本コラムで病院経営改革について考えていきます。第4回は、病院経営分析における「原価計算」がテーマです。分析同様、原価計算は病院経営において必要不可欠な分析方法です。原価計算の種類と各方式の概要について説明します。
今月は、病院経営分析における「原価計算」についてお話をしたい。
原価計算は、どこでどのような収益・コストが発生しているかという実態を知ることで、具体的に何をどのように改善すればよいかという情報を知るためのツールとして有効である。
しかしながら、まだまだ原価計算を導入していない医療機関も多く、その要因としては、導入方法やその活用が明確になっていない(システム化を含む)という点や、組織としてあまりにも収益にこだわった数字を明確にすると運営に弊害が出るなどの事情があるらしい(実際に、医師団からの理解・協力が得られないとの声を聞く)。
病院経営においては、財務分析と同様に必要不可欠な分析手法であるため是非とも着手し、有効に活用してもらいたい。
その原価計算における種類であるが、大別すると「部門別」、「科別」、「行為別」、「疾病別」に分けられる。各方式の概要については、以下のとおりである。
文字通り各部門単位に収益と原価を算出して行う最も基本的な形式である。院内の各部門責任者に対して原価情報を提供するため、部門の採算性に対する意識を高めることができる。
診療科単位に設定を行い、収益と原価を算出する。単一病棟においては、病棟=科別なるため算出がスムーズだが、混合病棟の場合は、医師・看護師のタイムスタディ及び使用材料のコード化などが必要となり、算出が困難な場合が発生する。
診療部門単位での採算性が明確になるため、診療部門の管理データとして活用が可能となる。併せて、病院経営の方向性に活用することも可能である。
診療行為ごとのコストを計算する場合に行う。たとえば、高額な保険点数の手術を行っているとしても、採算が取れているとは限らない。
採算割れをしている場合は、その原因を特定し、材料の使い過ぎであれば材料の使用方法を改善する策を講じるなどの対策を検討する必要がある。
疾病別の採算を計算するものであり、DPCの導入に伴い重要性が高まっている。疾患別に投薬や処置等を検証するとともに、クリニカルパスの見直しを行う事で、効率化(効果)を図ることが可能となる。
また、疾病別と診療科別を組み合わせて分析することで、科別の診療傾向が明らかとなり、経営改善の方向を見出すこともできる(院内抵抗勢力との戦いにはなるが...)。
これらの原価計算において、まずは、部門別原価計算を基礎とし、原価及び配賦に対しての考え方をまとめる必要がある。
財務会計から労務費、材料費、経費の費目別の原価情報を集計し、これを部門別収益との関連から直接原価と間接原価に区分する。
原価がどこの部門で発生したかという観点から集計を行う。
どの行為及び疾病に対してどれだけのコストがかかっているかという観点から計算を行う。
基本になる数字には全て、直接と間接との考え方があるため、その区分をはっきりさせ、院内のコンセンサスを得る必要がある。原価の範囲において、どの部門の原価をもって部門原価とするかによって、部門別の採算性の評価とそれに伴う経営管理の在り方も変わってくるため、原価構成をしっかりと理解・検討した上で原価計算を行う必要がある。
次回は、「原価計算:配賦基準とタイムスタディ」についてのお話をしたい。
少しでも皆様のお役に立てれば幸いである。
※1月下旬開催予定の経営セミナーにおいて、臨床指標の意義について日本病院会のQIプロジェクトに基づき、取り組み事例やその手法等についての解説を行う予定である。