職場におけるパワーハラスメントについて考える(第2回)
2018年7月

執筆者:株式会社アイ・ピー・エム
    代表取締役 田中 幸三(たなか こうぞう)氏

とある病院での例

今回も「パワーハラスメント(以下、「パワハラ」という。)について、お話をしたい。

いきなりではあるが、とある病院の事務部長から「お前の部署潰すぞ!」「馬鹿かお前は!」というような発言があった。もともと発言が過激な人物という印象で、周りは静観していたが、「それはパワハラになりますよ。」と諭すと、「そんなのは関係ない!!」と逆上するタイプの人物であった。

それ以外にも、とある病院の職員が出入り業者の女性に対して、「旦那さんは○○に勤めているんだってね。給与良いんだろうに、何で働いているの?」など、モラルハラスメントと言える発言があったりした。

前記は、「暴言」、「個の侵害」に値するハラスメントであるが、それ以外にも明らかに、パワハラ行為・発言というものが身近に存在している。特に、最近は、「お前」という言葉は注意が必要な発言のひとつである。その他「馬鹿、あほ、間抜け」などは、たとえ本人がコミュニケーションの感覚だったとしても使用してはいけない言葉であると考える。

一昔前は、上司が部下に対する指導という名目で表面化することは、あまりなかったが、近年は、メディアが積極的に取り上げていることもあり、クローズアップされてきた問題となっている。実際の処分の事例として、別の病院の事務部長は、院内におけるパワハラ発言の繰り返しが原因で、職員から他の管理職に相談が行くことになり、解雇に至ったケースも現実にあったのである。

数字で見るパワハラの実態

厚生労働省委託事業で「職場のパワーハラスメントに関する実態調査報告書」によると、

パワハラを

数字で見るパワハラの実態

と、いずれも増加傾向にある。これは、パワハラに対しての関心の高さを示すものであると考える。

その結果、パワハラを受けたと感じた場合の心身への影響はどうだったのだろうか。

数字で見るパワハラの実態

上記の結果からもわかるように、心身への影響は、頻度が高くなるほど大きくなる。

特に、怒りや不満、不安を感じた人の割合と仕事に対する意欲の減退した人の割合は大きく、事業者側にとっても生産性や効率性に対し、不利益に働くことが大きいということが一目瞭然である。

また、パワハラを受けたと感じた人のその後の行動は、どうだったのであろうか。

数字で見るパワハラの実態

意外にも何もしなかったという割合が約4割を占めているが、女性の比率は低い。また、会社及び会社外に対しての相談も合計で45%あり、何らかのアクションを起こしているという重要な数字であることを意味していると考えられる。

では、事業者側は、どのような対策を講じればよいのであろうか。次回は、医療機関における事業者側の対応及び対策について、記述したい。少しでも皆様のお役にたてれば幸いである。

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