今回も、2016年11月に開催された医療経営戦略セミナーについてお話をしたい。前回は、他の講演の中から「看護師不足対策なんてない。みんなの幸せを目指します。」についてお話ししたが、今回は、もう一人の講師の講演から、「データを読み・解く~目の前の宝物(データ)をどのように活用するか~」について、お話しする。
「データを読み・解く」については、最初に、ハル・ロナルド・ヴィリアンの「これからの10年で魅力的な職業は、統計分析(データサイエンティスト)になるであろう」という言葉から始まった。同感である。常々申し上げてきたが、アナリストを駆使できる人材は、今後のすべての経営において重要であり、その確保と育成は、企業の経営はもちろんのこと医療機関の健全経営においても大きなポイントとなる。
さて、実際のお話の内容であるが、主な項目を列挙する。
統計とICTの能力、ビジネスの問題を発見し解決する能力、創造的な提案を行う能力の確保と育成が重要なポイントとなる。
内科・外科の協力強化により、「消化器病センター」を実質稼働、救急・連携活動を積極的に実施、在宅復帰を強力に支援する病院にシフトした。併せて、患者入退院経路についても検証を行い、病床への誘導を含め効率的な経路を実現した。
PLAN(目標値の設定と目的の確認)、DO(計画の実践、進捗の確認、手段・方法の遂行)、CHECK(効果の分析、現状の整理、推移比較環境、変化の差異、計画と実績の乖離分析)、ACTION(障害要因の特定、改善策の検討・実施)、これら全てをデータがつなぐ。
Excel、Access、クリックビュー等を駆使して適切なBIを構築した。
病床機能報告、人口動態⇒二次医療圏内の地域医療構想比較分析、病院指標の公表⇒医療機関データ⇒医療機関比較分析等、公表されている各種外部データを活用し、シェアや機能分析等の比較分析を行った。
情報・データ取得から分析帳票作成までの手順を確認
総合的な能力が求められるデータサイエンティストだが、統計やICTの能力を身につけるだけでも大変なのに、更にビジネスセンスまで必要となれば、そう簡単なことではない。統計とICTの専門家、各職場・職種とのコーディネートに長けた人物、柔軟な発想により多角的な視点から創造的な提案ができる人物とのコラボレーションにより、データサイエンティストの資質を補完しあう。
チームとして得意分野を補完することにより、データサイエンティストの役割をこなすことが重要であると考える。
実際のデータを提示しながらの内容であったため、医事関係者及び情報分析等をメインに行う情報企画及び経営関係者層には、とても有意義な講義内容であったと思う。Excelマクロでここまでの分析を行うことは並大抵ではないが、上手にBIを駆使できれば事業体にとって、大変有効な手段となるという印象を抱いた。
今回も、医療経営戦略セミナーでの講演内容についてお話をした。事例の報告の中には、多くのヒントや方法が示されている。各医療機関に対して、活きた情報として、ご活用いただきたい。
次回は、1月に開催された医療セミナー(NECネクサソリューションズ主催)のセミナー後記についてのお話をしたい。少しでもお役に立てれば幸いである。