本コラムで病院経営改革について考えていきます。第2回のテーマは、病院経営分析における「財務分析」です。経営改革や改善に即効性が高い指標は「適正性」。この分析に追加すべき項目として「職員定着率(離職率)」があると筆者は語ります。
今月は、病院経営分析における「財務分析」についてお話をしたい。
一般的に、財務分析に係わる項目として、下記などがある。
その中で、筆者が着目する指標は「適正性」である。
この項目の中には人件費率や材料費率などがあり、経営改革や改善を行うために即効性の高い指標が多く含まれる。
その昔、人件費については、50%を越えると危険な状況であるといわれていたが、現在は、53%~55%程度(一般急性期)が平均の値となっている。
以前よりも人件費率が上がっているにも係わらず、全体的な黒字の病院が増えている背景には、医療収入確保への努力(査定率の低下や診療報酬の適正な確保など)や原価費の削減努力(水光熱費の削減や医療機器及び材料の選定など)の成果が上がっているものと思われる。
また、この適正性の分析に追加して欲しい項目として、「職員定着率(離職率)」を挙げておきたい。一般的に、看護師の離職率(現在、4年連続で減少中:11%を下回る)は、大きく取り上げられるところであるが、今後、業務の細分化が進み職種が増えていく(経営企画室・医療情報室・ME室など)ことを考えると、その他の職種における定着率も重要な指標の一つとなる。
ちなみに、厚生労働省発表の離職率は、医療福祉分野で約16%程度となっており、日本医療機能評価機構発表の退職率は、医師:メジアン13.1%・平均16.6%、看護師:メジアン11.6%・平均15.0%となっている。
今後、全ての職種別にこの指標を展開してもらいたいものである。
定着率は、病院の安定経営に大きな影響を及ぼす指標であり、定着率が高すぎても人件費の高騰につながり、ともすると古い体質を改善する上での妨げにもなりかねない(古き良き時代は、改革への壁となるケースが多い)。
当然のことながら、定着率が低ければ、病院運営そのものに支障が出る。常に募集を繰り返している病院では、良質な労働環境にないところが多く、退職者が後を絶たない。退職の理由には様々あるであろうが、しっかりとその理由を分析し、改善を行うべきである。
私見ではあるが、「良い病院」に共通していることは、教育体制がしっかりしている医療機関が多いという点である。
最近は、BSCを使い各部署や個人に対し、目標と達成を示しているケースも増えてきている。
「現状分析⇒指標設定⇒達成目標⇒改善努力⇒結果評価」といったサイクルで、常に分析と改善と評価を繰り返すことが、健全な事業経営の基礎であると考える。
来月は、経営分析における「医療分析」の項目についてお話をしてまいりたい。
少しでも皆様のお役に立てれば幸いである。