今回も、2016年度の診療報酬改定の概要から、「医療技術の適切な評価」及び「効率化・適正化を通じて制度の持続可能性を高める視点」について、お話をしたい。
主な項目としては、以下の通りである。
最初に、医療技術の適切な評価においては、医師会等の提案によりかなりの項目で技術評価が認められ、外科的手術や専門性の高い医療管理において、加算がなされた。
評価の視点としては、以下の項目である。
点数等の詳細については割愛するが、これらの点数は、ほとんどの医療機関が取得に向けての改善を実施すると思われる。ここで、一つの指摘をしておきたい。点数が加算されても、未収では、意味がない。当たり前と思われる方も多くいるであろうが、再度、「減点、査定、請求漏れ」を見直し、体制を含めた内容重視の姿勢を再構築されることを推奨したい。
特に、公立系の医療機関で医事業務を委託されているケースにおいてよく見られるのだが、一般の民間病院ではありえないほどの請求漏れや査定が発生していることがある。決して放置をしているわけではないのであろうが、医事課は、医療機関における収入の要である。年間数百万から数千万あれば、それはすべて利益を失っていることにほかならない。コンマ0以下の世界が当たり前の時代である。ルーチン的な姿勢ではなく、精度の高い収益の確保が重要である。
次に、効率化・適正化を通じて制度の持続可能性を高める視点であるが、この項からは、医薬品関連と費用対効果についてお話をしたい。まず、医薬品についてであるが、後発医薬品の推進については、各医療機関とも積極的に検討を進めていることと思われる。ここ5年の間に、当初10%台であった使用割合が、50%を超えて目標値である70%に近付いている医療機関も多く出てきている。2018年度から2020年度には、80%という値がある。
この目標値達成のためには、新しい情報の取得と院内における検討が欠かせない。やはりキーになるのは、医師の積極的な協力と薬剤師の情報提供であろう。院内の協力及び努力体制が、目標達成のためには必要不可欠である。
併せて、残薬評価については、250点が新設されている。退院時等の際、2種類以上の減少に加算されるものであるが、一概にすべての患者において対応することは不可能かもしれないが、積極的に処方の内容を検討することで、効果が生まれやすい項目であると思われる。これも漫然と業務をこなしていては、加算は見込めない。薬剤師の腕の見せ所でもある。
費用対効果については、今後医療機関におけるすべての項目において、詳細な実施と分析が必要となる。今回のセミナーの際にもお話をしたが、まずは、着手することが重要である。
その手始めとしては、医療機器に関する費用対効果を分析することから始められることを推奨する。イニシャル・ランニング・人件費・その他経費等、医療機器ごとに情報を取得し、それら一つ一つにおいて、損益分岐に関する検査回数・回収率・部門単位での収支等を明確にすることにより、医療機器の病院経営貢献度を図ることが可能となる。
さらには、この情報収集の中で、職員の業務効率についても計ることが可能である。この件については、是非、職員のタイムテーブルを作成し、基礎データとされることを推奨したい。
前回のコラムでも記載したが、医療情報アナリストの育成が、今後の医療機関における経営改善のキーとなる。
今回の診療報酬改定は、2年後の同時改定のための布石である。いろんな医療関係者と話をする中で、皆さんからの言葉は、「30年(2018年)の同時改定のための分析をそろそろはじめないといけないね。」であった。その意味が込められた今回の診療報酬改定であった。
次回は、6月22日から開催された病院経営セミナーについての後記として記述したい。少しでも皆様のお役にたてば幸いである。