厚生労働省は、「医療等分野における番号制度の活用等に関する研究会」(以下、当該研究会)の報告書(以下、当該報告書)を2015年12月10日に公表しました。議論された内容や論点を整理し、具体的な制度設計を明らかにするなど、非常に興味深い内容になっています。
当コラムでは、当該報告書の主だった内容について、以下の4回シリーズでお届けします。
第1回目は、序論として、当該報告書が公表されるまでの経緯について、お話しします。まず経緯を振り返ることによって、当該報告書の内容をより理解しやすくなるからです。
当該報告書は、厚生労働省「医療等分野における情報の利活用と保護のための環境整備のあり方に関する報告書(2012年9月18日)」の「医療等分野でやりとりされる情報は、機微性が高い情報を含むので、所得情報などと安易に紐づけされない安全かつ効率的な仕組みが必要である。マイナンバーとは異なる医療等分野でのみ使える番号(医療等ID(仮称))や安全で分散的な情報連携の基盤を設ける必要がある。」に基づいて、2014年5月30日に第1回目を開催し、計10回の研究会を経て、医療等分野(健康・医療・介護分野)の情報連携に用いる識別子(ID)の具体的な制度設計等について、検討結果をとりまとめたものです。
当該研究会の検討過程で、「中間まとめ」(2014年12月10日)を公表すると共に、この「中間まとめ」を受けて、マイナンバー利用範囲の見直しや医療保険者の保険料徴収等の事務の共同委託等内容を含む、番号法等の改正案と国民健康保険法等の改正案を2015年通常国会に提出し成立しました。
また、以下の事項を明記した「日本再興戦略改訂2015」を2015年6月30日に閣議決定しました。
一方、日本医師会は、「医療分野等ID導入に関する検討委員会」の「中間とりまとめ」を2015年7月15日に公表しました。注目すべき点は以下の2点です。
因みに、日本医師会「医療分野等ID導入に関する検討委員会」の委員長は、東京大学大学院医学系研究科特任准教授 山本隆一氏であり、厚生労働省の当該研究会の座長代理もされています。
厚生労働省は既に公表した「中間まとめ」までの検討の成果に加えて、中間まとめ後の法整備(番号法等や国民健康保険法等の改正)や閣議決定(日本再興戦略改訂2015)及び日本医師会が公表した「中間とりまとめ」等を踏まえ、検討の結果をとりまとめたものが当該報告書なのです。
以上、当該報告書が公表されるまでの経緯について、大まかな流れをお話ししました。
次回は、当該報告書に基づいて、医療機関に関係が深い「医療保険のオンライン資格確認の仕組み」についてお話ししますので、少しでも皆様のご参考になれば幸いです。