医療機関における臨床指標のあり方
第1回
2013年5月

執筆者:株式会社アイ・ピー・エム
    代表取締役 田中 幸三(たなか こうぞう)氏

本コラムは、医療機関における臨床指標のあり方について考察しています。第1回は、「QIプロジェクト」の指標など、標準化された臨床指標の必要性について考えています。

医療の質を向上させるために

今後の医療において、「医療の質の向上」は重要なキーワードである。そんな中、2010年、「医療の質の評価・公表等推進事業」を厚生労働省が立ち上げた。それを引き継ぐ形で、日本病院会がQIプロジェクト(QI推進事業)として再出発させ、4年目を迎えようとしている。

当初、30病院で始まったプロジェクトであるが、翌年には85病院、昨年は145病院が参加し、年々、参加医療機関の数も増えてきている。
参加病床規模別に見ても、400床未満の病院において、当初は13.3%であったものが、翌年には42.4%、昨年は、47.6%と増加している。参考までに、昨年の200床未満の割合は、17.2%であった。

臨床指標については、2010年時点で、国立病院機構が11項目18種、全日本病院協会が6項目10種、日本病院会が10項目15種の臨床指標を設定していた。
今回はその中で、中小病院としても、活用と効果が見込めると思われる「QIプロジェクト」の指標について、お話をしたい。

臨床指標(CI)と医療の質の指標(QI)

その前に、臨床指標(クリニカルインディケータ:CI)と医療の質の指標(クオリティーインディケータ:QI)とは、どのような違いがあるのであろうか。医療の質を評価する上においては、医療施設の構造スタイルを評価する(ストラクチャー)、医療の過程を評価する(プロセス)、医療の結果を評価する(アウトカム)の3階層が必要である。

筆者は、ストラクチャー&アウトカムをCI、プロセスをQIとして捉えていたのだが、今回のプロジェクトにおいては、全ての評価を含めて、QI指標として取り扱っている。
階層別の例を示すと、ストラクチャーの例としては、人員配置や機器設置状況等、アウトカムの例は、患者満足度や再入院率等、プロセスの例は、糖尿病患者での血糖コントロール率等である。

現在、多くの医療機関において、これらの指標がホームページなどで公表されているが、まだまだCIの整備が出来ていない医療機関が多いのも事実である。病院機能評価においても、施設基本票に記載する臨床評価指標が5項目あるが、日常からそれらの指標が取れていないため、あわてて受審前に調査を行っている医療機関もあった。
やはり標準化された臨床指標というものは、今後の「医療の質の向上」の為には、必要な事項であり、それらをうまく活用していくことが今後の医療機関における経営改善のためには、重要であると考える。

次回以降、「QIプロジェクト」における指標を含め、中小病院における臨床指標のあり方についてお話をしたい。指標の定義や指標の作成方法、医療情報システムのデータ活用についても記載してまいりたい。
尚、6月開催予定の病院経営セミナーの中でも、「医療機関における臨床指標のあり方とデータの二次活用について」講演を行う予定である。

少しでも皆様のお役に立てれば、幸いである。

※日本病院会ホームページより抜粋
QI推進事業は、往々にして病院間のベンチマーク的な横軸による比較を連想しがちですがそうではありません。
各病院の役割や機能、地域特性や患者属性などの交絡因子を調整する方法が満足するレベルまで精緻化されていない状況下で、QIの多くは病院間の医療の質を比較するには不適切です。このため「各々の病院が自院のデータを経時的に公表しながら、向上のためのあらゆる努力をし、結果として医療の質を改善すること」が第一の目的と考えます。
つまり、自院でQIの数値を時系列的に追って行くのです。自院のパフォーマンスを数値で発信すると病院はみるみる変わります。自分達の取り組み(科ごと、医師ごと、病棟ごとのパフォーマンス)を数値で"見える化"、可視化することが改善の原動力になります。

上へ戻る