今回は、2015年1月に開催された病院経営セミナー2015のセミナー後記としてお話をしたい。
今回のセミナーは、各会場において、以下の内容にて行われた。
筆者自身は、各会場にて「看護支援を考える~病院情報システムにおける看護支援システムと看護業務のあるべき姿~」について講演を行った。主な内容としては、看護支援という観点から、電子カルテ、オーダーリング、部門系システムとの連携等、様々な医療情報システムが取り巻く環境の中で、看護支援システム導入のメリットや注意点等をお話しした。併せて、看護業務の効率化といった観点からは、医療安全や感染制御、手術管理や重症管理等の部門系システムの活用と仕様についてのお話をさせていただいた。
その中でも特に、医療安全管理については関心が高く、各会場とも導入について個別で質問を頂戴した。今後の医療機関にとって医療情報システムの整備は、業務の効率化及び診療の質の向上に必要不可欠である。
その中でも看護業務の効率化の推進には、基幹システム(医事・電子カルテ・看護支援)のみならず、サポート強化という点から部門システムの充実を図ることが重要であると考える。これらの件の詳細については、機会があれば改めて記述したい。
今回のセミナーは上記の通り、実際の医療現場における電子カルテ導入に関する取り組みを中心に講演が行われた。今回の講演の中には、多くのキーワードがあったが、その中から5つほどご紹介したい。
準備・ベンダー選定・導入・運用という4節に分けて導入を行われたとのことであったが、工程管理の上で、期限をしっかりと決めることはとても重要である。職員へのメリハリと意識づけにも有効であり、期限を守らせるということを徹底する必要がある。間に合わないからいつまで期限を延ばしましょうということになると結局はぎりぎりになり、職員の負担が増すばかりである。
あまりないケースであり、通常は、集団かキーマンのどちらかのケースで行われる。どちらの場合にもメリットデメリットがあるため、医療機関の職員体質(しっかりとしたキーマンが各部署にいるか否か)等で選定される方がよいであろう。個人的には、医師は集団研修、それ以外はキーマン研修が、時間効率と責任感の観点からは良いと考える。
乱暴な言い方かもしれないが、リハーサルは失敗すべきである。リハーサルを無難にこなした医療機関ほど本番で苦労している印象がある。逆に、リハーサルで失敗すると職員の中に危機感が生まれ、そこから真面目に取り組んでいくケースもある。リハーサルの方法も病棟と外来を分けるケースと同時に行うケースとあるが、外来及び救急から病棟への連携を考えると同時の複数開催を推奨したい。
どこの医療機関でもよくあるケースである。導入時には、数多くのドキュメントを含めた資料が発生する。それらの一元管理ができていないため、紛失していることがある。特に、運用フロー等は、新規のシステム導入とともに変わる為、しっかり管理していないと当初決めた運用が勝手に変わってしまい、後々(システム入れ替え時等)に苦労する。また、機能評価受審病院は、4月からの審査において、文書管理の一元化が求められてくる。医療機関によっては、既に、PDF等で全ての文書を一元管理しているところもあるが、管理が十分でないという施設もまだまだ多い印象である。
すごく共感できるキーワードである。導入において、最初から100%の満足は得られない。導入しながらシステム改修と改善というスタンスで、診療を止めない、患者に迷惑をかけないことを死守して、取り組むことも重要である。しかしながら、このケースも一定の期限を設けて、改修項目の制限や改善項目の進捗確認の管理をしっかりと行わないといつまでも導入が終わらないことになりかねない。基本導入はここまで行う。その後の改修は、これを行う。改善事項はいつまでに改善するという段取りと工程監査が重要となる。
今回は、上記5項目について記載したが、それ以外にも院内SEや仕様書作成、毎日反省会等のキーワードが多くあり、各医療機関における工夫とご苦労を知ることができた。システム導入を行う際には、失敗や工夫を知ることで、独自の工夫と努力につながり、成功に導くことができる。改めて記すと、100%の成功はない。常に、反省と改善が付きまとい、それをいかに消化していくかが重要である。併せて、導入後、半年及び一年後の導入評価(患者待ち時間や職員満足等)も忘れずに実施すべき事項であることを付け加えておきたい。今回は、病院経営セミナー2015のセミナー後記としてお話をした。少しでも皆様のお役に立てれば幸いである。