今回は、2016年11月に開催された医療経営戦略セミナーについてお話をしたい。
前回、筆者の講演内容についてお話ししたが、今回からは、他お二人の講師の講演の中から、「看護師不足対策なんてない。みんなの幸せをめざします。」、「データを読み・解く」について、お話しする。
まず、「看護師不足対策なんてない。みんなの幸せをめざします。」では、病院の専務理事がお話をしたのであるが、その信条の1つ目は、「物事を成功に導くためには、複数の目的を持った仕組みを作ったり行動したりすること。」だそうだ。その理由のひとつとして、効率的であること。更には、仕組みや制度においては、複数の層が喜ぶものであれば、反対者は少なく、賛同者は多くなる。ということである。そして、信条の2つ目が「いろんな制度や仕組みには、必ずメリットがあり、また必ずデメリットもある。そのバランスが大切」ということである。
病院の現状としては、看護師不足の状況(新規採用ができない、高齢者の中途採用に頼る)が続いており、問題解決の優先事項としてとらえられていた。主な辞める理由としては、人間関係、スキルの問題、育児等の家庭の問題、自分の人生の先が見えない、ストレスの問題、などがあり、それらを解決するために以下の対策に取り組んだ。
人間関係の改善、メンタルヘルス対策の充実、子育て・介護支援、資格取得の支援、短時間正社員制度の導入、先行目的を与える
防止規定(パワハラ、セクハラ、いじめ)の策定、禁止・根絶宣言、接遇委員会の徹底(相手への敬意の啓発)
「こころの相談窓口」設置(カウンセリングの実施)、週一度予約制で実施(外部の看護資格者に依頼)、心療内科につなぐ(院内)
退職金の範囲内で病院が肩代わりする。毎月の給与から分割返済型を設置。教育資金・生活資金の貸付を支援。
報告義務の徹底、報告メモの採用、窓口を1本化。目的:病院としての対応、個人が責められることを防ぐ。
出産・育児や介護のために休職された看護師等の家庭と両立して働くための制度であり、職場復帰や資格取得を支援する制度。身分は正社員で、賞与・退職金制度あり。
働くあなた方を大事にする。あなた方に幸せになってもらいたい。働きやすい職場を作りたい。
⇒看護師不足対策なんてない。みんなの幸せを目指します。
各医療機関が職員の確保のために様々な制度や取り組みを行っていると思うが、成果が出ている実例として、とても参考になる講演であった。
今回は、医療経営戦略セミナーでの講演内容についてお話をした。事例の報告の中には、多くのヒントや方法が示されている。各医療機関において、活きた情報として、ご活用いただけるのではないかと考える。次回は、もう一題の「データを読み・解く」について、お話ししたい。少しでもお役に立てれば幸いである。