

  • 病状の観察
  • 病状の報告
  • 身体の清拭、食事・排泄等の世話等療養上の世話
  • 診察の介助
  • 与薬・注射・包帯交換等の治療の介助及び処置
  • 検温、血圧測定、検査検体の採取・測定及び検査の介助
  • 患者や家族に対する療養上の指導 等

看護師の負担軽減の目的

離職・休職等の看護師の動向を把握し安定した人員確保のため継続的な採用を実施することで、必要な看護基準を維持し、病院の安定的な収入確保を目指すこと。

また、看護師の職場定着を積極的に行うことは、よい人材の流出を防ぐことになり、延いては医療の質を担保することに繋がる。

看護師の負担軽減策

1. 他の職種と調整することで軽減される業務

(1)看護師と他の職種との業務分担による負担軽減

~ 薬剤師等、他の職種の理解が必要! ~

職 種 看護師から要望したい業務等
薬剤師
  • 院外処方体制を維持することで、病棟での服薬指導、持参薬管理や薬剤管理を実施
  • 病棟の注射薬事の取り揃え、注射薬の調整、救急カートの在庫管理及び消毒薬の払い出しを実施
理学療法士
作業療法士
  • リハビリ対象患者の病棟への送迎
  • 体位変換のサポート
管理栄養士
  • カンファレンスでの食事の変更等に関する情報提供や提案
臨床検査技師
  • 採血、心電図等の検査の病棟での実施
事務職員
  • 入院案内等各種手続きの実施
  • 入院支援センターの設置
    →患者の入院中の生活・検査・手術など、入院前に可能な説明を実施
    →患者の不安を取り除き、入院から退院をスムーズに

(2)看護補助者の配置による負担軽減

~看護補助者の配置の有無によって看護師の業務負担は変わる~

「看護補助者は、看護師長及び看護職員の指導の下に、原則として療養生活上の世話(食事、清潔、排泄、入浴、移動等)、病室内の環境整備やベッドメーキングのほか、病棟内において、看護用品及び消耗品の整理整頓、看護職員が行う書類・伝票の整理及び作成の代行、診療録の準備等の業務を行うことができる。(保医発0305第2号・令和 2年3月5日)」

2. 夜勤における主な負担軽減

~夜勤の勤務負担を少しでも軽減させる~

  • 夜勤と次の勤務との間隔が十分である。
  • 夜勤回数(2交代で4~5回、3交代で7~8回が一般的)が少ない。
  • 夜勤の翌日は休日(2交代の病院では夜勤明けの翌日は休日)とする。
  • 仮眠時間が確保(2交代勤務では2~3時間の仮眠が理想)される。
  • 勤務希望に配慮した勤務表作成(土日に週休日を当てるなどの希望が叶う)。

3. 子育て中、介護中における主な負担軽減

~子育て中、介護中の勤務負担を軽減させる~

  • 夜勤の免除や回数の制限がある。
  • 休日勤務の免除又は制限及び短時間勤務制度がある。
  • 配置する場所(部署)が配慮される(忙しい病棟には配置しないなど)。
  • 長期休暇や休業制度がある。

具体的な対応事例

1. 夜勤専従者の院内公募(A病院の場合)

<問題点>

A病院では、ある時、約30名の看護師が育児休暇の取得等を理由に夜勤を行うことが不可能となった。

<取り組み>

  • 看護師長会での趣旨説明
  • 総務課によるモデル勤務パターン及び平均的な手当額の明示
  • 院内で「夜勤専従」を希望する者を募集

<院内ルールの策定>

  • 連続勤務は2カ月までとし、職員から延長の申し出があった場合には、最低1カ月の間隔を空けることとした。
  • 事前に健康診断を受けさせるなど、夜勤専従者の健康面のチェックを行うことした。

<効果>

  • 「昼間の時間を有効に使える。」ということで、独身者や子育て中の職員からも希望が上がり、合計40名の夜勤専従者を確保できた。
  • 看護師を増員したわけではないので、人件費に変化はなかった。
  • 施設基準(看護職員夜間12:1配置加算1)を維持できた。

2. 看護補助者の有効活用(B病院の場合)

<問題点>

  1. B病院では、各病棟に看護補助者を配置しているため、横断的な協力関係が構築できず、病棟によって忙しさに差があり、業務内容や業務量に不均衡が生じていた。
  2. 忙しい病棟の看護師は、看護補助者に本来の業務が依頼できないため、自ら当該業務を行うことになり、本来の看護業務が手薄になっていた。

<改善点>

各病棟への看護補助者の配置をやめ、看護補助者を一つの組織として捉え、看護補助者に業務を依頼する場合は、病棟等から直接連絡することとした。

<取り組み>

  • 看護補助者の病棟配置(所属)をやめた。
  • 看護補助者にはPHSによる業務依頼をすることとした。
  • 必然的に、看護補助者の傾斜配置が実現できた。

<効果>

  • 看護補助者は、内科系・外科系を問わず、どこの病棟でも業務を経験・習得できるようになった。
  • 看護補助者の業務が平準化し、看護師は本来の自分の仕事に専念できるようになった。
  • 看護師が患者と向き合う時間が増えた。

結語

「看護師の負担軽減」の目的は、看護師が本来やるべき仕事である「患者のケア」に専念するためであることを忘れてはならない。

ただ「仕事が楽になって良かった!」ではなく、その楽になった時間をできる限り「病気と闘っている患者さん」のケアに充てることが重要である。

「この病院に入院してよかった!」「対応のよい病院だった!」という患者さんが、少しずつでも増えていくことを願いたい。

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