本コラムは、医療機関における臨床指標のあり方について考察しています。第2回は、「QIプロジェクト」の指標について詳しく説明しています。筆者は、指標の算出だけでなく活用することが重要だと語ります。
2010年から始まった日本病院会の「QIプロジェクト」。
医療の質の向上を目的に臨床指標を活用することで、医療現場の質の向上に役立てようとしている。今年5月、新たに2013年度分の指標が発表された(※療養及び精神病床についても指標が提示されているが、ここでは、一般病床の指標について考察したい)。
昨年までの11項目12種から大幅に増加し、25項目27種となっている。
指標区分では、アウトカムが7項目8種から7項目9種(1種追加)に、プロセスにおいては、4項目4種から18項目18種(12種追加)となった。やはり、臨床におけるプロセス指標の充実が重要であることの表れである。
項目の概要については、別添の指標一覧を参照いただきたい(※1:2013臨床指標一覧)
また、参加病院数についても昨年度のほぼ1.5倍の226病院が参加予定である。
病床規模別の内訳としては、全226病院中117病院が400床未満となっており、昨年の69病院に対し、新たに50病院が参加を予定している。中小規模病院においても臨床指標の重要性を感じ、医療の質の向上に生かしていこうとしている姿勢の表れでもあると考える。
ただ、これらの指標は、算出するだけでなく活用されることに意義がある。今年度の項目内容を見る限り(詳細の検証がまだ終わっていないので、あくまでも私見であるが)、指標調査項目の決定の意図が明記されていないため、何をどう向上させていくために定義・決定した項目なのかが不明な印象を受ける項目もある。
主な指標内容についてであるが、プロセス指標の主要疾患として、脳卒中・脳梗塞・喘息が追加されている(肺血栓症が削除されているが、その理由は明記されていない)。
脳卒中の抗血栓療法においては、「一過性脳虚血発作(TIA)発症後のアスピリン等の早期投与により、90日以内の大きな脳卒中発症率が2%程度となり80%が軽減され、入院期間の短縮や入院経費の削減、さらに6ヶ月後の後遺症が軽減した」というエビデンスがある(脳卒中治療ガイドラインより)。
エビデンスに基づく医療の質の向上に加えて、患者負担の軽減にも大いに役立つ指標であると考える。せっかくの指標調査である。できれば全項目について算出方法だけでなく、エビデンスと活用方法についての詳細を公示してもらいたいものである。
また、算出方法については、日本病院会のホームページ上に掲載してあるが、もう少し分かり易くならないだろうか。定義を理解し、基礎データを準備するだけでも大変な作業であり、事務方の作業負担はかなり大きい。システムの有効活用が必須となる。
その他のプロセス指標として、紹介率と逆紹介率が追加された。これについては、近年、地域医療連携システムの充実と共に比較的取得しやすいデータとなっている。
次回も中小病院における臨床指標のあり方についてお話をしたい。併せて、統計分野を含めた中小病院における指標の「見える化」についても記載してまいりたい。
6月18日から東京・名古屋・大阪にて開催される病院経営セミナーの中で、「医療機関における臨床指標のあり方とデータの二次活用について」講演を行う予定である。
少しでも皆様のお役に立てれば、幸いである。