前回は、医療従事者と患者のギャップから生じたトラブルの要因についてお話ししたが、今回は、その事例についてのお話をしたい。
最初は、誤嚥性肺炎で亡くなった患者の例であるが、そもそも誤嚥という言葉の認識に、一般の人と医療関係者とでは違いが大きい。
※誤嚥という言葉については、飲食を誤ったらおこる現象ととらえられており、神経が弱って、唾液さえも肺に入るリスクがあることを一般の人々は知らない。
次に、高齢者の転倒による骨折に関するトラブルである。転倒転落によるアクシデントは、医療安全の観点からもほとんどの医療機関において重点的に対応をしているはずである。
その他、「手術における合併症のリスク」という言葉の認識や理解度の違いにより、トラブルとなったケースや若手の医師が安易に発言した「癌の可能性」という言葉による患者の早合点でのトラブル等、言葉の使い方と理解度の相違が原因となる場合が多い。
最近は、メディアなどで医療に関する情報提供が多くされるようになり、それなりに一般の人々でも「知識」という点では、ギャップが少なくなってきているのかも知れない。(個人的には、過剰な演出や過度な情報提供で、かえって不安をあおっている感のある番組もあると思うが。。。)理解度については、個人差が大きいため、個々の対応をしっかりと行う必要がある。
今回、医療安全に関するお話をしたが、医療の現場には、多種多様な問題やリスクの因子が多く存在している。大げさかもしれないが、医療従事者たった一人の不注意が、その医療機関の屋台骨を揺るがすことにもなりかねない。
「慣れ」ほど、怖いものはない。常に、人の命と生活を預かる職に就いている意識を持って、安全と質の向上に努めていくのが医療人としての使命ではないかと考える。
尚、今回の内容は、新人看護師向け医療安全研修の内容から抜粋してお話をさせていただいた。少しでも皆様のお役に立てれば幸いである。