前回、医療機関に関係が深い「医療保険のオンライン資格確認の仕組み」についてお話しました。今回は、厚労省報告書に基づいて、「医療等分野の情報連携に用いる識別子(ID)の体系」についてお話しします。
急性期から回復期、在宅療養に至るまでの切れ目ない医療・介護サービスを提供し高齢者が身近な地域で、できるだけ長く自立した生活を実現するために、現在、全国の地域において、医療機関や介護事業者等が加入する医療等分野の地域情報連携ネットワーク(以下、地域ネットワーク)の整備が進められています。
しかしながら、患者及び要介護者の識別子(ID)において、以下のような主な課題があります。
このような課題に対して、患者本人を一意的に把握するための共通の識別子(ID)として、「地域医療連携用ID(仮称)」を発行し、「異なるID体系で管理された医療情報等を突合するための識別子」という役割に位置づけ、異なる地域ネットワーク間や異なるベンダが提供する情報連携システム間の情報連携にこのIDを用いるとしています。
尚、「地域医療連携用ID(仮称)」は、前回お話した医療機関窓口で個人番号カードによる医療保険のオンライン資格確認の仕組みを通じて、オンライン資格を確認した際、資格確認サービス機関(支払基金と国保中央会の共同運営)から、発行する仕組みを想定しています。
また、医療機関αと介護事業者βが同じA地域ネットワークに加入している場合、患者の地域医療連携用IDを医療機関αに発行すると、医療機関αを通じてその地域医療連携用IDをA地域ネットワークの患者ID管理に位置づける仕組みとすることで、介護事業者βでも地域医療連携用IDを利用することが可能になるとしています。
このために、地域ネットワークの構築に際しては、病名等の厚生労働省標準規格と同様、「地域医療連携用ID(仮称)」の活用を促すなど、その周知に取り組むことや地方自治体等に働きかけることなどが求められるとしています。
次に、前述の「地域医療連携用ID(仮称)」を含めた医療等分野の識別子(ID)の体系について、その構想を説明します。
つまり、患者と一対一で対応する「キーとなる識別子」は原則として変更せず資格確認サービス機関の内部での管理のみに使用し外部には出さず、そのIDを元に目的別の複数のサブIDを生成し外部に発行する階層化を構想しているのです。
図表2:医療等分野の識別子(ID)の体系
出所:厚労省「医療等分野における番号制度の活用等に関する研究会 報告書」(2015年12月10日)
以上、地域包括ケアシステムにおける情報連携に関わる「地域医療連携用ID(仮称)」及びそのIDを含めた「医療等分野の識別子(ID)の体系」についてお話ししました。
次回は、最終回として、「医療等分野の識別子(ID)の普及に向けた取組」についてお話ししますので、少しでも皆様のご参考になれば幸いです。