2014年1月に病院経営セミナーを開催いたしました。本コラムでは、医療情報データの見える化を効率的に実現するために電子カルテや医事システムを利用し、臨床指標を抽出し病院経営及び職員への意識向上を図ることがいかに重要か説明しています。
今回は、2014年1月に開催された「医療情報データ『見える化』への取り組みについて」のセミナー後記としてお話をしたい。
今回のセミナーは、「QI指標に基づく医療情報データの具体的抽出方法とその活用案~日本病院会:QIプロジェクト版~」に関する解説とBIツールを活用した臨床指標の抽出方法及びその活用についてのお話をさせていただいた。
併せて、事前にQIプロジェクトに参加されている医療機関様に対し、アンケートとヒアリングを行い、その結果について傾向や問題等についての考察も行った。
最初に、アンケート&ヒアリングの結果であるが、臨床指標の抽出手段としては、全体の約54.8%が手計算であり、システムを活用している割合は、医事システムが46.8%、電子カルテが21.4%、部門システム(地域連携や診療支援等)が60%という結果であった。
意外にシステムの活用が行われていないケースが多く、抽出にかなりご苦労をされていたようである。
そのため、項目によっては、抽出不可能として日本病院会への提出を行えなかった医療機関もあった。苦労した項目としては、アウトカム指標の「糖尿病患者の血糖コントロール<7.0%」やプロセス指標の「予防抗菌薬投与・停止率(術前1時間、術後24時間)」が挙げられていた。
これらは、検査結果や投与時間等が必要な指標であり、電子カルテや手術管理システムなどを活用しないと抽出に膨大な労力を要する項目である。臨床指標を算出する過程においては、事前準備作業として、指標算出に必要なデータは何か、それらのデータがどこに入っているのか等を一覧の項目としてまとめた上で行うことが重要である。
その他の感想として、「職員に対して協力支援への理解が得られない(何故、何のために行っているのか)」、「院内データを一括管理していないため、抽出に人海戦術を用いるしかなく膨大な労力がかかった」、「QIそのものが院内に浸透していないため、協力体制や抽出方法の平準化が課題である」等が寄せられた。効果としては、「自院の位置づけが確認できてよかった」、「一般的指標となる項目が把握できてよかった」という感想もあった。
次に、具体的抽出方法についても解説をさせていただいたが、電子カルテ及び医事システムを中心に、まずは、算出の基本となるデータ(患者数等)をカウントし、その後、病名データテーブルや薬剤コードなどの対象項目を組み合わせて、指標データの抽出を行うことが必要となる。
詳細については、割愛させていただくが、データテーブルのレイアウトや各種コードの設定がキーとなる(これらについては、システムベンダー任せにするのではなく、院内の医療情報室等で把握されておくことをお勧めする)。
その他、今回は臨床指標に関するBIツールについての展示も行われた。このツールは、医事システム及び電子カルテからの抽出を項目別に行うことができ、部署別や医師別での結果も参照できるツールである。
項目としては、QIプロジェクトの中から抜粋しており、日々の結果データにバッチをあてて、前日まで、もしくは前月までのデータをグラフ等で「見える化」している。算出に係る時間と労力を軽減できることと見たい時に見ることができる便利さは、病院経営及び職員への意識向上に貢献できるのではないかと考える。
また、本内容以外にも、東名阪の各セミナーにおいては、東京及び関西:富山大学 医学部救急・災害医学講座(教授)奥寺敬様より「緊急度判定支援システムJTASと院内トリアージについて」、中部:富士ゼロックス株式会社 中央営業事業部 ヘルスケア営業部 土居広志様より「DACSコンセプトと電子カルテで実現する診療情報統合管理について」の講演が行われた。
院内トリアージについては、救急の現場において、今後、各医療機関が積極的に取り組む必要がある問題であると考えるため、とても参考になる講演であった。院内トリアージナースの育成や訓練(アセスメント能力や病態知識の習得など)が重要であると感じた。
別紙として「日本病院会:QIプロジェクト指標(2013年度版)を添付した。
少しでも皆様のお役に立てれば、幸いである。
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