医療経営戦略セミナーについて
~これからの地域医療に向けた病院経営の勘所~(高知開催分I)
2016年12月

執筆者:株式会社アイ・ピー・エム
    代表取締役 田中 幸三(たなか こうぞう)氏

医療経営戦略セミナーの講演

今回は、2016年11月に開催された医療経営戦略セミナーにて講演を行ったので、その内容についてお話をしたい。

今回のセミナーは、3人の講師によって実施された。演題としては、「看護不足対策なんてない。皆の幸せを目指します。」、「データを読み解く」、「2025年へ向けた病院経営のあるべき姿」の3題であった。

2025年へ向けた病院経営のあるべき姿

筆者自身は、「2025年へ向けた病院経営のあるべき姿~医療の質の向上と業務改善を考える~」について講演を行った。

主な内容としては、2025年に向けた病棟再編のイメージ等、今後の方向性や2025年までのイベントとなる診療報酬改定のポイント等をお話しした。今回の診療報酬改定については、既に各医療機関において様々な対策等を取られたことであろうが、次回の同時改定については、いかがであろうか。

「病院完結型」から「地域完結型」へと誘導が顕著になり、在宅復帰も強化されている。医療介護総合推進法においては、効率的かつ質の高い医療提供体制を構築するとともに、地域包括ケアシステムを構築することを通じ、地域における医療及び介護の総合的な確保を推進された。また、おおむね10年後である2025年に向けて、将来あるべき医療提供体制の実現に向け、各医療機関の自主的な取組等を促すとともに、住民の医療提供体制に関する理解や適切な医療機関選択・受療が行われるよう取り組みが求められている。

今回の改定においては、7対1の要件が厳しくなったといわれているが、筆者の印象としては、まだ幅がありそうな要件であったと感じた。ただ、方向性は明確になっている。確実に7対1を減らすのである。

そこで、大幅な変更に対応するための準備期間として、複数の病棟群単位で7対1と10対1の入院基本料の届出も可能としている。しかし、この措置期間は現在のところ2年間に限定されている。措置期間内に病院全体で7対1の施設基準を満たせない場合には、10対1あるいは地域包括ケア病棟に移行することになる。特に200床未満の急性期病院では、7対1の維持が困難な病院が増えることが予測されており、なかには経営の転換を余儀なくされる病院もあるとみられる。

一方で10対1については、重症患者の受け入れを多く行う病院が算定できる「看護必要度加算」が引き上げられるなど、7対1から10対1への移行が推進されている。これが、次回改正への誘導になる可能性がある。

それではその誘導とは何なのか?⇒10対1入院基本料の要件変更ではないか。
想定として、今回の7対1に匹敵するような大変厳しいものとなることが予想されるため、今から態勢を整えておく必要がある。今回の改正で7対1から10対1にやむを得ずランク下げを行った病院も安心していてはいけない。10対1の入院基本料に関しての予想は、

  • 加算1⇒55点「重症度、医療・看護必要度」の基準患者が24%以上【25%】
  • 加算2⇒45「重症度、医療・看護必要度」の基準患者が18%以上【20%】

となる可能性もあるとみている。

また、次回の同時改定については、

  • 医療と福祉の一体化。柱は、地域包括ケアシステム・病院機能再編・地域医療構想の推進。
  • 医療と介護の同時改定のみならず、第7次医療計画・第7期介護保険事業(支援)計画・第3期医療費適正化計画がスタートする。⇒国民健康保険の都道府県化スタート
  • 方向性は施設⇒在宅⇒地域へと何ら変わりはない。

つまり、今後の医療・介護施策において極めて大きな節目となる改定である。

2012年度が『ホップ』。2018年度(次回)が『ステップ』で、2024年度が『ジャンプ』になるので、ここが一番重要なポイントとなる可能性が高い。(2025の1年前)

未来の病院の在り方

日本看護協会は「2025年に向けた看護の挑戦、看護の将来ビジョン~いのち・くらい・尊厳をまもり支える看護~」を昨年発表している。同様に、今年の7月には、全日病が、「病院の在り方に関する報告書~2015年-2016年版」において、第一章に「2025年の日本を想定した報告書」を巻末に「2025年に向けた今後の病院経営‐各施設がとるべき対応」を記載している。

その中に、「地域で求められている機能の実践」、「幅広い知識と実務経験を持つ病院経営専門家の養成・確保と費用の管理」、「将来に向けたマンパワーの確保」、「人口減少が明らかな地域における他産業との協調による地域活性化・街づくりへの参加および地域包括ケアシステムへの積極的関与」の4項目が記載されていた。ご一読いただくことを推奨したい。

2025年と言わず、未来の病院の在り方をシビアに考えなければいけない時代となっている。

今回は、医療経営戦略セミナーでの講演内容についてお話をした。次回は、他のお二人の内容についてもお話をしたい。少しでもお役に立てれば幸いである。

※ 前記の中にもあったが、特に、人材(マンパワー)の確保と育成は、今後の病院経営において重要な課題であると考える。一昔前、人件費が50%を超えたら経営が厳しいと言われていた時代があった。それが、最近の調査では、55%が基準になりつつあり、60%近いところもある。それだけ、医療にかかわる職種が増え、所属する人材も多様化している傾向の表れであろう。医療機関は、必要な人材の確保を行い、育成を充実させることで、有能な職員へと成長させなければいけない。人が財産であり、経営の基盤である。

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