今回も、2016年度の診療報酬改定の概要から、「患者にとって安心・安全で納得できる効果的・効率的で質が高い医療を実現する視点」及び「重点的な対応が求められる医療分野を充実する視点」について、お話をしたい。
既にご存知のことが多いと思われるため、詳細な説明については割愛し、ポイントとなることについて、記述したい。
主な項目としては、以下の通りである。
最初に、情報通信技術を活用した医療連携や医療に関するデータの収集・利活用の推進についてであるが、根底には、遠隔医療の推進と医療情報の共有による医療資源の効率化がある。画像・検査の情報を遠地(連携医療機関)でも確認ができるように、電子的送受信が可能な体制を構築していくことの推進である。
これらについては、各医師会等が積極的に動いており、各地でネットワークの構築が順調に進んでいる状況である。フィルムの貸し出し等がなくなり、情報連携を駆使することで医療の効率性をあげていくことが期待できる。と同時に、それだけの体制が構築できるシステムや医療機器の整備が求められることになる。医療情報システムの導入コンサルを行う際にも直面することであるが、データ連携ができない医療機器を使い続けているため、全体の情報連携システムの構築ができないケースもある。次回のセミナーの際にもお話をするが、今後は、医療機器を含めた全体システムの連携と構築を検討することが必須であると考える。
また、データ提出加算についても国の姿勢が見て取れる。今後は益々「データ最重視」という姿勢が明確になっている。当初は、DPC対象病院等に与えられていたものが、療養病棟や回復期病棟といったところまで広がりを見せている。すべての医療機関においてデータは重要であり、その利活用を活かして、医療資源の効果的利用を強力に推進していくことが容易に想定できる。
この件については、更に、「データの2次利用」というキーワードがある。CI/QI・原価計算等、幅広くデータを収集し、それらをきちんと分析した上で、医療の質の向上や病院経営の効率化に活かすことが重要である。そのためには、数字(分析)に強い人材の確保も必要となる。事務系のトップだけでなく、経営企画室のメンバーの確保と育成も今後の医療機関における課題のひとつである。健全な経営及び戦略的な経営を確立している医療機関には、必ずアナライザーを駆使できる人材がいる。
次に、医療分野を充実する視点であるが、これらには、全て「評価」というキーワードが付いている。言わずもがな診療行為に対して正しく評価し、結果を求めることで点数を算定してよいということである。回復期リハビリテーションにおいてもアウトカム評価がキーとなり、ADLスコアの伸びが結果として評価される。同じことを繰り返していても改善がなければ評価に値しないのでより早期の回復を推進しなさいということである。これは、全てにおいて言えることであり、今後ますます、細部にわたっての評価が求められることになる。
医療機関の姿勢として、いつでもどこでも診療における評価を実施できる体制は重要となる。それ以外の項目として、「認知症」、「精神医療」、「小児医療」、「周産期医療」、「救急医療」という項目があるが、それら全てにおいて、「早期診断・早期対応」、「主治医機能の充実」、「在宅医療への円滑な移行」が付いている。
総括すれば、全ての医療行為において、早期対応を実施し、速やかな在宅復帰を促すことで、「人として健康な人生を送るための医療を正しくかつ効果的に提供することが医療機関の役目である」と言われている。そのための努力や改善が行われなければ、存続できませんよ!と。
最後に、6月22日、23日、24日に東京・名古屋・大阪で開催される病院経営セミナーについて少し記述したい。今回は、「医療機関におけるデータの二次利用」について講演を行う。QIについての解説や、実際に医療機関で分析したデータを紹介しながら分析の方法やその結果についてのお話をしたい。今回の分析は、放射線機器について実施したものであるが、放射線科における課題や今後の方向性を示す資料となり、対象の医療機関内において有効に活用される結果となった。その事例をお話しする。また、分析に使用したBIツールについての紹介も行う予定である。
次回は、「医療技術の適切な評価」及び「効率化・適正化を通じて精度の持続可能性を高める視点」について述べていきたい。少しでも皆様のお役にたてば幸いである。