医療機関における臨床指標のあり方
第4回 病院経営セミナーについて(6月開催分)
2013年8月

執筆者:株式会社アイ・ピー・エム
    代表取締役 田中 幸三(たなか こうぞう)氏

セミナーを振り返って~臨床指標のあり方と標準化を考える~

今回は、2013年6月に開催された「医療機関における臨床指標のあり方とデータの2次活用」のセミナー後記としてお話をしたい。

今回のセミナーは、日本病院会における「QIプロジェクト」の指標関連の解説と中小規模の医療機関における臨床指標(統計)についてのお話をさせていただいた。

セミナー後、複数の病院様とお話をさせていただいたのだが、全ての病院様が指標のあり方については、色々と考えながら取り組みを実施されていた。
しかしながら、その項目については、やはり独自のもの(とある病院様は、今回ご紹介した「QIプロジェクト」の指標を参考に指標統計を作成されていた)が多く、標準化という点については、課題を持たれているようであった(自院にとって有効な臨床指標とは何か等)。

その中で、共通的な問題意識の内容としては、やはり、「活用」と「改善」についての取り組みがまだまだ不十分であるという点である。
「結果を見せるだけではだめ、そのための改善が必要」、「改善方法についてのアドバイスを含めた方法論の提案が必要」という意見を述べられた病院様もあった。まさにその通りである。

日本病院会でも「自院のパフォーマンスを数値で発信すると病院はみるみる変わります。自分達の取り組み(科ごと、医師ごと、病棟ごとのパフォーマンス)を数値で"見える化"、可視化することが改善の原動力となる」といっているが、その先を見据えた改善の実績と結果を求めていくことが、この論点の到達点であると考える。

全てを一度に行うことは不可能である。何か一つに着目して、取り組みを行うべきである。
私見としては、QI項目の「予防抗菌薬」「アスピリン投与」「糖尿病コントロール」にぜひ取り組んでいただきたいと考える。やはり、臨床指標について医師にその意識を持ってもらうことはとても重要であると考えるからである。

また、本内容以外にも、東名阪の各セミナーにおいては以下の公演が行われた。

  • 関西
    滋慶医療科学大学院大学(教授) 武田 裕様 より
    「医療機関における 診療情報管理のあり方」
  • 中部
    社会医療法人宏潤会(理事長) 吉川 公章様 より
    「電子カルテ・診療記録統合管理ソリューションの活用例」
  • 東京
    富士ゼロックス株式会社 畑仲 俊彦様 より
    「DACSコンセプトと電子カルテで実現する診療情報統合管理について」

昨今様々な「ビッグデータの活用」が話題となっている。診療情報もまた「ビッグデータ」の一つである。これらのデータを有効に活用するためには、情報ツール(電子カルテやDWH)を効率的に導入することは必須である。

末尾に中小病院における臨床指標の例を記載した。少しでも皆様のお役に立てれば、幸いである。

資料【中小病院における主な指標一覧】

医事系

患者統計
平均在院日数、入院患者数(延・平均)、外来患者数(延・平均)
新患率、再来率、入外比率 等
収益統計
患者1人1日あたり診療収入(外来・入院・診療科別)
診療行為別診療収入(初診・再診・検査など)、未収金回収率

医療系

病床関連
病床利用率、病床回転率
紹介関連
紹介率、逆紹介率
死亡関連
剖検率、死亡率
粗死亡率=死亡患者/退院患者数×100(年齢別・疾患別)
精死亡率=入院48時間以後死亡数/退院患者数×100(年齢別・疾患別)
その他
対診率、職員インフルエンザ接種率、職員喫煙率、転帰区分割合(年齢別)

臨床系

生存率
肺がん切除例の5年生存率(StageI,II)
乳がん切除例の5年生存率(StageII)
大腸がん切除例の5年生存率(StageIII)
平均在院日数
平均術後在院日数(肺がん手術・大腸がん手術・胃がん手術・大腿骨頭置換術等)
平均在院日数(うつ病・急性心筋梗塞・白内障手術等・脳血管障害者等)
その他
急性心筋梗塞患者における入院後早期アスピリン投与割合
特定術式における手術開始前1時間以内の予防的抗菌薬投与率
糖尿病患者の血糖コントロール HbA1c(NGSP)<7.0%
C型慢性肝炎入院患者に対するINF治療率
急性心筋梗塞の重症度別死亡率
脳梗塞患者における早期リハビリ開始率
退院患者中の褥瘡(II度以上)の院内発生率 等
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