今回は、2014年6月に開催された病院経営セミナー2014のセミナー後記としてお話をしたい。
今回のセミナーは、各会場において、以下の内容にて行われた。
筆者自身は、各会場において「医療安全対策と機能評価に関する考察~医療安全対策の現状と病院機能評価(機能種別版)の評価概要・審査内容から~」について、講演を行った。
概要としては、病院機能評価機構が行っている医療安全に関する取り組みと医療安全のデータ傾向の紹介及び機能種別版での医療安全関連項目のポイント等をお話しさせていただいた。この件については、また改めてお話ししたい。
今回のセミナーは上記の通り、実際の医療現場での導入に関する取り組みを中心に講演が行われたわけだが、100床から300床クラスのそれぞれの医療機関における電子化への取り組み状況の中で、筆者が感じたことを後記としてお届けしたい。
まず、取り組み(準備)という観点からは、やはりシステム導入を行う際の事務局の設置とその役割は、大きくかつ重要であるという事である。今回それぞれの医療機関で体制は違っていたが、専門的な観点から見ることのできる医療情報管理者は今後の医療情報システム導入においては、不可欠であり、各現場の負担を軽減することにも有意義である。ほぼ1人でその役割をされているところもあったが、その苦労はかなりのものであったであろう。電子カルテ導入には、導入後のメンテナンス等も必要となるため、常駐の院内SE体制構築を含め医療情報管理室という存在を重要視してもらいたい。
また、導入理由のひとつとして、「システムの老朽化」というお話があった。
皆さんご存知の通り、この20年であらゆるシステムが進化してきており、6年も経つと使い勝手の良くないシステムになってくる。医療の進歩と同時に、システム機能の向上及び様々なハードとソフトの開発が日進月歩で進んでいる。特に、最近の部門系システムの充実は目を見張るものがあり、利便性は上がっている。
だが、この導入に関しては、注意も必要である。部門系を単独で使用している場合も見られるが、本来、医療情報は1つの患者カルテが主となるべきものである。したがって、導入の際には、「データ連携」の有無が重要であると考える。講演の中でもデータの移行を重要視したというお話もあったが、トータル医療情報システムを構築するためには、「データ連携」、「機器接続」、「データ移行」は、しっかりと仕様書に盛り込む必要のある項目である。特に、データ移行については、現場職員の労力に大きくかかるところでもあるため、細心の注意と検討が必要である(ベンダー選定の際の重要な確認事項の一つである)。
全てをお話しすることができないので、印象に残った内容を箇条書きにて、記したい。
医療情報システムの導入といっても、やはり病院の規模や機能によって、その方法と活用はそれぞれである。該当医療機関の規模や機能及び目指す医療の方向性を加味し、使い勝手の良い(病院運営に貢献することのできる)医療情報システムを構築することをお勧めしたい。
コンサルタントという立場で、色々な医療機関のシステム導入を見ているが、やはり全てが100点の導入はない。言えることは、事前準備を正確かつ迅速に行う事と、各導入工程の意味と意義をしっかりと理解し、実行できる体制を持つことが必要だということである。また、医療機関側及びベンダー側双方の導入チームの意思疎通も重要なファクターの一つであると考える。双方に「協調、協働」という意識がなければ、導入はうまくいかない。
機会があれば、改めて筆者自身の経験に基づく「医療情報システムの導入の在り方」についてお話ししたい。
少しでも皆様のお役に立てれば幸いである。