前回は、看護師の負担軽減を実現するためには、他の職種の理解が必要であること及び看護補助者の配置の有無が大きく影響すること等に触れたが、今回は、離職率の高い看護師をいかに定着させるべきかについて記載する。
上記(1)については、前回、「看護師の負担軽減」でその対策について触れたので、まず(2)の「ライフイベントに伴う離職」について記載する。
「ライフイベント」を辞書で調べてみると「結婚、出産、育児、就学、大病、住宅購入等、人生の節目で起きる生活上の様々な出来事」と記載されている。
人生におけるイベントのタイミングで、離職してゆく者が多いということである。
次に、(3)の「スキルアップ・キャリアアップのために転職したい。」と感じさせないためには、能力開発制度によるキャリアアップができる医療機関であることが大切である。
看護に係る主なキャリアパスには、
があるため、これらを取得できるように看護部全体で、いや、病院全体でフォローするような雰囲気作りがほしいところであるが、その方策としては、資格取得時に何らかのインセンティブを与えることもその一つになるであろう。
複雑で解決困難な看護問題を持つ個人、家族及び集団に対して水準の高い看護ケアを効率よく提供するための特定の専門看護分野の知識・技術を深めた専門看護師を社会に送り出すことにより、保健医療福祉の発展に貢献し併せて看護学の向上を図ることが目的。
<14の専門看護分野> がん看護/精神看護/地域看護/老人看護/小児看護/母性看護/慢性疾患看護/急性・重症患者看護/感染症看護/家族支援/在宅看護遺伝看護/災害看護/放射線看護 |
特定の看護分野において、熟練した看護技術と知識を用いて水準の高い看護実践のできる認定看護師を社会に送り出すことにより、看護現場における看護ケアの広がりと質の向上を図ることが目的。
<19の認定看護分野> 感染管理/がん放射線療法看護/がん薬物療法看護/緩和ケア/クリティカルケア/呼吸器疾患看護/在宅ケア/手術看護/小児プライマリケア/新生児集中ケア/心不全看護/腎不全看護/生殖看護/摂食嚥下障害看護/糖尿病看護/乳がん看護/認知症看護脳卒中看護/皮膚・排泄ケア |
関西地区にあるA病院では、資格を取得した看護師には、昇給月に特別昇給の対象者としている。または、賞与時に「特に優秀な職員」とし、通常職員より支給率を高くする等のインセンティブを渡しているが、一般的には、日本看護協会が公表した2022年の調査によると、看護師の代表的な資格である「専門看護師」の資格手当は月額(平均)11,566円、「認定看護師」の資格手当は月額(平均)8,556円となっている。
資格取得に向けた勉強をする中で、特定分野における専門的知識を習得できるうえ、約10万円以上の平均年収アップが見込めるという点は、非常に大きな魅力といえるだろう。
しかしながら、この資格取得は、職場の協力や理解がないと成し遂げることができないことを忘れてはならない。
また、(4)の「需要が多いため、転職先が豊富」については、自らが魅力ある病院であれば、転職を考えることにはならないであろう。
休暇の内容を記述する前に、勤めようとする医療機関が、週休2日制なのか、完全週休2日制なのか、または「〇休4週」なのか把握する必要がある。
ここでは週休2日制と完全週休2日制の違いも理解しておきたい。
(a)労働基準法に定められている法定内休暇
<法定内休暇> 年次有給休暇/産前休業と産後休業/生理休暇/介護休業/育児休業/子どもの看護休暇/介護休暇/介護休業 |
(b)特別休暇とは?
<主な特別休暇> 慶弔休暇/夏季休暇、冬季休暇/リフレッシュ休暇(レクリエーション休暇)/転勤時休暇及び異動休暇/誕生日休暇/アニバーサリー休暇/ボランティア休暇/病気休暇/教育訓練休暇/裁判員休暇/開院記念日 など |
このような休暇が、充分与えられているか否かは、入職前に確認しておきたい。
看護師 | 110日前後 |
医療・福祉業界 | 112.4日 |
全職種 | 112.8日 |
この3つの数値には大差はないので、休日数が看護師の継続勤務の足枷にはなってはいないことは理解できる。
今回は、看護師の離職理由の中で、「ライフイベントに伴う離職が多いこと」及び「スキルアップ・キャリアアップのための転職が多いこと」について触れ、最後に自らが魅力ある病院であるための一つとして、看護師の休暇について触れてみた。
次回は、引き続き自らが魅力ある病院であるために、看護師に支給される手当や福利厚生について触れてみたい。