前回は、看護師の主な離職理由の中で、「ライフイベントに伴う離職が多いこと」や「スキルアップ・キャリアアップのための離職が多いこと」に触れたが、今回は、手当や福利厚生面から離職率の高い看護師をいかに定着させるべきかについて記載する。
まず、頭に浮かぶのは「手当」である。
看護師に限らず、深夜(22時~5時)の間に勤務した者は、夜勤手当として各々25%の割り増し手当が支給されているが、この手当の額は適正か?
<夜勤手当の額>
勤務形態 | 金額 |
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2交代制勤務 | 11,286円 |
3交代(準夜) | 4,154円 |
3交代(深夜) | 5,122円 |
(日本看護協会 2020病院看護実態調査より)
夜勤時間数に応じて、1回の夜勤につき約2,000円から8,000円弱が支給されているが、この手当の額は労働の対価として満足か?
<夜間看護手当の相場>
深夜勤務の時間 | 金額 |
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深夜(22時~5時)の全部 | 7,600円 |
4時間以上 | 3,700円 |
2時間以上4時間未満 | 3,200円 |
2時間未満 | 2,200円 |
(九州地区 A病院の実態)
⇒「看護職員処遇改善評価料」として制度化
以前からある「感染症防疫作業手当」(支給額300円)の見直し
<目的>
新型コロナウイルス感染症への対応と少子高齢化への対応が重なる最前線において、働く看護職員の収入を上げるため。
<事業概要>
地域でコロナ医療など一定の役割を担う医療機関(注1)に勤務する看護職員を対象に、賃上げ効果が継続される取り組みを行うことを前提として、収入を1%程度(月額4,000円)引き上げるための措置を令和4年2月より前倒しで実施するよう国からの補助金が都道府県に交付された。
注1 救急医療管理加算を算定する救急搬送件数年間200台以上の医療機関及び三次救急を担う医療機関
この手当は、令和4年10月からは「看護職員処遇改善評価料」として残っており、一定の施設基準を満たした医療機関に段階的に診療報酬として支払われることとなった。
法律で加入が義務付けられている社会保険のこと。
具体的には、健康保険や介護保険といった看護師にとって馴染みの深いものや、雇用保険や労働者災害補償保険といった労働者を守るものがある。
区分 | 内容等 |
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住宅手当や社宅 |
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通勤手当 |
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家族手当 |
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財形貯蓄制度 |
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結婚・出産祝金 |
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社員旅行、クラブ活動 及び新年会・忘年会 |
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上記以外でも、開院記念日に記念品を渡したり、教育・研究のために図書券が配られたりするなど、さまざまである。
次の3項目を準備しても十分ではないが、一職員を退職まで追い込むことをできる限り防ぎたいものだ。
院内では、副看護部長等を相談窓口に任命し、真摯に対応する。
また、院外の相談窓口を設置することは、院内の人間に知られることなくトラブルの相談ができるというメリットがある。
人間関係でコミュニケーションが取れず、患者に影響が出るのは本末転倒!
人間関係が改善できないのであれば、院内の他部署への異動を相談する。
又は、人事権のある者が異動を配慮する。
早めに医師や臨床心理士のカウンセリングを受けることは水際対策となるが、必要であれば、思い切って休職し、心身を休めることも大切である。
離職率が高いといわれる看護師にできる限り長く勤務してもらうための取り組みとして、これまで、看護師の「負担軽減」や「教育面」「休暇制度」などについて述べてきたが、これらに併せ、手当面や福利厚生においても、自らが魅力ある病院でなければならない。
これらを相対的に考えて対処(制度化)していくことにより、看護師による離職検討の減少、ひいては必要な看護基準を維持することができるようになる。
よい人材の流出を防ぎ、安定的な収入を確保するということは、これまでも記載したが、結局、「医療の質を担保する」ことに繋がるのである。